好きまでの距離


『あゆくん!今日会える?』

 お昼休みに急いであゆくんに連絡をする。

 (あゆくん今日バイトない日だよね?)

 お友達と予定入ったりしてるかな?
 急だから無理かな?

 ちょっとだけドキドキしながら連絡を待つ。


 スマホが鳴った。はやる胸を押さえて急いで画面を見る。

『今日?いいよ』

 (やったぁ——!)

 スマホを上に持ち上げて喜ぶ。

「たろう?なにしてるの?」
 友達から見られて、へへっ。と笑って誤魔化す。

 急いでスマホの画面に指を滑らす。

『やったぁ——!嬉しい——!』
『咲太郎何かあった?急にどうしたの?』


 (あっ、あゆくんに心配かけちゃった)


『あゆくんの顔が見たくなったの!たろうはいつでもあゆくんに会いたいのですっ!』
 急いでそう送る。


『うん。ぼくが今日は校門まで迎えに行く』
 あゆくんからそう返事が届いた。

 (うぅ。あゆくんに心配させたくはない)

 スマホを握りしめて悩むぼく。

 (でも……これは直接話したい)

『きゃあ——!嬉しい——!』
 普段よりも少しだけテンション高めな文面を送った。


 早くあゆくんに会いたいとそわそわしながら授業が終わるのを待つ。

「たろうー今日みんなでカラオケ行こうと話してるけど、どう?」

 友達に話しかけられた。
 カバンに急いで荷物を詰めてるぼく。

「ごっめぇ——ん。今日大切な用があるのぉ。また誘ってねぇ」

 そう言って急いで教室を飛び出した。
 そのまま校門までダッシュするぼく。


 (あゆくんを待たせたくない)

 校門が近づくと、マフラーに首を埋めてるあゆくん。

「あゆく——ん!」
 走りながら手を振るぼく。

 ぼくの声を気がついて、手をふり返してくれるあゆくん。

「咲太郎そんなに慌てて走らなくていいから」
 あゆくんがぼくにそう叫んでくれてる。

 (たろうは早くあゆくんのそばに行きたい)

 より走る速度があがる。

「あゆくんお待たせ!寒くなかった?待った?」
 あゆくんの手をそっと握る。

 (冷たい)

「あゆくん待ったよねぇ。ごめんね」
「ううん。ぼくは大丈夫。それに」

 そこで言葉を区切るあゆくん。

 ぼくを見つめて笑う。
「咲太郎がぼくのこと温めてくれるんでしょ?」


「ぴやぁぁぁぁ——!たろう温める。すぐ温める」
 あゆくんの両手を握った。

「もう咲太郎てば。笑」
 笑うあゆくん。

 それからふっと真面目な顔になるあゆくん。
「咲太郎どうしたの?なにがあったの?」

 ぼくの顔を覗き込む。

「あゆくん心配させてごめんねぇ。いいことなの!あゆくんに1番に伝えたかったの!」

 あゆくんの両手を握ったまま手をブンブンと振る。

 ぼくの勢いにカバンからチリン。チリン。と聞こえる。

「そっか。じゃあお店行く?」
「ううん。今日はあゆくんと2人がいいのぉ。公園行こう?」

 そのまま手を繋いで2人で植物園の隣の公園に向かう。

 公園のベンチに2人で座る。
 周りには誰もいない。

「あゆくんにたろう、1番最初に伝えたいことがありますっ!」
 ベンチから立ち上がってあゆくんの前に立つ。

「うん。どうしたの?」
「あのね!たろうついに!一位取りましたぁ」

 今日配られた順位表をあゆくんに見せる。

 紙を受け取りまじまじと見つめるあゆくん。
 紙から顔を上げてぼくの顔をみる。

 そして勢いよくベンチから立ち上がるあゆくん!

「すごい!咲太郎すごいよ!おめでとう」
 あゆくんがぴょんぴょん飛び跳ねながらぼくにハイタッチをしてくれる。

「ありがとうぉ。あゆくんのおかげだよぉ。」

 順位表を見た時に1番にあゆくんの顔をが浮かんだ。

 (あゆくんと一緒だったから取れた)

「ううん。咲太郎が頑張ったからだよ」
 そう言ってくれるあゆくん。

 周りをキョロキョロと確認する。

 (うん。周りに誰もいない)

 そっとあゆくんに近づいて、そのままあゆくんを抱きしめる。

「あゆくんがいてくれたから。だからたろう頑張れたの」
 あゆくんを抱きしめたいままそう伝える。

 あゆくんはぼくの背中に手を回してくれた。

 (あゆくんからも抱きついてくれた)

「ぼくも咲太郎がいると頑張れるよ。ぼくたちはきっと、2人だと普段以上にパワーが出せるね」
 そう言って笑ってくれた。

 しばらくそこまま抱き合ってあゆくんの温もりを感じる。

 (あゆくんの温もり、離したくないな)

「たろう、このままずっとこうしてたいよぉ」
 あゆくんにそう言ってみる。

「うん。ぼくも」
 あゆくんがそう言ってくれた。

「たろう嬉しいぃ——!あゆくんにずっっ——とくっついてるもんねぇ」

 そう言ったら抱きしめた体が震えた。
 あゆくんが笑ってる。

 そっと体を離す。

「もぉ。あゆくん笑ったなぁ」
「咲太郎らしいね」

 優しい顔のあゆくんが、そのまぼくの手を握ってくれた。

「おめでとう。咲太郎」
「うん。ありがとう」

「次の学年も一緒に頑張ろうね。ぼくも協力する」
「ありがとう。でもあゆくん負担にならない?」

 少しだけ心配になってそう聞く。

「ならない。咲太郎の助けになれるの嬉しいよ」
 首を振ってはっきりとそう答えてくれるあゆくん。

「それにね。ぼくも咲太郎と一緒に勉強してるから、成績上がってたよ」

 そう言ってあゆくんは笑った。

「そーなのぉ?」
「うん。1人より2人で頑張るのぼくたちには合ってそうだね」

「うんっ!これからも一緒にお勉強しようねぇ。あっ、お勉強以外もだよぉ。たろうはあゆくんを離さないからねぇ」
 そう言ってまたあゆくんを抱きしめた。


「咲太郎が言うと怖いなぁ。笑」
 抱きしめた体が笑って震えてる。

 体を離して2人で椅子に座る。

「これをあゆくんに一番に伝えたかったの」
「ありがとう。ぼくを一番に選んでくれて」

「たろうの1番はずっ——とあゆくんなのっ!」
「うん。ぼくの1番もずっと咲太郎だよ」

 お互い顔を見合わせてそう言って笑った。

「さっ。じゃあ帰ろっか」
 あゆくんがそう言って立ち上がる。

「えぇ——!せっかくあゆくんに会えたのに」
 ちょっとだけむくれるぼく。

「また明日会おう。今日は早く帰ってご両親にそれ見せてあげて」
 そう言ってぼくに手を差し出すあゆくん。

 あゆくんの優しさに胸がキュンとなる。

 あゆくんの手を握って立ち上がる。

「うんっ!わかったぁ。その代わり明日のあゆくんはたろうのだよぉ?」

 そう言ってあゆくんの顔を覗き込んだ。

 (たろうのこと考えてくれるあゆくんの優しさ隣から伝わる)