好きまでの距離


 あゆくんは、テスト期間が終わって少しだけ余裕がある時期に入ったみたい。
 ぼくは、明日からテストが始まる。

 図書館の自習室であゆくんにわからないところを教えてもらう。

「咲太郎ここは、こんな風に考えるんだよ」
 あゆくんがノートに分かりやすく解説をしてくれる。

 ぼくもそのノートを覗き込みながらしっかりと聞く。
「たろう、ここがなんでこうなるか分かんないのぉ」
 苦手な部分で躓いてるぼく。

「ここはね、1つずつゆっくり考えるんだよ」
 あゆくんは何回も分かりやすく説明してくれる。

「あっ!たろう、わかった!」
 あゆくんが苦手な部分を細かく教えてくれたことで一気に理解がすすむ。

「咲太郎は基礎できてるから、慌てずに1つずつ解けば大丈夫だよ」
 あゆくんがぼくの方をみて笑ってくれる。

 それからまたわからない問題を教えてもらったり、引っ掛け問題の対策をあゆくんがしてくれた。



 冬の少しだけ薄暗くなり始めた道をあゆくんと2人で歩く。
「寒いねぇ——」と言いながら、ぼくはあゆくんの手をそっと握る。

「うん。寒いね。でも咲太郎の手が温かいからぼくあんまり寒くないかも」
 そんな風に笑ってくれるあゆくん。

「ぴゃぁぁぁ——!あゆくんに抱きつきたいよぉ」
 あゆくんと繋いでる手をブンブンと振り回す。

「咲太郎てば……笑」
 あゆくんが笑う。

 ぼくが、手を振り回すから両隣からチリン、チリンと鈴も鳴る。

 公園を通ってたら、出店が出てた。
 肉まんのいい匂いがする。



 ぐぅぅっ——。
 (お腹なっちゃった)
 

「咲太郎、ちょっと寄ろか」
 あゆくんが出店を指さした。

「いいのぉ?でもあゆくん今食べたらお夕飯入らなくなっちゃう」
 ぼくはそれが心配になる。


 (あゆくん、全部食べたら……夜ご飯苦しくなる)


「ううん。大丈夫。さっ!寄ろう」
 あゆくんがぼくの手を引いて出店に向かう。

(そーだ!)

 出店に着いた。
 ほかほかの湯気が立ち上ってる。

「おじさ——ん!肉まん一個くださぁ——い」
 ぼくは、お店のおじさんにそう声をかけた。

「あつあつでおいしいよ!はい」

 おじさんから肉まんを受け取り、お金を払う。

「咲太郎」
 あゆくんがぼくの名前を呼ぶ。

「あゆくん!これを半分こしよぉ」
 肉まんを真ん中で綺麗に割る。

 そして片方をあゆくんに渡す。
「これ、あったかいね」

 受け取ったあゆくんがそう言って笑う。

「うん!ちょっとお行儀悪いけど、このまま食べちゃぉー」
 あゆくんにそう言って、肩を並べて歩き出す。


 両手に握った肉まんから白い湯気が出てる。
 お互いかぶりついて、はふはふする。

「おいしいね」
 あゆくんが口に入れて飲み込んだのをみてそう声をかける。

「うん。おいしいね」
 あゆくんもぼくをみてそう笑う。

「いいね。これ」
 あゆくんがぽつりとそう言ってまた肉まんにかぶりついた。

 (2人で半分こ)

 ぼくとあゆくんの手の中からあっ、という間に肉まんはなくなった。
 またお互い自然と手を繋ぐ。

「おいしかったね。なんだか幸せな味がしたね」
 あゆくんがそう言って笑う。

 あゆくんのその笑顔を見ると、ぼくの胸はぎゅっと掴まれる。

「ね——!おいしかったぁ——!あゆくんと食べるともっとおいしいねぇ」
「咲太郎はいつもそればっかり。笑」

 あゆくんが笑う。

「咲太郎。明日からテスト頑張って。咲太郎なら大丈夫」
 あゆくんが前を真っ直ぐみてるけど、手にぎゅっと力を入れて握ってくれる。

 (あゆくんからの励ましだぁ)

「うん!たろう頑張る!今回はね、たろう目標があるの」
 初めてあゆくんに伝える。

「えっ?そうなの?」
「うん!今回はね、学年一位を狙うのぉ——」


 少しだけ、高い目標。


「咲太郎」
 あゆくんが足を止めてぼくをみる。

「大丈夫。咲太郎の頑張りならできる。ぼくも応援する」
 しっかりぼくの目を見ていってくれる。

「でもね、順位は大切だけどそれにとらわれないで咲太郎らしく力を抜いて頑張ってきて」
 静かに、でも力強く言ってくれた。

「うんっ!ありがとう。たろう、頑張る」
 また2人で駅までの道のりを目指し始めた。




 駅であゆくんとは別れて家に帰った。

『咲太郎。ご飯残さず食べられたよ。今日は早く寝て明日に備えてね。おやすみ』

 あゆくんからきたメールをそっと指で撫でる。

 そのまま、ベッドに入った。