〇緋屋・朱音の部屋・夜
前日の悪鬼戦の疲労と、白嶺の凄まじい気迫に圧倒された衝撃から、朱音が激しい知恵熱を出して寝込んでしまう。
華音が心配そうに朱音の額の手拭いを取り替えている。小火(こび)も布団の足元で心配そうに丸くなっている。
〇緋屋・客間・同時刻
命と痛覚を共有しているため、白嶺も全く同じタイミングで激しい高熱を出して魘されている。
茂助が看病しているが、白嶺のあまりの熱の高さに驚いている。
茂助「白嶺さんまで同じ熱を出すなんて……本当に、お二人の命は繋がっているのですね」
白嶺「やれやれ……困りましたね。まさか知恵熱まで、正確に半分よこされるとは思いませんでした……」
白嶺は、かなりしんどそうだが、いつもの調子を崩そうとしない。
〇緋屋・朱音の部屋と客間の間
二人は襖を一枚隔てた隣同士の部屋に布団を敷いて寝ている。
茂助や華音、あやかしたちが寝静まり、静まり返った夜。
熱のせいで頭がぼんやりとして、お互いに普段の頑なな態度や外面の仮面が維持できなくなっている。
朱音「……白嶺さん、起きていますか」
白嶺「ええ。君の熱が容赦なく流れ込んてくるせいで、目が冴えてしまって」
朱音「私のせいにしないでください……。でも、ごめんなさい。私が怪我をしたせいで、貴方までこんなに苦しめて」
朱音、昨日からずっと胸につかえていた問いを、襖の向こうへ投げかける。襖の向こうで、白嶺が短く息を吐く気配。白嶺が、熱に浮かされたように、静かに過去を語り始める。
・陰陽寮に入ったばかりの頃、青研のあやかしに対する酷い扱い(※生きた兵器として使い潰す凄惨なやり方)を間近で見て、激しい嫌悪を抱いたこと。
・道具として永遠に苦しめられるくらいなら、いっそ自分の手でこの現世(うつしよ)から綺麗に祓って逃がしてやる方が、せめてもの「慈悲」だと思うようになったこと。
白嶺「そんな風に、心を殺して戦うことしか知らなかった私が出会ったのが……君の父親、宗介さんでした。彼は陰陽寮に属する方では有りませんでしたが、在野の祓い師達に知らぬものは居ないでしょう」
宗介があやかしを傷つけず、ただ寄り添おうとする共生の研究をしていたことに、白嶺自身が救われていたのだと明かす。
※〇過去の光景として、白嶺と宗介のやりとり詳細を描くのもアリ
白嶺「ですから……君が真っ直ぐにあやかしを庇って飛び出してきたとき……驚きました。宗介さんの遺した優しい力が、ちゃんとここに生きているのだ、と」
朱音、驚きで目を見開く。家族以外は知らない筈だった亡き父のライフワーク。白嶺が父のことを知っていただけでなく、自分をそんな風に見ていたことに胸が突かれる。
朱音(モノ)『お父さんのこと、知っているの』
白嶺「……格好悪いですね。本当は、君を守ることで、私が過去の救われなかった自分を慰めているだけなのかもしれません。命を間引くことしか知らなかった私には、朱音さんの真っ直ぐな姿が、少し眩しい。ですが、君のその優しさに救われて……いるのかもしれません。……ですから、勝手に無茶をして死なれては困るんです」
朱音の胸が、切なさと愛おしさで激しく鳴る。
朱音(モノ)『……ずるい。そんな言い方……』
暗闇の中、二人の手首を結ぶ緋色の呪布が、互いの熱を伝えるようにほんのりと温かく発光している。遠く祭囃子の音が聞こえてくる。
〇緋屋・帳場・翌日昼
朱音と白嶺の熱が下がり、いつもの日常に戻る。
しかし、朱音はどこかお互いの目線を意識してしまい、ぎこちない空気。そこへ、商人組合の男が祭りの案内書を持ってくる。
今夜は霞ノ都の夏祭り。
緋屋は店先で爽やかな茶葉を販売予定のため、家族総出で準備中~開店。皆そろいの割烹着姿。
それなりの客足で、朱音、白嶺も販売や、試飲に勤しむ。足元ではあやかしたちもにぎやかし中。※たのしそう
特に試飲担当の白嶺の周りには、若い娘が群がっている。
客足が落ち着いてきた夕方に、茂助が提案。
茂助「気晴らしに、二人で奉納の舞を見に行ってきたらどうですか?」
朱音と白嶺は呪布で繋がっているため、行くなら二人一緒
白嶺「いいですね、参りましょうかお姫さま」 ※涼しい顔
華音「華音は、お土産の、わたがしを楽しみにしています、お姉様」 ※無邪気
朱音は断りきれずに浴衣を着ることに。
〇緋屋・朱音の部屋・夕方
朱音が慣れない手つきで浴衣を着替えている。
帯を結ぶのに苦戦していると、襖の向こうから白嶺の声。
白嶺「お手伝いしましょうか?」
朱音「結構です!」※お約束のやり取り
白嶺がくすくす忍び笑いを漏らしている。
華音と茂助、あやかしたちも野次馬で二人のやりとりを見守っている。
〇霞ノ都・祭り会場(神社周辺)〜夜
提灯の明かりが運河の水面に映り、出店が並んで賑わうお祭り。浴衣姿の朱音を、白嶺は穏やかな顔で見る。時折視線を左右に走らせ確認。※結界強度などの確認。
人混みが激しくなり、誰かの肩があたってふらつく朱音。白嶺がさりげなく朱音を引き寄せ、その手をそっと握る。
朱音「な、なんですか急に」
白嶺「人混みで呪布の限界以上に離れてしまっては、お互いの心臓に悪いですから。……迷子にならないよう、繋いでおきます」
朱音、赤面して俯く。
〇お祭り広場・出店
白嶺が、お面を売る出店の前で足を止める。
朱音の狐の面(※小火の面影があるようなかわいい面)を買い、朱音の頭にそっと斜めに乗せてあげる。
白嶺「よく似合っていますよ、お姫さま」
名前ではなくお姫さまとあえて呼ぶ、白嶺のからかいに、朱音の心音がどくどくと早くなる。
朱音(モノ)『もう、なんなのこの人……。調子が狂う。心臓の音が、どっちのものか分からなくなるじゃない』
以降も、手をつなぎながら、出店に立ち寄りながら歩く二人。
りんご飴、金魚すくい※たぷと水猫がなぜか紛れ込んでいてぎょっとする。
綿菓子にくらいつこうとしている小火など。あやかしたちが屋台に紛れ込んでいる。
緋屋にすむあやかし以外の低格のあやかしもわちゃわちゃしている。双狗、蒼鴉※黒霧の使役しているあやかしなど。
〇神社裏の静かな境内・祭り終盤
賑やかな喧騒から少し離れた場所で、涼む二人。
楽しい時間の裏で、都の結界の隙間から不穏な黒い影(五格・煙蛇のあやかし)が忍び寄っている引きで終了。
前日の悪鬼戦の疲労と、白嶺の凄まじい気迫に圧倒された衝撃から、朱音が激しい知恵熱を出して寝込んでしまう。
華音が心配そうに朱音の額の手拭いを取り替えている。小火(こび)も布団の足元で心配そうに丸くなっている。
〇緋屋・客間・同時刻
命と痛覚を共有しているため、白嶺も全く同じタイミングで激しい高熱を出して魘されている。
茂助が看病しているが、白嶺のあまりの熱の高さに驚いている。
茂助「白嶺さんまで同じ熱を出すなんて……本当に、お二人の命は繋がっているのですね」
白嶺「やれやれ……困りましたね。まさか知恵熱まで、正確に半分よこされるとは思いませんでした……」
白嶺は、かなりしんどそうだが、いつもの調子を崩そうとしない。
〇緋屋・朱音の部屋と客間の間
二人は襖を一枚隔てた隣同士の部屋に布団を敷いて寝ている。
茂助や華音、あやかしたちが寝静まり、静まり返った夜。
熱のせいで頭がぼんやりとして、お互いに普段の頑なな態度や外面の仮面が維持できなくなっている。
朱音「……白嶺さん、起きていますか」
白嶺「ええ。君の熱が容赦なく流れ込んてくるせいで、目が冴えてしまって」
朱音「私のせいにしないでください……。でも、ごめんなさい。私が怪我をしたせいで、貴方までこんなに苦しめて」
朱音、昨日からずっと胸につかえていた問いを、襖の向こうへ投げかける。襖の向こうで、白嶺が短く息を吐く気配。白嶺が、熱に浮かされたように、静かに過去を語り始める。
・陰陽寮に入ったばかりの頃、青研のあやかしに対する酷い扱い(※生きた兵器として使い潰す凄惨なやり方)を間近で見て、激しい嫌悪を抱いたこと。
・道具として永遠に苦しめられるくらいなら、いっそ自分の手でこの現世(うつしよ)から綺麗に祓って逃がしてやる方が、せめてもの「慈悲」だと思うようになったこと。
白嶺「そんな風に、心を殺して戦うことしか知らなかった私が出会ったのが……君の父親、宗介さんでした。彼は陰陽寮に属する方では有りませんでしたが、在野の祓い師達に知らぬものは居ないでしょう」
宗介があやかしを傷つけず、ただ寄り添おうとする共生の研究をしていたことに、白嶺自身が救われていたのだと明かす。
※〇過去の光景として、白嶺と宗介のやりとり詳細を描くのもアリ
白嶺「ですから……君が真っ直ぐにあやかしを庇って飛び出してきたとき……驚きました。宗介さんの遺した優しい力が、ちゃんとここに生きているのだ、と」
朱音、驚きで目を見開く。家族以外は知らない筈だった亡き父のライフワーク。白嶺が父のことを知っていただけでなく、自分をそんな風に見ていたことに胸が突かれる。
朱音(モノ)『お父さんのこと、知っているの』
白嶺「……格好悪いですね。本当は、君を守ることで、私が過去の救われなかった自分を慰めているだけなのかもしれません。命を間引くことしか知らなかった私には、朱音さんの真っ直ぐな姿が、少し眩しい。ですが、君のその優しさに救われて……いるのかもしれません。……ですから、勝手に無茶をして死なれては困るんです」
朱音の胸が、切なさと愛おしさで激しく鳴る。
朱音(モノ)『……ずるい。そんな言い方……』
暗闇の中、二人の手首を結ぶ緋色の呪布が、互いの熱を伝えるようにほんのりと温かく発光している。遠く祭囃子の音が聞こえてくる。
〇緋屋・帳場・翌日昼
朱音と白嶺の熱が下がり、いつもの日常に戻る。
しかし、朱音はどこかお互いの目線を意識してしまい、ぎこちない空気。そこへ、商人組合の男が祭りの案内書を持ってくる。
今夜は霞ノ都の夏祭り。
緋屋は店先で爽やかな茶葉を販売予定のため、家族総出で準備中~開店。皆そろいの割烹着姿。
それなりの客足で、朱音、白嶺も販売や、試飲に勤しむ。足元ではあやかしたちもにぎやかし中。※たのしそう
特に試飲担当の白嶺の周りには、若い娘が群がっている。
客足が落ち着いてきた夕方に、茂助が提案。
茂助「気晴らしに、二人で奉納の舞を見に行ってきたらどうですか?」
朱音と白嶺は呪布で繋がっているため、行くなら二人一緒
白嶺「いいですね、参りましょうかお姫さま」 ※涼しい顔
華音「華音は、お土産の、わたがしを楽しみにしています、お姉様」 ※無邪気
朱音は断りきれずに浴衣を着ることに。
〇緋屋・朱音の部屋・夕方
朱音が慣れない手つきで浴衣を着替えている。
帯を結ぶのに苦戦していると、襖の向こうから白嶺の声。
白嶺「お手伝いしましょうか?」
朱音「結構です!」※お約束のやり取り
白嶺がくすくす忍び笑いを漏らしている。
華音と茂助、あやかしたちも野次馬で二人のやりとりを見守っている。
〇霞ノ都・祭り会場(神社周辺)〜夜
提灯の明かりが運河の水面に映り、出店が並んで賑わうお祭り。浴衣姿の朱音を、白嶺は穏やかな顔で見る。時折視線を左右に走らせ確認。※結界強度などの確認。
人混みが激しくなり、誰かの肩があたってふらつく朱音。白嶺がさりげなく朱音を引き寄せ、その手をそっと握る。
朱音「な、なんですか急に」
白嶺「人混みで呪布の限界以上に離れてしまっては、お互いの心臓に悪いですから。……迷子にならないよう、繋いでおきます」
朱音、赤面して俯く。
〇お祭り広場・出店
白嶺が、お面を売る出店の前で足を止める。
朱音の狐の面(※小火の面影があるようなかわいい面)を買い、朱音の頭にそっと斜めに乗せてあげる。
白嶺「よく似合っていますよ、お姫さま」
名前ではなくお姫さまとあえて呼ぶ、白嶺のからかいに、朱音の心音がどくどくと早くなる。
朱音(モノ)『もう、なんなのこの人……。調子が狂う。心臓の音が、どっちのものか分からなくなるじゃない』
以降も、手をつなぎながら、出店に立ち寄りながら歩く二人。
りんご飴、金魚すくい※たぷと水猫がなぜか紛れ込んでいてぎょっとする。
綿菓子にくらいつこうとしている小火など。あやかしたちが屋台に紛れ込んでいる。
緋屋にすむあやかし以外の低格のあやかしもわちゃわちゃしている。双狗、蒼鴉※黒霧の使役しているあやかしなど。
〇神社裏の静かな境内・祭り終盤
賑やかな喧騒から少し離れた場所で、涼む二人。
楽しい時間の裏で、都の結界の隙間から不穏な黒い影(五格・煙蛇のあやかし)が忍び寄っている引きで終了。



