好きまでの距離


「あゆく――ん」

 改札口からあゆくんが見えた。
 ジャンプして手を振る。

 手を振りながら小走りで走ってくるあゆくん。

「待たせてごめんね」
「ううん。待ってないよ。たろうも今きたもん」

 ぼくの鼻をそっと触るあゆくん。

「鼻が冷たい。もぉ電車の時間頃にきてよ。ぼくが心配になる」
 ほっぺを膨らませるあゆくん。

「ごめんねぇ。あゆくんに会えると思ったら待ちきれなかったの」
 あゆくんにぺこりと謝る。

「ぼくも会いたかった。咲太郎、今年もよろしくね」
「うんっ!今年もよろしくお願いします」

 お互い頭を下げて新年の挨拶をする。

「今年最初のあゆくんだぁ」
 きゃーとほっぺに手を当てるぼく。

「そうだね。毎日連絡してるから咲太郎を近く感じるよ。笑」
 笑うあゆくん。

「それでもぉ――顔見たのは今年最初だもんねぇ――」

 ぼくがそう言ったらまたあゆくんは笑ってくれた。
 そのまま神社に向かう方向にお互い足の向きを変える。

 その時、あゆくんがそっとぼくの手を握ってくれた。

「もぉ。咲太郎やっぱり手が冷たい」
「へへっ。でもあゆくんが握ってくれるからたろうの体はぽかぽかなるよぉ」

「片手だけだよ」
「違うよぉ。左手からぽかぽかが全身に回るんだよ」

 ぼくが手をぶんぶんと振ったらあゆくんが笑ってくれた。


 おじいちゃんのお家で過ごした年末年始の話を聞きながら歩いてたら神社に着いた。

「あゆくん!お参りしたら甘酒とイカ焼き食べよぉ――」
「うん。いいよ。その前におみくじひこう」

 あゆくんがぼくの顔を見てそう言った。

「うんっ!たろうの家はね、お参りした後は甘酒飲んでイカ焼き食べるんだぁ」
「えぇ。面白い!ぼくの家は、お参りしたらおみくじを必ず引くんだよ」

 2人で顔を見合わせて笑う。

「面白いねぇ。じゃあ今日は両方しよぉ」
「そうだね。なんかさ……」

 あゆくんが一旦口を閉じる。
 ぼくは、ん?と首をかしげてあゆくんが話すのを待つ。

「咲太郎の家とぼくの家が混じり合う感じだね」
 あゆくんが静かにそう言った。

「ぴゃぁ――――!」

 あゆくんと繋いではない方の手で頬を触る。

「それっ!!いいねぇ!!たろうすきー!」
 あゆくんの手をぎゅっと握る。

「たろうの家とあゆくんの家が重なって一つになる感じ!」
 きゃー!とまた頬に手を押さえる。

 それを見て笑うあゆくん。

「うん。いいね」
 あゆくんは頷きながら微笑んでくれた。


 2人で神様に手を合わせて去年のお礼と今年のご挨拶をする。
 その後におみくじを引いた。


 そして……。
「咲太郎。お守り2人で同じの買おうか」

 あゆくんの提案で、今お守りを見てる。
 キラキラしたガラス玉に模様が付いてて小さな鈴が付いたお守りが目に入った。

 それを手に取りながらあゆくんに見せる。

「あゆくんこれはどう?」
 あゆくんも手に取ってくれる。

「うん。いいね。これぼくも好き」
 そう言ってくれた。お互いお揃いを買ってそのままカバンにつける。


「あゆくん。これ来年一緒にお返しに来ようねぇ」
「そうだね。そしてまた来年新しいお守りを買おうね」

 あゆくんもそう言ってくれる。

 (来年の約束まで、できちゃった)


「さっ!咲太郎おすすめの甘酒とイカ焼き食べよっか」
「うんっ!たろう直伝の食べ方教えるねぇ」

 そう言いながら2人で出店の方に足を向けた。

「お腹いっぱい」
 お腹をさすりながら歩くあゆくん。

「美味しかったねぇーおみくじも内容良かったねぇ」
「ね。おみくじ引いてそのまま帰ってたけど、甘酒とイカ焼き食べて帰るのいいね」

 あゆくんがぼくの方を見ながら笑ってそう言う。

「たろうも!おみくじ引くの楽しかった!」
「ね。来年からはおみくじ引いてから甘酒飲んでイカ焼き食べて帰ろうね」

 あゆくんがそう言ってくれる。

「うんっ!そ――しよぉ――!来年だけじゃなくてこれからずっ――とだよぉ――」
 あゆくん笑いかけた。

「咲太郎ならそう言うと思ったよ。笑」
 あゆくんがぼくの好きな顔で笑った。
 

 歩いてたら手が触れ合った。

 そのままお互い握って、駅を目指して歩く。

「明日からまた図書館に行こうねぇ。あゆくんそろそろ試験前になるよね」

「うん。勉強しようね」
 そう笑うあゆくん。

 カバンが揺れたらチリーン。チリーン。と2個の鈴の音が小さく聞こえる。