好きまでの距離


 あゆくんのテストが終わって今日は会える日。

 スキップしたくなる気持ちを抑えて、保健室にいく。

「ゆーちゃん!」
 保健室にのドアを開けて、ゆーちゃんに声をかける。

「太郎君。今日も元気だね」
 机に座ってたゆーちゃんが顔を上げて挨拶してくれる。

「今日はねぇ――!テスト終わったあゆくんと会えるのぉ――」
 るんるんした気持ちで保健室の中に入る。

「そう。良かったね」
 静かに笑うゆーちゃん。

「これみてぇ――!初詣で2人に買ったお守り――!」

 ゆーちゃんの机の前に行ってカバンにつけてるお守りを見せる。

 チリンチリンとカバンで鈴が揺れる。

「いいね。2人とも仲良さそうだね」
 ゆーちゃんが笑ってくれる。

 ゆーちゃんに冬休みに話をしてたら、あゆくんからメールが入った。


『咲太郎この電車に乗るよ』
『テストお疲れさま――!あゆくんに会えるの楽しみ――!』

 そう返事を返した。
「太郎君いい笑顔してますね」

 ぼくの様子を見てたゆーちゃんがそう言った。
「うんっ!あゆくんといると楽しいよぉ――」

 ぼくもそう答えた。
「じゃあたろう行くねぇ――!」

 ゆーちゃんに挨拶をして保健室を出ようとした。
「太郎君」


 ゆーちゃんがぼくを呼び止めた。

「君はあゆむを救ったんだね」

 ザワザワした校内に、ゆーちゃんのその声がぽつんと落ちてきた。

「ううん。ゆーちゃん違うよ」
 ぼくは首を振った。

「たろうは、ただあゆくんが好きなだけ。それにね、あゆくんはたろうが名前を呼んで欲しいと願った人なの。だから救ったりは違うよ」

 ゆーちゃんにそう伝えた。

 ゆーちゃんはぼくの顔をみて、そのあと優しい笑顔を見せてくれた。

「うん。太郎くんはそうだね。あゆむによろしくね」
 そう頷いてくれた。

「任せて――!じゃあたろうは行くねぇ」
 ゆーちゃんに手を振って保健室を出る。


 (あゆくん♪あゆくん♪)

 名前にリズムをつけながら駅まで歩いていく。

 駅の出口にあゆくんが立ってぼくに手を振ってる。
 あゆくんだ。そう思って一目散に走っていく。

「咲太郎てば。笑」

 ぼくのダッシュをみて笑うあゆくん。

「あゆくんごめんねぇ。待たせちゃった」
「違うよ。今日はぼくが咲太郎を待ちたかったの」

 テスト期間ぶりのあゆくん。

「咲太郎、テスト無事に終わったよ。咲太郎のおかげで今回は手応えあったよ」
 あゆくんがそうピースをしてくれる。

「きゃぁ――!良かったねぇ――!」
 手を叩いてあゆくんを労う。

「さっ!今日は咲太郎何食べたい?」
 ぼくにそう聞いてくれるあゆくん。

「たろうはなんでもいいよぉーあゆくん何食べたい?」
 隣のあゆくんに聞いてみた。

「ふふっ。笑。アイス食べよっか」
 あゆくんが笑いながらそう言う。

「いいのぉ!?たろうはアイス大好きだけど、あゆくん体冷たくない?寒くならない?」
 あゆくんが心配になって、あゆくんの顔を覗き込む。

 また笑うあゆくん。

 (今日のあゆくんは笑顔がいっぱいだぁ)

「うん。ぼくは大丈夫。それに」
 一回言葉を止めるあゆくん。
 あゆくん?と思いながらあゆくんが話すのを待つぼく。

「寒くなったら、咲太郎が温めてくれるよね?」
 イタズラっぽい目をしてぼくにそう言った。


 (ぴゃぁぁあ――!)

 あゆくんが、可愛い。

「咲太郎なにしてるの」
 ぼくをみて爆笑するあゆくん。

「ん?あゆくんが可愛いから」
「可愛いから自分を抱きしめてるの?笑」

 あゆくんが可愛いくて、抱きしめたくなった。
 駅前だし、ここで抱きしめるのは我慢。

 そう思って、とっさに両腕で自分の体を自分で抱きしめた。

 (あゆくんが、かわいいよぉ――!)

「うんっ!寒くなったらこんな風にあゆくんを抱きしめるからねぇ――!さっ!行こう」
 あゆくんの手を取って、アイスクリーム屋さんがある方向に体の向きを変える。

「ふふっ。やっぱり咲太郎だね」
 あゆくんはぼくの隣でそう呟いて笑ってる。



 アイスクリーム屋さんに着いた。

「あゆくん何食べるぅ?」

 メニューをあゆくんに手渡して聞いてみる。
 メニューを真ん中に置いてくれるあゆくん。

「ん――何食べよっか。あっ、咲太郎クレープもあるよ」
 クレープを指差すあゆくん。

「だめっ!あゆくん!今日はアイスなの」

 メニューにあるクレープを手で隠すぼく。

「えぇ!なんで?笑」
 笑いながら聞いてくるあゆくん。

「だってね!今日はね、アイスとあゆくんをたろうが抱きしめてるのぉ」
「決まってるの?笑」

「うんっ!だからこっちから選んでねぇ」

 アイスが載ってるページを指差す。

「わかった。じゃあこの3種類のやつを選ぼうかな?」
「じゃあたろうも同じのにするー」

「2人とも同じの食べたら咲太郎も寒くなるかもよ?」
 笑いながらそう言うあゆくん。

「そしたら、あゆくんがたろうを抱きしめてね」

 ギャルピースをしてあゆくんにそう伝えてみる。

「それだとお互い抱きしめ合いっこになるね」
 そう言って笑ってくれるあゆくんの笑顔がキラキラ眩しい。

 この日食べたアイスはいつもより舌の上ですぐに溶けて冷たくなかった。