好きまでの距離


 鼻歌を歌いながらボールの中をかき混ぜる。

 明日はクリスマス。

 学校が終わってからあゆくんとクリスマスデート!


 1ヶ月前から試作してきたからバッチリ!

 チョコは、バレンタインにとっておきたいしどうしようと悩んであゆくんが好きな抹茶とドライフルーツを入れたカップケーキにした。

 これなら一緒に食べれるもんねー!と作りながら、あゆくんの喜ぶ顔を思い浮かべてニヤニヤする。

 2人で一緒に食べる用にプレーン味も追加して、あゆくんに持って帰ってもらう用は綺麗にラッピングした。


 部屋に戻ってきて机に座る。

 ネコちゃんとイヌがプリントされたメッセージカードを取り出す。

『あゆくんへ。だぁぁぁ――いすき。たろうより』

 色々書くよりもシンプルな方がいいよねぇ。なんて独り言を言いながら書いていく。


 (できたよ――!あゆくん喜んでくれるかなぁ――)

 紙袋に入れて机に置く。
 紙袋の表面をそっと撫でてあゆくんの顔を思い浮かべる。


 (よし!明日に備えて寝るぞ――!)


 あゆくんはもう冬休みに入ってる。
 今日はあゆくんがぼくを迎えにきてくれる。
 
それだけでもう嬉しい。

『早めに着いたから保健室にいるね』

 あゆくんからそうメッセージがスマホに届いた。

 冬休みの注意事項を話してる先生を見ながら心の中で、はやく、はやく。と唱えてしまう。


 先生の話が終わった!
「じゃあみんな、楽しい冬休みにしてね――!」

 クラスメイトにそう挨拶をして教室を飛び出す。

 走りたいけど、手に紙袋があるから今日は我慢。
 早歩きで保健室を目指す。


「あゆくん!お待たせ――」
 保健室の扉を開けた。


 テーブルに座ってゆーちゃんと話してるあゆくん。

「太郎君。あゆむの名前言う前に、挨拶が先だよ」

 ゆーちゃんが笑ってそう言う。

「あっ……ゆーちゃん。ごめんねぇ。こんにちは」

 入り口で立ち止まってゆーちゃんにぺこりと頭を下げる。

「咲太郎、おつかれさま」
 あゆくんが、立ち上がってぼくの方に歩いてきながらそう言ってくれる。

「あゆくん!会いたかったよぉ」
「ふふっ。昨日も会ったよ」
「うん!1日ぶりのあゆくんだもん!」

 ぼくがそう言ったらあゆくんがおかしそうに笑う。

「じゃあ行こっか。先生ありがとうございます」

 あゆくんがゆーちゃんに頭を下げる。

「うん。またおいで」
 優しい笑顔を見せるゆーちゃん。

「あっ。あゆむ」

 ゆーちゃんがあゆくんを呼んだ。
 2人でゆーちゃんを振り返る。

「いい顔してる。前より今の方がいいよ」

 先生の顔でそう言った。
 あゆくんは、その言葉を聞いて嬉しそうに笑った。


 (なんか……くやしいよぉ――)


「ダメなのぉ――!あゆくんは、たろうのあゆくんなの!ゆーちゃんにもあげないんだからねぇ」

 ゆーちゃんとあゆくんの間に入って両手を広げる。

「もう咲太郎ってば」
 あゆくんが笑い出す。

「はい。はい。太郎君のあゆむを取ることはないから。2人ともいい冬休みをね」

 2人で並んで保健室を出る。
「もぉ。咲太郎てば先生にまであんなこと言って」

 少し照れたように笑うあゆくん。

「へへっ。ちょっと言いたくなったのぉ」

 笑いながらあゆくんの顔を見る。
 手が触れ合ってお互い自然と手を繋ぐ。

 そのまま植物園にいく。
 ここは、持ち込みができるフリースペースがある。
 椅子に座って、あゆくんに紙袋を渡す。

「これは、あゆくんにクリスマスプレゼントです!こっちは今から2人で食べよ」

 そう言って、テーブルに今から食べるカップケーキを取り出した。

「咲太郎がこれ作ったの?」
 カップケーキを指差して聞くあゆくん。

「そーだよぉ。たろう特製のカップケーキですっ」
 あゆくんは紙袋も覗き込んでる。

「あれ?見た目が違う?」
「そーなのぉ。これはノーマルでプレゼントはあゆくんが好きな抹茶味にしてみたよ」

「咲太郎……」

 あゆくんはそれだけ言って、紙袋を抱きしめた。

「ありがとう。帰って大事に食べるね」
 紙袋を離さないままそう言ってくれた。


「カップケーキ食べる前に、ぼくからもいい?」
 あゆくんがそう言ってカバンの中を開け始めた。

 なんだろ?と思って静かに待ってみる。

「これ、ぼくからのクリスマスプレゼント」
 あゆくんがそう言ってノートを数冊渡してくれた。

「これ?」
 中を開くとあゆくんの字が書いてある。

「うん。各教科ごとに咲太郎が、苦手そうな部分をまとめてみたんだ」
 ノートをもう一度みる。

 (ほんとだ……。たろうが苦手だったりわからない部分が細く書いてある)

 ノートから顔をあげてあゆくんをみる。

「あゆくん……これ」
「少しでも咲太郎の勉強に役立てばいいなと思って」
「役立つ!役立つよ!ありがとう。あゆくん」

 あゆくんの気持ちが詰まったノート。
 胸にしっかり抱きしめる。

 (これ、たろうの宝物だぁ)

「ふふっ。ぼくたちすごいね」

 あゆくんが不意にそう言って、笑う。
 ぼくは顔をあげて、ん?と言う顔をしてあゆくんをみる。

「お互いクリスマスプレゼントが手作りだね」

「ほんとだぁ……。すごい」

 胸がいっぱいになって言葉が出ない。
「あゆくんの気持ち、たろうしっかり受け取ったよ」

 あゆくんが静かに頷く。
「うん。ぼくも咲太郎の気持ちしっかり受け取ったよ」

 2人で見つめあって笑い合う。
「さっ。食べよっか」
 2人でカップケーキを食べた。

 味見した時よりもあまく感じた。


 家に帰って、机に座る。
 あゆくんがくれたノートをめくる。
 そこには……。

『咲太郎へ。大好きだよ。あゆむより』

 (わぁ――。たろうと同じこと書いてる)

 あゆくんのその文字を指でそっとなぞった。

 そして、スマホを手に取った。

 画面にそっと指を置いた。