ゆーちゃんと話して、今度あゆくんに会ったらきちんと聞いてみよう。そう決めた。
家に帰ってカバンを置いてスマホを取り出す。
『たろう、帰ってきたよぉ。あゆくんは?』
お昼から授業行ってくるねと連絡きてたから、あゆくんはまだ授業中かもしれない。
こんな風にメッセージを待ち遠しいなんて、あゆくんと出会うまではなかったかもしれない。
返事が来たら、図書館に行く約束をしよう。
そう決めたら……なんだか心がスッと楽になった。
さっきゆーちゃんが、頭に手を置いてくれた時あゆくんと全然違った。
ぼくの体がドキドキしたり、熱くなったりするのはあゆくんだけみたい。
ぼく、きちんとこの気持ちに向き合いたい。
これまでだって、好きにずっと正直に生きてきたんだもん。
ここで逃げたくない。
ここで逃げたら……きっとずっと後悔する……。
誰に反対されても、何言われても好きを貫いてきた。
だから……ここで逃げるのはぼくらしくない。
気づいたら、ネイルを机に出していた。
どうしようかな。
色は……デザインは……。
あゆくんに気持ちを伝える勇気をくれるやつにしよう。
(たろうは……あゆくんが……好き)
この気持ちに名前を付けるのが怖くて、逃げてたけど、でも……きちんとこの気持ちに向き合う。
「たろうは、あゆくんが好き」
心で呟いた言葉を今度は声に出してみる。
口に出した瞬間、少しだけ胸が軽くなった。
あゆくんに大切な人がいてもいい。
きちんとこの気持ちと向き合って、あゆくんにぼくの気持ちを伝える。
(これ……たろうの初恋だ……)
次の休みの日、あゆくんとまた図書館で勉強してる。
今日もあゆくんはぼくの隣に座って肘と腕が触れ合ってる。
この前は触れてるところが熱を持ったみたいに熱かったけど、今日はなんだかこの熱さが心地いい。
あゆくんに大切な人がいるか聞く。
そして、ぼくの気持ちを伝える。
覚悟を決めてるけど、やっぱり答えが聞くのは少し怖い。
お昼ご飯はこの前と同じベンチで食べる。
あゆくんが飲み物を持ってきてくれて、ぼくがお弁当を持ってきた。
今日はサンドイッチにしてみた。
あれから途切れることなく、あゆくんとメッセージのやりとりは続いてる。
あゆくんが好きなもの、食べ物を聞いたりあゆくんからも聞かれたり、少しずつお互いのことを知っていけてる。
そんな感じがしてる。
その中であゆくんが、普段サンドイッチを食べる機会がないそう言ってたから今日は作ってみた。
お弁当をあゆくんに渡す。
「わぁ――!今日はサンドイッチだ」
あゆくんが蓋を開けて、弾んだ声を出してる。
「うん。あゆくん普段食べないって言ってから」
「咲太郎ありがとう。覚えてくれてたの嬉しい」
あゆくんが喜んでくれてる。その姿を見るだけでぼくは嬉しくなる。
「ぼくからは、はい」
あゆくんが飲み物をぼくに手渡してくれる。
「えっ……これって」
「そう!咲太郎が飲んでみたいと言ってたやつ」
この前、新しいカフェオレを飲んでみたいけど近くのお店に売ってなかった。とあゆくんに話した。
それが今ぼくの手の中にある。
「あゆくんこれ今売り切れのお店多いのに……探してくれたの?」
あゆくんは少しだけ恥ずかしそうな照れたような顔をしてる。
「咲太郎が飲みたいと言ってから喜んでくれたらいいな。そう思って」
あゆくんの気持ちが嬉しい。
ぼくのために探してくれたんだ。
あっ……今だ……。
なんでか分からないけど、今聞こうそう思った。
「あゆくん。たろうちょっと聞きたいことがあるの」
声が震えそうになる。
(たろう、頑張れ……これまでも好きに素直に生きてきたんだ)
自分に喝を入れる。
「ん?なに?」
あゆくんがぼくの顔を見てくれる。
「あのね……この前文化祭の時に駅であゆくんが男の人と一緒にいるところ見たの。あの人はあゆくんの大切な人?」
あゆくんは、手に持ってたお弁当を膝の上に置いてゆっくり口を開く。
「違うよ。あの人は大切な人じゃないよ」
ぼくの目を見つめて、それだけ静かに言った。
あゆくんのその言葉が、胸の奥にじんわりと落ちていった。

