目に入った改札前の液晶。
『特別警報イコールイコール』
今私の目の前に広がる世界は、この警報とは等しくなかった。
「ポテトの無料配布していまーす! いかがですか?」
赤いエプロンを着た女性が大きな箱を持ち、ポテトを配っている。
本来ならありえない光景も今はもう馴染んでしまった。
人々は当たり前のように列を作っているのだから。
「私たちも並ぼ」
「うん」
ついてきただけ。
一つの感情を思い出してから、平常心を失いつつあった。
「さっきの男子、面白いこと言ってたよね。発案者になれる、とか」
そんなことも言われたな。
忘れかけてた。
「まるで生き残る前提だったよね。あのマインドには私はなれないな」
申し訳なさだけが募る。
上手く返事が出来ない。
「これもらったら、探しに行くからね」
ずっと断り続けていた。
今日を私の都合で終わらせたくなかった。
でも、押しに負けた。
私は、こんなに思われて、幸せだったのかもしれない。
「……ありがと」
「そんな暗い顔しない! その表情で会ったら、困惑されちゃうよ」
受け取ったポテトは既に冷たくなっていた。



