[シナリオ]朧廻国 心を繋ぐ双命の符

〇地下深くの禁域・冥主の祭壇
地下空洞が崩落する中、暴走し咆哮を上げる伝説の最上格あやかし「冥主」。
黄金の命の鎖で結ばれた白嶺と朱音は、手を固く繋ぎ合ったまま、恐れることなく冥主へと歩み寄る。
朱音が番傘を開き、覚醒した『繋束』の黄金の光を限界まで放射する。その光は冥主の巨体を優しく包み込み、青研によって植え付けられた狂気と怒りをじわじわと溶かしていく。

青研の呪縛によって植え付けられていた黒い泥や悍ましい棘が、その温かい光に触れてはらりはらりと剥がれ落ち、中から、透き通るような純白の毛並みを持つ、神々しく美しい本来の姿が露わになっていく。※獅子と白虎を合わせたみたいな架空の生物

冥主の猛り狂っていた瞳からスッと狂気が消え、穏やかな琥珀色の瞳が朱音を映す。
その瞬間、朱音と白嶺の脳裏に、生前の宗介がこの冥主の頭を優しく撫で、あやかしと人が笑い合える未来を語りかけていた記憶が、繋束の力を通じて美しく流れ込んでくる。

冥主(声)『……ああ、温かい。コレは、私は……宗介……』
朱音「うん、そうだよ……お父様を覚えていてくれてありがとう。……もう大丈夫、お父様が今もきっといる幽世へ還ろう」

冥主が、すべてから解放されたように静かに目を閉じる。
その一瞬の隙に、白嶺が愛おしそうに朱音を見つめた後、前を向いて扇を美しく一閃。
放たれた純白の焔は、あやかしを傷つけるための冷たい刃ではなく、朱音の黄金の光と溶け合いながら、魂を本来あるべき幽世へと優しく導く『慈悲の道標』として冥主を包み込んでいく。

冥主の巨体は、都の夜空へと昇る数百万の蛍のような、美しい光の粒子へと変わる。
その圧倒的な光の奔流は、崩落する地下空洞の瓦礫をも天へと押し戻しながら、霞ノ都のすべての闇を優しく塗り替えるように、まっすぐに昇天していく


〇霞ノ都・大通り〜緋屋の跡地
冥主が還ったことで、都を覆っていた赤黒い霊気と黒い霧が完全に晴れ、美しい朝焼けの光が街に降り注ぐ。狂暴化していたあやかし達も元の平穏を取り戻す。町並みは半壊。緋屋は完全に押しつぶされている。

茂助「お店が……兄さんの遺してくれた店が……」
華音「みんなの命があるなら、お店は何度でも建て直せるよ」

そこへ、深い朝霧の向こうから、しっかりと手を繋ぎ合った白嶺と朱音が歩いてくる。
二人の衣服はボロボロで血に汚れているが、その表情はどこまでも穏やか。

華音「姉さま!」
茂助「朱音さん! 白嶺さん!」

避難していた茂助や華音、そして小火や水猫、すす衆たちが大歓声を上げて二人の元へ駆け寄る。
小火が朱音の頭に飛びついて大号泣し、すす衆たちは白嶺のボロボロの狩衣に群がる。
白嶺はいつもの涼しい顔で、すす衆まみれになりながら。

青研の悪事は、駆けつけた良識派の陰陽師たちの手によって全て白日に晒されていく。
人混みを割って、墨色の狩衣を纏った黒霧が歩み寄ってくる。
黒霧が手をぎゅっと握りしめた二人の姿にフッと呆れたように、けれど嬉しそうに口元を緩める。

黒霧「……とんでもない方法で呪符を書き換えたな、お前は」 ※悟ったような顔

周りの陰陽師や茂助たちに見られていることに気づき、朱音が真っ赤になる。

朱音「あ、あの、これは……」

朱音、慌てて手を離そうとする。しかし、白嶺はそれを引き留めるように、朱音の指の間に自分の指を深く絡ませて恋人つなぎに。さらに強い力でぎゅっと握り直して絶対に離さない。

白嶺「ええ。言ったでしょう、結構難しいんですよ、と」 ※朱音の言葉を借りて、悪戯っぽく笑う白嶺。

白嶺、朱音の指の間にさらに深く自分の指を絡め直し、鼓動が伝わるほどの距離まで顔を近づける。

白嶺「照れている君も格別に愛らしいですが、逃げるのは不可能です。私の心臓はもう、君の愛なしでは動かない身体にされてしまいましたから。……ほら、もっときつく握り返してください。はぐれてしまったら困りますよ、お姫様」

朱音、顔から火が出そうなほど真っ赤になり、言葉を失う。

華音「物語みたい! すてき!」

黒霧は本格的に呆れた顔で天を仰ぐ。
小さなあやかしたちが、ぽわんぽわんと踊り狂っている引き。