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・【07 放課後のこと】
・
放課後になると、またすぐ真梨子が俺の教室にやって来る。
大体、すぐ二人で校門をくぐって、いつもの橋の下に行くんだけども、何だか周りが気になることを言っていたので、俺は真梨子に無言で指示を出して、そのまま教室の中で待機している。
本当はLINEとかでやり取りをしたいのだが、何故か高校生にもなって真梨子はキッズケータイしか持っていないことが発覚した。ネット検索も出来ないヤツ。だからヒューマンビートボックスが自己流過ぎだったわけか。いやそんな反芻どうでも良くて、LINEすら出来ない型のキッズケータイで。
親からそんなに信頼されていないのか、とにかくLINEが出来ないので、事前に真梨子には何かあった時の用心に無言で指示を送る方法(独自のハンドサイン)を打ち合せしていた。
真梨子が周りの様子を注意深く確認してから、ささやくように俺へ話し掛ける。
「ダロさん、どういうこと?」
喋られないような状態ではないので、俺も小声で返答する。
「いや最近、このクラスであることが流行っていてな、それが気になっているんだ」
周りのクラスメイトに耳を傾ける。
「なぁなぁ、じゃあ勝負しようぜ」
「いいぜ、いいぜ」
「コイントスしよう、コイントス、裏か表か言えよ」
「じゃあオレは裏」
「表」
「表」
「じゃあ裏で」
そしてコイントスをした一人の男子。
結果は。
「おら! 表!」
「うわぁ! 逆いっちまったぁ!」
「表が勝ちだな!」
「じゃあ裏のヤツはシッペな!」
「クソー!」
「うわー! イテェー!」
真梨子がまた呟くように俺へ話し掛ける。
「何か……つまんないことしてる……」
「そうだな、罰ゲームをし合っているというヤツだ。まあこのくらいなら別にいいんだけどな、さすがにこれに突っかけるのは、やりすぎだからな」
真梨子とそんな会話を抑えた声でして、あの連中のやり取りもずっとコイントスにシッペだけで、それ以上も無いので、俺と真梨子はいつもの橋の下へ行くことにした。
また橋の下へ行ったら、俺はラップの練習で、真梨子はヒューマンビートボックスの練習。
そんな感じでこの日は終了したが、事が動いたのは、その次の日だった。
朝、登校して学校に着くと、先に学校に来ていた真梨子が俺の教室に入ってきて、まあいつもの会話かなと思っていると、真梨子は口を開くなり、
「体育館でエスカレートした罰ゲームしてます!」
俺と真梨子は急いで体育館へ直行した。
そこでは男子が四人、相変わらずコイントスをしているのだが、罰ゲームがシッペから、ボールを投げつけるに変わっていた。
真梨子のクラスは一限目から体育なので、体育委員である真梨子は、出しっぱなしになっているボールとか何かを先に片づけようと体育館へ行った時に発見したらしい。
俺は、すぐさま声を上げた。
「おいオマエら! それはさすがにやりすぎじゃねぇのか!」
四人の男子が一斉にこちらを振り向き、すぐに「ダロだ」とか「ダロが来た」とか言い始めた。
その中の一人の男子がこう言った。
「これはイジメじゃない! 平等に罰ゲームし合っているだけなんだよ!」
周りの三人の男子もそれに同調する。
確かにイジメじゃないかもしれない。
だがこういう行為はエスカレートしていくもので、現に今だってシッペからボールを投げつけるに変わっている。
どんどん過激になっていき、誰かを巻き込む可能性は否定出来ない。
だからこういった行為は、このくらいの段階で芽を摘むべきだ。
というわけで、
「いやでも平等に罰ゲームし合うって何だよ、とんだマゾヒストの集団だな」
すると一人の男子が叫んだ。
「むしろ攻撃的な気持ちだよ!」
はい、掴んだ。
俺は言う。
「それが良くないんだよ、攻撃的な気持ちを持って人と接することがよぉ。今はまだ仲良くやってるかもしれないが、急に本気でムカついたらどうする? 歯止めが利かなくなったらどうするんだよ」
四人の男子は沈黙した。
だから言ってやるんだ。
「四人いれば二人はやる気満々だろうな、だけども他の二人はただついてきているだけかもしれないぜ? ちゃんと友達の声を聞くことが友達ってヤツじゃねぇのか?」
顔を見合わせる四人の男子。
ここは一気にラップで畳みかけて大丈夫だな。
俺はマイクを構えたその時、真梨子が言った。
「私もヒューマンビートボックスします!」
急なことで一瞬驚いたが、俺は真梨子のほうを見た。
すると、真梨子は『ブッツッカットッブッツッカットッブッツツカットト』と拙いながらも、リズムをループさせ始めた。
リズム感は良くて、しっかり一定のテンポになっている。
これなら大丈夫だ、むしろ好都合かもしれない。俺はラップをし始めた。
《ダロ》
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
その固定概念、つまんないね 周りからどう思われてる、俯瞰無い目
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
痛め付け合うだけで楽しいかい? あれに似てるな、アホ言い合い
罰ゲーム、ハッキリ言ってつまらない文化 汚らしいな、とてもくだらない糞だ
噴火してしまいそうだ、俺は大激怒 嫌な匂いがするんだ、まるで焦げた大聖堂
正常な判断は? 平常畳んだんか? 罰ゲームをするという提唱は簡単だ
だけども罰をやらずにみんなで楽しむ 笑いの中心をトークの進化で的射る
というかどうせなら褒めゲームがいい みんな笑顔になれる系譜がいい
セーブはいいんだ、抑えず爆笑 きっと全員平和が良いと答える確証
楽勝な気分で楽々しようぜ ハッキリ言って意味無い殺伐異常で
益々利口で生きていければいいだろ つまんない発想は湿気ればいいアホ
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
その固定概念、つまんないね 周りからどう思われてる、俯瞰無い目
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
痛め付け合うだけで楽しいかい? あれに似てるな、アホ言い合い
そもそも面白いか、人が痛がるところ やめてくれ、寒いことに従うことを
心変わりは絶対に早いほうがいい 今辞めればまだまだ若い後悔
境界はここだ、崩壊はここだ 今から言う、辞めるべき詳細な言葉
悪いはダサい、不味い闘い 悪意はヤバイ、される、ある日が破壊
突然平穏が消え去り悪夢に 加害か被害か分からないが、待つ憂い
誰かを攻撃することは 誰かに攻撃されることという言葉
いつかしていくだろう、エスカレート 壊れていく自暴自棄のデスパレート
賭けをして勝ち続けるなんて不可能だ そんなことより折衷案で歌おうか
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
その固定概念、つまんないね 周りからどう思われてる、俯瞰無い目
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
痛め付け合うだけで楽しいかい? あれに似てるな、アホ言い合い
四人の男子は俯いている。
まあこれだけ言えば大体大丈夫だろう。
真梨子も最後は『プシー』とカッコ付ける終わりも決めて最高だ。
じゃあ去るかと思ったその時だった。
一人の男子がこう言った。
「確かに……オレは本当は、シッペの時から辞めたかったんだ……でも、みんなと仲良くしていたくて……」
それでタンを切ったかのように他の男子たちも喋り出した。
「オレも楽しくは無かったんだけども、やっぱり同じ輪にいたくて」
「じゃあ悪い、オレのせいだ、何かユーチューターがやってて面白そうと思っちゃった」
「いや止めなかったオレらも一緒だよ、こういうことはするもんじゃないな」
丸く収まりそうで良かったと思いつつ、俺は振り返って、また教室に戻ろうとすると、
「おいダロ! ありがとな! キッカケくれて! というか最高だったぜ!」
何が最高なんだと思いつつ、また四人の男子のほうを振り返ると、一人の男子が、
「オマエと真梨子のタッグ最高だな! やっぱ友達ってそうあるべきだよな!」
と言ってこっちにサムズアップした。
そうか、そういう最高か。
まあ確かに真梨子のヒューマンビートボックスも悪くなかったしな。
そう言われた真梨子は嬉しそうに俺に抱きついてきて、
「本当は友達よりも深い関係だよね!」
と言ったので、俺はすぐに、
「ただの師匠と弟子だからな!」
「分かってる! 分かってる!」
そう言いながら俺の頬に自分の頬をすりすりしてくる真梨子。
いやだから!
「絶対そういうのじゃないからな!」
と四人の男子のほうへ言って、俺はなんとか真梨子から離れて走って戻っていった。
いや何か最後、締まらなかったな。
結果、ダサく逃げたヤツみたいになっちゃったな。
全く……。
・【07 放課後のこと】
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放課後になると、またすぐ真梨子が俺の教室にやって来る。
大体、すぐ二人で校門をくぐって、いつもの橋の下に行くんだけども、何だか周りが気になることを言っていたので、俺は真梨子に無言で指示を出して、そのまま教室の中で待機している。
本当はLINEとかでやり取りをしたいのだが、何故か高校生にもなって真梨子はキッズケータイしか持っていないことが発覚した。ネット検索も出来ないヤツ。だからヒューマンビートボックスが自己流過ぎだったわけか。いやそんな反芻どうでも良くて、LINEすら出来ない型のキッズケータイで。
親からそんなに信頼されていないのか、とにかくLINEが出来ないので、事前に真梨子には何かあった時の用心に無言で指示を送る方法(独自のハンドサイン)を打ち合せしていた。
真梨子が周りの様子を注意深く確認してから、ささやくように俺へ話し掛ける。
「ダロさん、どういうこと?」
喋られないような状態ではないので、俺も小声で返答する。
「いや最近、このクラスであることが流行っていてな、それが気になっているんだ」
周りのクラスメイトに耳を傾ける。
「なぁなぁ、じゃあ勝負しようぜ」
「いいぜ、いいぜ」
「コイントスしよう、コイントス、裏か表か言えよ」
「じゃあオレは裏」
「表」
「表」
「じゃあ裏で」
そしてコイントスをした一人の男子。
結果は。
「おら! 表!」
「うわぁ! 逆いっちまったぁ!」
「表が勝ちだな!」
「じゃあ裏のヤツはシッペな!」
「クソー!」
「うわー! イテェー!」
真梨子がまた呟くように俺へ話し掛ける。
「何か……つまんないことしてる……」
「そうだな、罰ゲームをし合っているというヤツだ。まあこのくらいなら別にいいんだけどな、さすがにこれに突っかけるのは、やりすぎだからな」
真梨子とそんな会話を抑えた声でして、あの連中のやり取りもずっとコイントスにシッペだけで、それ以上も無いので、俺と真梨子はいつもの橋の下へ行くことにした。
また橋の下へ行ったら、俺はラップの練習で、真梨子はヒューマンビートボックスの練習。
そんな感じでこの日は終了したが、事が動いたのは、その次の日だった。
朝、登校して学校に着くと、先に学校に来ていた真梨子が俺の教室に入ってきて、まあいつもの会話かなと思っていると、真梨子は口を開くなり、
「体育館でエスカレートした罰ゲームしてます!」
俺と真梨子は急いで体育館へ直行した。
そこでは男子が四人、相変わらずコイントスをしているのだが、罰ゲームがシッペから、ボールを投げつけるに変わっていた。
真梨子のクラスは一限目から体育なので、体育委員である真梨子は、出しっぱなしになっているボールとか何かを先に片づけようと体育館へ行った時に発見したらしい。
俺は、すぐさま声を上げた。
「おいオマエら! それはさすがにやりすぎじゃねぇのか!」
四人の男子が一斉にこちらを振り向き、すぐに「ダロだ」とか「ダロが来た」とか言い始めた。
その中の一人の男子がこう言った。
「これはイジメじゃない! 平等に罰ゲームし合っているだけなんだよ!」
周りの三人の男子もそれに同調する。
確かにイジメじゃないかもしれない。
だがこういう行為はエスカレートしていくもので、現に今だってシッペからボールを投げつけるに変わっている。
どんどん過激になっていき、誰かを巻き込む可能性は否定出来ない。
だからこういった行為は、このくらいの段階で芽を摘むべきだ。
というわけで、
「いやでも平等に罰ゲームし合うって何だよ、とんだマゾヒストの集団だな」
すると一人の男子が叫んだ。
「むしろ攻撃的な気持ちだよ!」
はい、掴んだ。
俺は言う。
「それが良くないんだよ、攻撃的な気持ちを持って人と接することがよぉ。今はまだ仲良くやってるかもしれないが、急に本気でムカついたらどうする? 歯止めが利かなくなったらどうするんだよ」
四人の男子は沈黙した。
だから言ってやるんだ。
「四人いれば二人はやる気満々だろうな、だけども他の二人はただついてきているだけかもしれないぜ? ちゃんと友達の声を聞くことが友達ってヤツじゃねぇのか?」
顔を見合わせる四人の男子。
ここは一気にラップで畳みかけて大丈夫だな。
俺はマイクを構えたその時、真梨子が言った。
「私もヒューマンビートボックスします!」
急なことで一瞬驚いたが、俺は真梨子のほうを見た。
すると、真梨子は『ブッツッカットッブッツッカットッブッツツカットト』と拙いながらも、リズムをループさせ始めた。
リズム感は良くて、しっかり一定のテンポになっている。
これなら大丈夫だ、むしろ好都合かもしれない。俺はラップをし始めた。
《ダロ》
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
その固定概念、つまんないね 周りからどう思われてる、俯瞰無い目
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
痛め付け合うだけで楽しいかい? あれに似てるな、アホ言い合い
罰ゲーム、ハッキリ言ってつまらない文化 汚らしいな、とてもくだらない糞だ
噴火してしまいそうだ、俺は大激怒 嫌な匂いがするんだ、まるで焦げた大聖堂
正常な判断は? 平常畳んだんか? 罰ゲームをするという提唱は簡単だ
だけども罰をやらずにみんなで楽しむ 笑いの中心をトークの進化で的射る
というかどうせなら褒めゲームがいい みんな笑顔になれる系譜がいい
セーブはいいんだ、抑えず爆笑 きっと全員平和が良いと答える確証
楽勝な気分で楽々しようぜ ハッキリ言って意味無い殺伐異常で
益々利口で生きていければいいだろ つまんない発想は湿気ればいいアホ
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
その固定概念、つまんないね 周りからどう思われてる、俯瞰無い目
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
痛め付け合うだけで楽しいかい? あれに似てるな、アホ言い合い
そもそも面白いか、人が痛がるところ やめてくれ、寒いことに従うことを
心変わりは絶対に早いほうがいい 今辞めればまだまだ若い後悔
境界はここだ、崩壊はここだ 今から言う、辞めるべき詳細な言葉
悪いはダサい、不味い闘い 悪意はヤバイ、される、ある日が破壊
突然平穏が消え去り悪夢に 加害か被害か分からないが、待つ憂い
誰かを攻撃することは 誰かに攻撃されることという言葉
いつかしていくだろう、エスカレート 壊れていく自暴自棄のデスパレート
賭けをして勝ち続けるなんて不可能だ そんなことより折衷案で歌おうか
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
その固定概念、つまんないね 周りからどう思われてる、俯瞰無い目
何のためにやっている罰ゲーム 無駄な拘束ならば裂くテープ
痛め付け合うだけで楽しいかい? あれに似てるな、アホ言い合い
四人の男子は俯いている。
まあこれだけ言えば大体大丈夫だろう。
真梨子も最後は『プシー』とカッコ付ける終わりも決めて最高だ。
じゃあ去るかと思ったその時だった。
一人の男子がこう言った。
「確かに……オレは本当は、シッペの時から辞めたかったんだ……でも、みんなと仲良くしていたくて……」
それでタンを切ったかのように他の男子たちも喋り出した。
「オレも楽しくは無かったんだけども、やっぱり同じ輪にいたくて」
「じゃあ悪い、オレのせいだ、何かユーチューターがやってて面白そうと思っちゃった」
「いや止めなかったオレらも一緒だよ、こういうことはするもんじゃないな」
丸く収まりそうで良かったと思いつつ、俺は振り返って、また教室に戻ろうとすると、
「おいダロ! ありがとな! キッカケくれて! というか最高だったぜ!」
何が最高なんだと思いつつ、また四人の男子のほうを振り返ると、一人の男子が、
「オマエと真梨子のタッグ最高だな! やっぱ友達ってそうあるべきだよな!」
と言ってこっちにサムズアップした。
そうか、そういう最高か。
まあ確かに真梨子のヒューマンビートボックスも悪くなかったしな。
そう言われた真梨子は嬉しそうに俺に抱きついてきて、
「本当は友達よりも深い関係だよね!」
と言ったので、俺はすぐに、
「ただの師匠と弟子だからな!」
「分かってる! 分かってる!」
そう言いながら俺の頬に自分の頬をすりすりしてくる真梨子。
いやだから!
「絶対そういうのじゃないからな!」
と四人の男子のほうへ言って、俺はなんとか真梨子から離れて走って戻っていった。
いや何か最後、締まらなかったな。
結果、ダサく逃げたヤツみたいになっちゃったな。
全く……。



