〇地下深くの禁域・冥主の祭壇
脈動する巨大な「冥主の繭」を背に、薄笑いを浮かべる青研。繭の表面には血管が浮き上がっている感じでどくどくしている。
白嶺が朱音を背中に庇いながら、扇を鋭く構える。
白嶺「青研、君の悪趣味な実験もここまでです。その禍々しい繭ごと、現世から綺麗に祓って差し上げましょう」
青研「おや、まだそんな威勢が残っているのかい? だが、主役はお前じゃない。――そこの、小娘だ」
青研が印を結んだ瞬間、都中に張り巡らされていた罠 ※目に見えない霊線の網 が一斉に起動。
螺旋階段を伝って、朱音の身体へと数条の赤黒い霊線が巻き付く。
〇同・祭壇
朱音「え、あ、っ……!? なにこれっ……く――っ……」
霊線を通じて、朱音の持つ『繋束』の霊力が無理やり引き出され、冥主の繭へと注ぎ込まれてしまう。朱音はその激痛に膝をつく。
白嶺「朱音さん――!」
白嶺が霊線を切り裂こうと白焔を放つが、青研が展開した漆黒の結界に阻まれる。
膨大な黄金の霊力を吸い込んだ繭が、凄まじい音を立てて内側から破裂する。中から現れたのは、都の地下を全て埋め尽くすほどの巨体を持つ、伝説の最上格あやかし「冥主」。圧倒的な神威と絶望的な重圧が空間を支配する。
青研「素晴らしい! これぞ宗介が隠匿していた力か! この娘の『繋束』の回路を媒介にすれば、冥主すら私の意のままに動く兵器となる!」
異能を限界まで引き出され、意識が遠のきかける朱音。しかし、彼女の異能は、暴走する冥主の魂の奥底にある声を聴き取ってしまう。
冥主(声)『暗い、痛い、眠り、たい……』
冥主(声)『あっちへ行け、来るな、触るな……』
冥主(声)『邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ、ウルサイ……イイいいィ』
朱音(モノ)『……この子も、苦しんでる……。無理やり起こされて、怒りで狂わされてる……!』
白嶺は朱音を救い出すため、自身の限界を超えるほどの強大な霊力を解放。狩衣を血で染めながら、青研の結界を次々と破壊し、圧倒的な力で肉薄していく。その姿は、大切なものを奪われようとしている修羅そのもの。
一方、追いつめられた青研は、完全に冥主の制御を完成させるため、媒介である朱音の肉体そのものを冥主の糧として生贄に捧げようとする。
青研の合図と共に、冥主の巨大な尾が、身動きの取れない朱音を目がけて、防ぎようのない速度で振り下ろされる。
朱音「――っ」
死を覚悟し、目を閉じる朱音。ドスッ、という、重く鈍い音。
朱音「……え?」
恐る恐る目をあけた朱音の視界に広がったのは、白を基調とした美しい狩衣の背中。
白嶺が、迷うことなく朱音の前に飛び出し、その身を盾にして冥主の致命的な一撃を正面から受け止めていた。
白嶺の右胸を、漆黒の刃が深く貫いている。
白嶺「……がはっ……っ」
白嶺の口から、鮮血が溢れ落ちる。そして無意識で動いてしまった自分の身体の後ろで、崩れ落ちていく朱音を絶望の視線でゆっくりと、振り返る。
視線が合った刹那、双命符の「命の共有」により、朱音の胸の奥にも全く同じ致命的な激痛と衝撃が走り、朱音の着物の胸元からも血が滲み出す。二人同時に、糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。
〇同・祭壇
血の海の中に倒れる二人。手首の緋色の呪布が、弱々しく明滅し消滅。
青研、白嶺が自分の命を完全に投げ打って娘を庇った狂気的な執着に、呆れと不気味な愉悦の混ざった笑みを浮かべる。
青研「まさか、自分から飛び込んでくるなんてね。がっかりだよ、白嶺。……さあ、これで邪魔者は消えた。娘を回収しろ」
白嶺「私は……今……何を、朱音さんを……殺し……た……?」
瀕死の白嶺は、薄れゆく意識の中で、朱音の血に汚れた手をがっちりと握り締めたまま、虚ろな瞳を青研に向けている。
崩れ落ちた二人を前に、完全に我を忘れて暴走を始めた冥主が、都を崩壊させるほどの咆哮を上げる、最大の絶望。
脈動する巨大な「冥主の繭」を背に、薄笑いを浮かべる青研。繭の表面には血管が浮き上がっている感じでどくどくしている。
白嶺が朱音を背中に庇いながら、扇を鋭く構える。
白嶺「青研、君の悪趣味な実験もここまでです。その禍々しい繭ごと、現世から綺麗に祓って差し上げましょう」
青研「おや、まだそんな威勢が残っているのかい? だが、主役はお前じゃない。――そこの、小娘だ」
青研が印を結んだ瞬間、都中に張り巡らされていた罠 ※目に見えない霊線の網 が一斉に起動。
螺旋階段を伝って、朱音の身体へと数条の赤黒い霊線が巻き付く。
〇同・祭壇
朱音「え、あ、っ……!? なにこれっ……く――っ……」
霊線を通じて、朱音の持つ『繋束』の霊力が無理やり引き出され、冥主の繭へと注ぎ込まれてしまう。朱音はその激痛に膝をつく。
白嶺「朱音さん――!」
白嶺が霊線を切り裂こうと白焔を放つが、青研が展開した漆黒の結界に阻まれる。
膨大な黄金の霊力を吸い込んだ繭が、凄まじい音を立てて内側から破裂する。中から現れたのは、都の地下を全て埋め尽くすほどの巨体を持つ、伝説の最上格あやかし「冥主」。圧倒的な神威と絶望的な重圧が空間を支配する。
青研「素晴らしい! これぞ宗介が隠匿していた力か! この娘の『繋束』の回路を媒介にすれば、冥主すら私の意のままに動く兵器となる!」
異能を限界まで引き出され、意識が遠のきかける朱音。しかし、彼女の異能は、暴走する冥主の魂の奥底にある声を聴き取ってしまう。
冥主(声)『暗い、痛い、眠り、たい……』
冥主(声)『あっちへ行け、来るな、触るな……』
冥主(声)『邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ、ウルサイ……イイいいィ』
朱音(モノ)『……この子も、苦しんでる……。無理やり起こされて、怒りで狂わされてる……!』
白嶺は朱音を救い出すため、自身の限界を超えるほどの強大な霊力を解放。狩衣を血で染めながら、青研の結界を次々と破壊し、圧倒的な力で肉薄していく。その姿は、大切なものを奪われようとしている修羅そのもの。
一方、追いつめられた青研は、完全に冥主の制御を完成させるため、媒介である朱音の肉体そのものを冥主の糧として生贄に捧げようとする。
青研の合図と共に、冥主の巨大な尾が、身動きの取れない朱音を目がけて、防ぎようのない速度で振り下ろされる。
朱音「――っ」
死を覚悟し、目を閉じる朱音。ドスッ、という、重く鈍い音。
朱音「……え?」
恐る恐る目をあけた朱音の視界に広がったのは、白を基調とした美しい狩衣の背中。
白嶺が、迷うことなく朱音の前に飛び出し、その身を盾にして冥主の致命的な一撃を正面から受け止めていた。
白嶺の右胸を、漆黒の刃が深く貫いている。
白嶺「……がはっ……っ」
白嶺の口から、鮮血が溢れ落ちる。そして無意識で動いてしまった自分の身体の後ろで、崩れ落ちていく朱音を絶望の視線でゆっくりと、振り返る。
視線が合った刹那、双命符の「命の共有」により、朱音の胸の奥にも全く同じ致命的な激痛と衝撃が走り、朱音の着物の胸元からも血が滲み出す。二人同時に、糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。
〇同・祭壇
血の海の中に倒れる二人。手首の緋色の呪布が、弱々しく明滅し消滅。
青研、白嶺が自分の命を完全に投げ打って娘を庇った狂気的な執着に、呆れと不気味な愉悦の混ざった笑みを浮かべる。
青研「まさか、自分から飛び込んでくるなんてね。がっかりだよ、白嶺。……さあ、これで邪魔者は消えた。娘を回収しろ」
白嶺「私は……今……何を、朱音さんを……殺し……た……?」
瀕死の白嶺は、薄れゆく意識の中で、朱音の血に汚れた手をがっちりと握り締めたまま、虚ろな瞳を青研に向けている。
崩れ落ちた二人を前に、完全に我を忘れて暴走を始めた冥主が、都を崩壊させるほどの咆哮を上げる、最大の絶望。



