[シナリオ]朧廻国 心を繋ぐ双命の符

〇都の外れ・寂れた隠れ家・星宿庵・夜
霞ノ都の結界の外縁、鬱蒼とした竹林に隠された白嶺の私邸。追手を撒き、命からがら辿り着いた一同。茂助が華音を寝所に運び、小火、すす衆、水猫たちあやかしも、慣れない移動に疲れ果てて片隅に重なるよう丸くなっている。白嶺の隠れ家は、家具も最低限しかなく、彼がこれまでどれほど孤独に、陰陽師としての任務のためだけに生きてきたかを物語るような静けさ。


〇隠れ家・居間・深夜
皆が寝静まった後、朱音は逃走中に生じた足首の小さな擦り傷を一人で手当てしようとしている。そこへ、いつの間にか気配もなく白嶺が近づき、朱音の前に膝をつく。

白嶺「……言ったでしょう。君が傷つけば、私も傷つくのです。黙っていてもわかりますよ」

いつもの意地悪な口調だが、その手つきは驚くほど手慣れており、どこまでも優しい。手首の緋色の呪布が、二人の間でかすかに光っている。朱音は先ほどの彼の激しい戦いぶりと、自分を抱きしめた腕の強さを思い出し、胸が締め付けられる感じ。

朱音「ごめんなさい……」

白嶺、包帯を結ぶ手をふと止め、瞳を揺らす。
夜風が竹林を揺らす音が響く中、彼はぽつり、ぽつりと過去を語り始める。


〇白嶺の過去
かつて青研が、捕らえたあやかしの魂を無理やり繋ぎ合わせ、痛覚を遮断して生きる兵器として使い潰していた凄惨な現場。

白嶺(モノ)『道具として永遠に苦しめられ、尊厳を奪われるくらいなら……せめて私の手で、綺麗にこの現世から祓って、魂を幽世(かくりよ)へ還してやる方がいい。それが、私が選んだ唯一の慈悲だった』

誰かを救うためではなく、これ以上残酷な目に遭わせないために、あやかしを殺し続けてきた血塗られた日々。

白嶺(モノ)『そんな風にしか生きられなかった私に、緋屋宗介は、『いつか人間とあやかしが、傷つけ合わずに隣り合える国を造りたい』と、笑っていた。……そして、その理想を何一つ疑わず、ただ目の前の小さき命のために体を張る君に出会った』

幼い朱音が妖狐の子供を抱き上げる姿。と一年前、緋屋宗介が手負いのあやかしによって殺される場面が重なる。前者ではちらりと振り返り幼い朱音を見るも感情の無い瞳。後者では、感情を露わに、あやかしを屠る白嶺の憎悪に満ちた瞳。


〇隠れ家・居間・深夜に戻って
白嶺が朱音の顔を真っ直ぐに見つめる。
白嶺「君のその無垢な優しさは、私にとって……どれほど救いだったか分からない。けして、あいつらの戦いの道具になど、絶対にさせない。私のこの命に代えても」

白嶺の壮絶な業と、自分に向けられた底知れない愛の深さを知り、朱音の目から涙が溢れ落ちる。
冷酷だと思っていた彼の祓いは、誰よりも不器用で、誰よりも傷だらけの優しさだった。

朱音(モノ)『……ずるいよ。そんなの……もう、嫌いになれるわけがない。お互いの感情を無くさなきゃ、この符は外れないのに――』

白嶺を突き放すどころか、彼の背負う孤独ごと愛してしまいたいと、激しい恋心を爆発させる朱音。二人の想いが極限まで高まったその瞬間、胸と胸を繋ぐ鎖がかつてないほど強く、美しい黄金色の光を放ち始める。 
※呪布は白嶺が施した術なのでいずれ解呪できますが双命符は呪として深く深く結びついていく

感情を断ち切るどころか、絶対に離れられないほど深く心が結びついてしまったかもしれない事実を、二人が実感する。驚愕と戸惑いの表情の朱音。すっと朱音の髪に手を差し入れ、引き寄せた白嶺が、唇を重ねる。ゆっくりと丁寧なキスをする場面。


〇緋屋裏手の井戸
青研が瓦礫の中に立ち、宗介が隠していた地下の祠の扉を、術式で無理やりこじ開けている。
祠の奥から、古い巻物――宗介の遺した『繋束の異能の記録※例えば朱音に異能が目覚めた時の記録や、宗介自身が朱音ほどでは無いが、力の自覚をしていた』と『最上位にある高格あやかしの封印記録』を青研が手に入れる。

青研「ふふ、見つけたよ、宗介さん。これさえあれば、あの娘の力を使って、伝説の冥主すら呼び出せる。……さて、白嶺。お前たちの逃避行の終着地を決めてあげよう」

青研の邪悪な笑みと、都の全域に広がり始める巨大な霊的異変の予兆で引き。