特別警報イコールイコール


 小さな机が置かれている。
 そこにメイク道具を置いた。

 背中側に広がっている花畑。
 強く、咲き誇っていた。

「早速始めるね」

 日和の一言からメイクが始まった。
 慣れた手付きで私のことを彩り始めた。

「ねえ、柚葉、彼氏とは連絡取れてるの?」

 目を閉じているときに飛んできた言葉は私を動揺させた。
 気にしないようにしていたから。

「……ううん。取れてない」

 今日、デートする予定だった彼氏。
 違う高校に通っているから連絡の取れない状況では会うことが難しい。
 それに、私は寝落ちした上に朝連絡をし直すのも忘れ、そのままこのスマホは使うことが出来なくなった。
 電波がない。
 ずっと、圏外。

「私とじゃなくて彼氏と一緒にいたかったよね」

 口角を少しだけ上げている。
 私は、彼氏に会いたい。
 ずっと気になっている。
 でも、日和のこともとても大事だ。
 私にとってのかけがえのない存在。
 だから、そんなこと言わないでほしかった。

「私はね、今とっても幸せだよ。一緒に今を過ごせる親友がいるのが」

 手は動かされたまま。

「彼氏のこと、探しに行かなくていいの?」

 本音は隠したまま。
 言い出したくても言えない。
 私にとってこの時間も大事。
 日和の心を一人にしたくない。
 
「よし、せっかくもっと可愛くするんだから、彼氏に会いに行こう」

「いいの?」

 私は目を閉じている。
 一気に視界が明るくなった気がした。
 ああ。会いたかったんだね。

「でも、まずはポテト食べたいよね」

「だよね」

 滅ぶとは思えないにこやかな会話で終わったメイク時間。
 渡された手鏡越しに見た私の顔はいつもと違った。
 自信が持てなかった顔が可愛く思えた。
 メイクという魔法。