講義室に入り、授業の準備をしてたら机の上のスマホがピカっと光った。
時計をみたら、咲太郎はまた授業前の時間。
これは咲太郎だなと思ってスマホを手に持った。
イヌのアイコンが可愛いく揺れてる。
『あゆく——ん!ね!たろうを束縛してみるぅ?』
画面の文字に思わずクスッと笑う。
そのまま指をスマホの上で滑らせる。
『朝からどうしたの?笑』
(きっと友達と話してて何か思いついたんだろうな)
『束縛?咲太郎されたいの?笑』
そのまま一文追加して送る。
返事が来るまで、スマホを手に握る。
(多分咲太郎のことだからすぐ返事が来るはず)
『うんっ!たろうされてみたい!お友達がね、彼氏さんに束縛しすぎって言われたんだって!』
「ははっ。もう」
思わず声に出して笑う。
「あゆむ?どうした?」
隣の友達がぼくのことをみて不思議そうに尋ねる。
「ごめん。ちょっと面白いことあって」
画面に視線を落としたまま、そう答える。
答えながらも指はスマホの上で動く。
『咲太郎を束縛したらぼくもその分束縛されそうだね。笑』
(こう言ったら咲太郎なんて答えるかな?)
(きっとぴやぁぁ——は来るだろうな)
画面を見つめながら目元が緩む。
「あぁ。恋人?」
友達がそう尋ねてきた。顔をあげて友達を見る。
友達はスマホを指さしながら聞いていた。
「うん。そう」
ぼくもそう答えるも顔はまだ笑ってる。
「あゆむにそんな顔させるなんてすごい恋人だな」
友達もそう言って笑う。
「ね。本当……すごいよ」
ぼくも静かにそう返した。
そんなことを話してたら画面がまた光った。
『ぴゃぁぁぁぁ——!』
(やっぱり)
予想を裏切らない咲太郎の反応に息がこぼれる。
(もう)
(ほんと……可愛い)
そのままぼくも指を画面に滑らせる。
『咲太郎?笑。喜んでない?笑』
『なんでわかったの?たろう、あゆくんに束縛されるの想像して素敵って思った!』
『咲太郎らしいね。笑』
そう送って、一瞬指を止める。
(咲太郎に束縛されるのはいいよ)
(咲太郎に束縛されるのは嫌じゃない)
でも。
止めてた指を動かす。
『束縛なんてしなくてもぼくの隣は咲太郎で、咲太郎の隣はぼくだけ。でしょ?』
そう送った。
(うん。ぼくたちは束縛とかよりも、こっちが似合う)
画面を見ながら静かに頷いた。
「あゆむいい顔してる。本当」
隣からまた友達がそう声をかけてくる。
顔をあげてぼくも友達の顔を見て笑った。
「うん。ぼくも今のぼくいいなって思う。恋人のおかげだよ」
「いい関係なんだな」
「うん。最高の恋人だよ」
自信満々の顔でそう答える。
「いいなぁ。俺も恋したくなった」
そう言って友達は笑った。
そんな話をしてたらまた画面が光る。
『たろう!今からあゆくに会いたいですっ!』
(また咲太郎らしい文章だ)
咲太郎はいつも気持ちに素直で一緒にいると心が軽くなる。
『授業受けなきゃダメだよ』
『やだぁ。お胸さんがときめきました。授業受けなくないと言ってます』
うーん。と思って少し考える。
頭の中で今日の予定を考える。
(18時からバイトだからそれまでの時間なら会える)
よし。と頷いて、画面に指を滑らす。
『真面目に受けないなら、今日会おうと思ったけどやめようかな』
(きっと咲太郎の胸はすぐ落ち着くだろうな)
返事を想像して小さく笑う。
『お胸さん落ち着きました!授業受けるって言ってます!』
予想通りの返事にまた笑顔になる。
約束をしてそのままスマホをカバンの中に戻した。
不意に決まった約束。
咲太郎の顔が見られると思うとぼくも嬉しい。
(咲太郎のお友達に感謝かな)
隣から友達が声をかけてくる。
「あゆむの恋人どんな人?」
興味津々な目をして聞いてくる友達。
「ん……」
少しだけ悩むぼく。
「とっても素直な人……かな」
「あと元気もくれるし、一緒にいたら頑張れる相手かな」
ぼくの顔をじっと見てくる友達。
「うん。あゆむの素の良さを引き出してくれる相手なんだな」
ポツリとそう言って頷く友達。
「ぼくも、ぼくの知らない良さに出会わせてもらってる」
「いつか、会いたいな」
「うん。そのうち会って」
そう言って2人で笑う。
こんな風に話せるなんて本当咲太郎はすごい。
それにしても、束縛してみるなんて……。
本当に面白いことを言ってくる。
さて今日会ったときまずなんて言おうかな。
授業を聞きながらそんなことを考えてみる。
そうだ。
閃いた。
ノートに視線を向けてバレないようにこそっと笑う。
(咲太郎、ぼくのこと束縛しなくてもずっと隣にいる予約してるんじゃなかったの?)
そう言ってみようかな。
きっと、ぴゃぁぁぉぁ——!は聞かせてくれるだろうな。
可愛い咲太郎の表情が頭の中に浮かんでくる。
(早く会いたいな)



