好きまでの距離


 咲太郎との待ち合わせより少し早めに家を出る。

 なんとなく街をぶらぶらと歩きたくなった。

 (今までのぼくからは考えられない)

 自分の行動にクスッと笑ってしまう。

 咲太郎と出会ってから本当に変わった。
 (今のぼくの方が好きだな)

 ふと左側を見たら、雑貨屋さんが目に入る。

「あっ……咲太郎好きそう」
 口から溢れる音。


『ぴゃぁぁ——!あゆくん入っていい!?』
 咲太郎の声と表情が浮かんでくる。
 咲太郎絶対目をキラキラさせて繋いでる手がソワソワするんだろうな。


 (入ってみよう)

 そのままお店に足を踏み入れる。


 中にはキラキラした小物や可愛いものたちで溢れてた。
 絶対咲太郎は気にいる。

 誘ってみよう。そう思いながら店内を歩いてた。
 1つのカゴのところで足が止まった。

 (これ……)

 カゴの中から、取り出してみた。

 ネコのコインケース。
 咲太郎が描いてくれたアイコンに似てる。

 (咲太郎に渡そうかな)

 視線を隣にずらす。

「あっ、これ」
 思わず声が出た。

 そのカゴの隣にはぼくが描いたイヌに似てるコインケース。
 それも手に取る。

 同じサイズでイヌとネコのコインケース。
 両手で持って並べてみる。


 (ふふっ。ぼくと咲太郎みたい)


 そのままレジに足が向いた。
 プレゼント用にしてもらい、品物を受け取る。

「リボンの色は赤と青がありますがどうしますか?」

 (リボンとか選べるんだ。すごい……)


 新しい発見だ。少しだけ悩んで、ぼくのを青に。咲太郎のを赤にしてもらった。


 綺麗に包装され、リボンをつけてもらった品物たちを受け取る。
 紙袋を手にお店をでる。


 カバンの中でスマホが震えた。


『あゆくん!テスト終わったぁ——!あゆくんに会える』
 いつもの元気いっぱいの咲太郎。

 文面を読んですこしだけ安心した。


 (テスト、手応えあったんだ。良かった)


 手にしてた紙袋を目の高さまであげてみた。

 (これ、咲太郎にどうやって渡そうかな)

 プレゼント?
 ううん。テストお疲れさま?
 ぼくたちがいたよ?

 どれがいいかな。と頭の中で考えてみる。


 (咲太郎なら、全部喜びそう)


 答えは出ないまま、駅まで行くために足を一歩踏み出した。


「あゆくん!」
 咲太郎の方が先に駅に着いてて、ぼくを見つけてぴょんぴょん飛び跳ねてる。


「ごめんね。待たせた」
「ううん。たろうがね、あゆくんに会いたくて走ってきたのぉ。久々のあゆくん」

「テスト前にあったよ?笑」
「5日も!会えなかったのぉ」

 少しだけ、ほっぺたを膨らませる咲太郎。

「ふふっ。ごめんね。テストおつかれさま」
 そう言いながら、そっと咲太郎の手を握る。

 咲太郎はぼくが繋いだ手を見て、嬉しそうに笑う。

「たろうね!今回のテストいい感じなの」
 声が弾んでる咲太郎の声。

「良かった。咲太郎が頑張ったからだね」
「たろうも頑張ったけど、あゆくんが教えてくれたからなの。あの部分ねテストに出たの」

 あゆくんすごぉーいとぼくの顔を覗き込んでくる。

「年の功かな。笑」
 そんな風に言って笑ってみる。


 咲太郎が食べたいと言って、喫茶店に入る。
 中は可愛いもので溢れてて咲太郎が好きそうなお店。

 2人でパフェを頼んだ。

 (今、渡そうかな)

 紙袋をそっとテーブルの上に置いた。


 咲太郎は視線を紙袋に落とした。
「あゆくん?これなぁーに?」

 不思議そうな顔をしてる咲太郎。
「開けてみて」


 そのまま紙袋を咲太郎に渡す。

 紙袋を受け取って中から、青と赤のリボンをかけられたプレゼントの箱を2つ取り出す咲太郎。


「たろうが両方開けていいの?」
 咲太郎がぼくの方を見ながら聞く。

「うん。咲太郎に開けてほしい」

 ぼくがそういうと、咲太郎はちいさく「わかった」と言ってテープを丁寧に剥がし始めた。


 包装紙をあけて、箱を開けた咲太郎。
 中身を見て目をキラキラさせてぼくをみる。

「あゆくんこれ、たろうの」
 赤のリボンに入ってたネコのコインケースを手に取る咲太郎。

「うん。似てるなって思って」
 咲太郎は、視線を下に落としてもう1つの箱のテープをゆっくり剥がし始めた。

「これは……あゆくんの」
 ぼくをみる咲太郎に静かに頷く。

 咲太郎の手には、ネコとイヌのコインケースが並べられてる。


「ぴゃぁぁぁ——どうしよぉ」


 そっとコインケースをテーブルに置いて両頬を両手で挟む咲太郎。


「たろう、嬉しい。これたろうとあゆくんだぁ」
「うん。ぼくたちが描いたのにそっくりと思って」

「これ!たろうがねこさんを、あゆくんがいぬさんを持って」
 咲太郎がイヌをぼくに手渡してくれる。

「うん。ぼくもそれがいいなと思って買ったんだ」
 咲太郎の手から受け取ってそう伝える。

「あゆくんありがとう。たろうこれ大切にするねぇ。あゆくんがそばにいるねぇ」
「ふふっ。そうだね。ぼくも咲太郎がずっといるね」

 お互い、コインケースを握っている。


「もうたろうとあゆくんは離れられないもんねぇ——」
「咲太郎が言うとなんだか怖いね。笑」

 そう言いながらお互い顔を見合わせて笑う。


 パフェが届き、テーブルの上に置いてた箱をお互いソファーに置く。

 パフェを食べながら咲太郎が静かに口を開いた。

「たろうね、あゆくんと出会ってから幸せがたくさんなの。咲太郎と呼んでもらう夢も叶ったし、毎日幸せなの」
 そう言って綺麗な顔で笑ってくれた。

 咲太郎のかっこよさに思わず胸を少しだけ押さえた。


 (ぼくが想像してたよりも、もっと柔らかな咲太郎の笑顔)