鬼島が近付いてきたことに、川島も秋山も身構える。いくらクラスのトップグループとはいえ、入学早々に3年生の不両グループに殴り込みを掛けるような狂犬と事を構えるつもりはなかったからだ。川崎達はあくまでも性根が腐っているだけで、暴力で他を圧倒するようなことはできない。鬼島とは対極の存在だ。
「オマエら」
手を伸ばせば届くような距離まで近付いた鬼島が、ぶっきらぼうに切り出した。その後に注意いしておこうと思っていたことを伝えようとしていたのだが、川崎の手元を確認した言葉に詰まった。
「ああ・・・一応忠告しておくが、その消しゴムは新品の物と交換して、すぐにでも黒崎に返しとけよ。間違っても、細切れのまま返すとか、借りたままにするとかはするなよ。絶対にするなよ」
自分の手元を見下ろした川崎が、上から目線で言われたことに苛立って強きな姿勢で問い返した」
「こ、これは、アタシと黒崎との問題なんだから、アンタには関係ないでしょ」
「確か、鬼島と黒崎は同中だった気がする。もしかして、中学の同級生を守ろうってことなのか?・・・ヒッ!!」
秋山が調子に乗って余計なことを口走る。それを聞いた鬼島は素早く1歩足を踏み出すと、上体を屈めて秋山を睨み付けるように見上げた。
堪らず後ずさった秋山を無視し、鬼島はその場で仁王立ちすると、座ったままの川崎を一瞥して背を向ける。
「忠告はしたからな。まあ、後はオマエらがどうするかってだけだ」
鬼島が自分の席に戻る前、楓の方を確認すると時に窓際の様子に関心を示すこともなく普通に本を読んでいた。安堵して大きく息を吐き出し、自分の席に腰を下ろした。万一聞かれでもしていたら、約束を破ったことに成り兼ねない。今度は先ほど忠告した6人組を観察する。どう見て忠告を無視するとしか思えない様子だった。
一度は忠告したのだ。この後何が起きようと、もう知ったことではない。そう考えた鬼島は、いつも通り腕を組んで目を閉じる。何か起きたときには、とにかく近寄らないようにすることを決めた。あの時の二の舞には、絶対になりたくはなかったからだ。
鬼島の見立て通り、川島は忠告を無視して楓に絡んだ。バラバラになった消しゴムを手にして楓に歩み寄った川崎は、ニヤニヤしながら細切れになった消しゴムを机の上に並べる。
「借りていた消しゴム、ここに並べておくからね」
机の上に並べられた消しゴムを見ると、楓は川崎の目を見ながら左右に首を振った。
「これは私の消しゴムではありません。私の消しゴムはまだ新しいので、こんなに小さくありません。間違ってらっしゃるのではないですか? 無い困りますので、そろそろ私の消しゴムを返して頂けますか?」
真顔で自分の物ではないと断言する楓を前にし、マヌケ面を晒してしまった川崎。そんな呆気にとられている川崎に、取り巻きの女子生徒が耳打ちする。
「ねえ、ちょっと、ウチらのこと舐めてるんじゃない?」
その言葉を聞いた川崎が我に返り、確かにそうだと納得する。楓としては単純に貸した消しゴムはほぼ新品であったため、細切れの状態の物は自分の物ではないと思っただけだった。しかし、取り巻きが挑発されていると受け止めても仕方がなかった。
「黒崎さん、ごめんね。ちょっと間違っちゃったみたい。昼休憩のときに返すから、中庭まで来てくれる?」
目立たない位置に連れ込み、6人で囲んで思い知らせてやろうと川崎は決めた。赤坂が中途半端になってしまいスッキリしなかったため、楓に苛立ちの全てをぶつけようと顔を床に向けて笑う。
「昼休憩に消しゴムを返して下さるということですね?分かりました。昼食を済ませてから行きますので、昼休憩になって10分ほど経ってから、ということになります」
「うん、それで大丈夫」
約束の場所と時間を決めると、川崎は取り巻きと一緒に自分の席に戻って行った。
その一部始終が聞こえていた鬼島は、ため息を吐きながら首を左右に振った。
「オマエら」
手を伸ばせば届くような距離まで近付いた鬼島が、ぶっきらぼうに切り出した。その後に注意いしておこうと思っていたことを伝えようとしていたのだが、川崎の手元を確認した言葉に詰まった。
「ああ・・・一応忠告しておくが、その消しゴムは新品の物と交換して、すぐにでも黒崎に返しとけよ。間違っても、細切れのまま返すとか、借りたままにするとかはするなよ。絶対にするなよ」
自分の手元を見下ろした川崎が、上から目線で言われたことに苛立って強きな姿勢で問い返した」
「こ、これは、アタシと黒崎との問題なんだから、アンタには関係ないでしょ」
「確か、鬼島と黒崎は同中だった気がする。もしかして、中学の同級生を守ろうってことなのか?・・・ヒッ!!」
秋山が調子に乗って余計なことを口走る。それを聞いた鬼島は素早く1歩足を踏み出すと、上体を屈めて秋山を睨み付けるように見上げた。
堪らず後ずさった秋山を無視し、鬼島はその場で仁王立ちすると、座ったままの川崎を一瞥して背を向ける。
「忠告はしたからな。まあ、後はオマエらがどうするかってだけだ」
鬼島が自分の席に戻る前、楓の方を確認すると時に窓際の様子に関心を示すこともなく普通に本を読んでいた。安堵して大きく息を吐き出し、自分の席に腰を下ろした。万一聞かれでもしていたら、約束を破ったことに成り兼ねない。今度は先ほど忠告した6人組を観察する。どう見て忠告を無視するとしか思えない様子だった。
一度は忠告したのだ。この後何が起きようと、もう知ったことではない。そう考えた鬼島は、いつも通り腕を組んで目を閉じる。何か起きたときには、とにかく近寄らないようにすることを決めた。あの時の二の舞には、絶対になりたくはなかったからだ。
鬼島の見立て通り、川島は忠告を無視して楓に絡んだ。バラバラになった消しゴムを手にして楓に歩み寄った川崎は、ニヤニヤしながら細切れになった消しゴムを机の上に並べる。
「借りていた消しゴム、ここに並べておくからね」
机の上に並べられた消しゴムを見ると、楓は川崎の目を見ながら左右に首を振った。
「これは私の消しゴムではありません。私の消しゴムはまだ新しいので、こんなに小さくありません。間違ってらっしゃるのではないですか? 無い困りますので、そろそろ私の消しゴムを返して頂けますか?」
真顔で自分の物ではないと断言する楓を前にし、マヌケ面を晒してしまった川崎。そんな呆気にとられている川崎に、取り巻きの女子生徒が耳打ちする。
「ねえ、ちょっと、ウチらのこと舐めてるんじゃない?」
その言葉を聞いた川崎が我に返り、確かにそうだと納得する。楓としては単純に貸した消しゴムはほぼ新品であったため、細切れの状態の物は自分の物ではないと思っただけだった。しかし、取り巻きが挑発されていると受け止めても仕方がなかった。
「黒崎さん、ごめんね。ちょっと間違っちゃったみたい。昼休憩のときに返すから、中庭まで来てくれる?」
目立たない位置に連れ込み、6人で囲んで思い知らせてやろうと川崎は決めた。赤坂が中途半端になってしまいスッキリしなかったため、楓に苛立ちの全てをぶつけようと顔を床に向けて笑う。
「昼休憩に消しゴムを返して下さるということですね?分かりました。昼食を済ませてから行きますので、昼休憩になって10分ほど経ってから、ということになります」
「うん、それで大丈夫」
約束の場所と時間を決めると、川崎は取り巻きと一緒に自分の席に戻って行った。
その一部始終が聞こえていた鬼島は、ため息を吐きながら首を左右に振った。



