好きまでの距離


 明日はついに!14日。

 ぼくも最後の準備に余念がない。

「ママー!これ味見て」
 リビングにいるママに声をかける。

「きゃ——!可愛い——」

 イヌもネコの形にくり抜いたクッキー。

 イヌをチョコ味に。
 ネコをプレーン味にした。


「どう?甘さ控えめにしてるけど」
 あゆくんが食べれる甘さにしてるから少しだけドキドキする。

 もぐもぐしてるママをじっと見つめる。

「うんっ!おいしっ!甘いのが苦手な人でもいける」
 ママからグーのサインが出た。

「これは専用なのね」
 そう言って笑うママ。

「うんっ!これはパパにもお友達にもなしっ!ママ内緒だよ」
 そう言ってママに伝える。

「ふふっ。そうね。ところでパパとお友達のは?」

 覗き込むママ。

「アイスボックスクッキーにしてみたよぉー」


 隣に置いてあるお皿を見せる。

「うん。いいじゃない。このイヌとネコに仕掛けあるの?」
「もっちろん!今からチョコペンでお顔さん書くよ」

 そんなこと話してたらオーブンがまた鳴る。
 ぼくは急いで、オーブンから取り出した。

「まぁ——可愛い」
 そこには、ネコの形をしたガトーショコラ。

「いい?」
 ママに聞いてみる。

「うん!最高!これもらったら嬉しわぁ」
 ママが頬に手を当ててそう言ってくれた。

 ガトーショコラにも顔を描いて箱に入れる。
 クッキーも綺麗にラッピングした。

 (明日が楽しみ)
 


 朝教室に入った。

「たろう、持ってきた」
「私も、ほら!」

 みんなが口々にそう言う。

「待って!みんな!お昼に机広げて交換会しよ——」
 そう言ったらみんなもそうする。と言ってくれた。

 カバンの中から、ラッピングした袋を取り出す。

 (さっ、たろうはちょっと行って来なきゃ)


 授業が始まる前に急げ!

 廊下を走り出す。


「ゆーちゃん——!」
 ガラッと保健室の扉を開ける。

「朝から太郎くんは元気だね」

 そう言って笑うゆーちゃん。
 ゆーちゃんの元に走っていく。

「はいっ!いつもお世話になってるのでお礼ですっ」

 ラッピングしてクッキーを手渡す。
 びっくりした顔をして受け取るゆーちゃん。

「ぼくも?いいの?」
「うんっ!あっ、でもねゆーちゃんはお友達やパパと同じやつ。あゆくんのとは違うの」

 そう伝える。
 目を丸くした後に一気に笑い出すゆーちゃん。

「うん。ぼくはそんな太郎君が好きだよ。ありがたくいただくね」
 そう言ってくれた。

 (ゆーちゃんはいつもそう言ってくれる)

 
 授業が始まる前のチャイムが鳴った。

「あっ、たろう戻らなきゃ!じゃあね」
 ゆーちゃんに手を振って急いで教室まで走る。

 お昼休みには、みんなで持ち寄ったものを交換した。


『あゆくん!早く会いたいなぁ』

 みんなで食べてたら早くあゆくんの反応が見たくて、我慢できずにメールを送る。

『そうだね。ぼくも会いたい』

 (ぴやぁぁぁぁ——!)
 
 スマホを思わず抱きしめる。

「たろう何してんの?」
 友達に聞かれて笑って誤魔化すぼく。

 授業中も今日はそわそわする。
 
 (早く、放課後やってきて)

 授業が終わり急いで教室を飛び出した。

 もちろん手にはあゆくんに渡す紙袋が握られてる。


『あゆくん!たろう授業終わったよ』
 
『お疲れさま。校門前みて』

 ダダダっと階段を駆け降りて、校舎の入り口を出たぼく。

 今日は裏門から出て近道を使おうと思ってた、体に急ブレーキをかける。

 (正門!急げ)

 あゆくんに渡す紙袋は揺らさないように、でもあゆくんに早く会えるように全速力で走る。

 校門の前にマフラーをして、手を振ってるあゆくんがいる。


「あゆく——ん!」

 あゆくんの名前を呼びながらさらにスピードを上げるぼく。
 そんなぼくの姿をみて笑ってるあゆくん。

「お待たせ」
「咲太郎そんなに走らなくていいのに」

 あゆくんがそう言う。

「だってたろう、お昼からず——っとあゆくんに早く会いたかったのぉ」
「うん。だから今日はここまで来たんだ」

 少しだけ頬を赤くしたあゆくん。

 ぼくは我慢できなくなって、あゆくんの手を握った。

「早く行こうっ」

 そのままいつもの植物園のフリースペースに向かった。

 いつもの席に2人で座る。
「あのね!あゆくん今日はなんの日でしょぉ」

 へへっ。とイタズラ顔で聞いてみる。

「バレンタインだね」
「そ——でぇ——す。愛を伝える日なので、たろうからのありったけの愛を込めました」


 じじゃ——ん。


 そう言いながらあゆくんに紙袋を渡す。

「ありがとう。見ていい?」
 あゆくんが嬉しそうな顔をして受け取ってくれる。

「もちろんっ!みて」

 あゆくんの反応が早く知りたい。

「わぁ——可愛い。ネコとイヌのクッキー」
 あゆくんは最初にネコとイヌのクッキーを取り出した。

「そぉでぇ——す。たろうとあゆくん」
 手に取って眺めてるあゆくん。

「これ……なんだか、食べるのがもったいないね」
 ポツリとそう呟いた。

「へへっ。嬉しい。でもたろうの愛がてんこ盛りなので食べてくださいっ!」
「咲太郎の愛がてんこ盛りなら胸焼けしないかな?笑」

 そんな風に笑うあゆくん。


 次に箱を取り出した。
「これ大きいよ?」

 そう言いながらゆっくりと中を開けた。

「わぁ」

 それだけ言って黙るあゆくん。
 視線はずっと箱の中を見てる。


 (もしかして、量多いかな?)

 ちょっぴり心配になるぼく。

 あゆくんは顔をあげまで、ぼくの手を握ってくれた。

「咲太郎。ありがとう。愛確かに受け取ったよ」
 
 ぼくの手を握ってない方の手で胸を撫でるあゆくん。

「良かったぁ——。たろうの愛たぁ——くんさん受け取ってねぇ」
「うん。ありがとう」

 あゆくんが綺麗な笑顔で笑ってくれる。


 (たろうの好きなあゆくんの顔)


「咲太郎、ぼくからの愛も受け取ってください」
 あゆくんがそう言って紙袋をぼくに渡す。

「えっ!?たろうに?うっそぉ——」
 両手をほっぺにおいて驚くぼく。

「なんでそんなに驚くの。ぼくだって咲太郎に愛たぁ——くさんあるよ」
 そう言って笑うあゆくん。

 ぼくは胸がドキドキして、息が詰まる。

 (たろう、こんなに幸せでいいの?)


 ゆっくり箱を開ける。

「わぁ」
 あゆくんの顔をみる。あゆくんは笑ってる。

 もう1つの箱も開ける。

 
「ぴやぁぁぁぁぁ——!」

 あゆくんを抱きしめたい。

 (でも……ここじゃ……)

 その代わりに。
 自分の体をぎゅっと抱きしめる。

「咲太郎また。笑」
 そう言って笑うあゆくん。

「だってぇ!あゆくんとたろうがいる」
 あゆくんがくれたのは、イヌとネコのフィナンシェ。

「うん。ぼくたち同じことしてるね」
 そう言って笑うあゆくん。

「うん。同じだね」
「あゆくん!来年も楽しみにしててねぇ」

 ぼくがそう言ったらあゆくんは頷いた。

 その後に。

「ねぇ。咲太郎来年は一緒に作ろうか」
 そう言ってくれた。

 (たろうの家のキッチンにあゆくん)