炭酸飲料は死への呼び水Death!!

 無事に入学式が終わり、教室で最初のホームルームが始まった。
 最初に担任からの挨拶や今後のスケジュール等についての説明があり、初日ということもあり出席番号順に自己紹介をすることになった。緊張しているためかぎこちない自己紹介が多かったが、すでにクラスの中心人物と目される川島や秋山は堂々とした口調で注目を集めた。楓は当然にように、自分の名前を言っただけで着席した。

 ホームルームが終わると、川崎を始めとするカースト上位の数人が楓の元にやってきた。
「えっと、黒崎だっけ?その席、変わってくれない?」
 楓の席は窓際の後ろから2番目だった。窓際の後ろ側一帯を、仲間で占拠したいようだ。まだ席がどうなるのか決っていないが、既成事実を作って押し通そうという計画のようだった。
 今の座席は完全にランダムのようだったし、楓としては席はどこでも良かったため承諾の意思表示をしようとした。その時、隣の席に座っていた赤坂が口を開いた。
「大勢で取り囲んで席の移動を促すとか、完全に脅しではないですか。それに、先生の指示もなく席を移動するとか問題があると思います」
 真面目そうな外見通り、赤坂がまともな主張をする。思ったより声が大きかったため、まだ教室に残っていたクラスメートの注目を受ける。楓を取り込んでいる川崎達から「チッ」と舌打ちが聞こえた。
「いいですよ。特に席にこだわりはありませんから」
 赤坂の注意を完全にスルーする形で楓が承諾する。楓は圧力に屈して頷いた訳ではなく、本当に席などどうでも良かっただけだが。
 そんな楓の態度をどう受け止めたのか、川崎が口の端を上げてゲスな笑みを浮かべる。同時に、反抗的な言動をした赤坂には、目を細めて睨み付けた。

 最終的に、楓だけではなく、赤坂も席nお移動をすることになった。赤坂の席も人数的に必要だったのだ。まだ初日であったため他に荷物は無く、移動は簡単に終了した。新しい楓の席は廊下側の後ろから2番目で、赤坂の席は1つ後ろの席だ。「何が違うのか分からな」といった表情で、窓際で盛り上がる6人に視線を送って小首を傾げた。

「親睦を深めるためにも、今からカラオケに行こうぜ!!」

 秋山が声を上げると、3分の2以上残っていたクラスメート達が次々と手を挙げていった。今のうちに川崎や秋山のグループと距離を縮めておきたいと考えるのは、当然の思考だ。しかし、楓は手を挙げることはせず、カバンを手にすると教室を後にする。通学時間が2時間以上かかるのだ。寄り道をする余力はない。それを目にした赤坂は先ほどのこともあって、参加することを躊躇して楓の後を追うように廊下に出ら。
 その光景を川崎は、歪な笑みを浮かべて眺めていた。自分の要求を素直に受け入れた楓に対して敵意はなかったものの、2度も反抗的な態度をとった赤坂は見せ締めにすることに決めた。

 さらに、その光景を眺めていた鬼島は川崎に対し、「余計なことはするなよ」と祈っていた。


 翌日から、早速川崎が始めた。
 廊下側の一番後ろのが赤坂の席だ。必然的に、後ろの扉から入ると赤坂の背後を通ることになる。ただ、教室の後ろには結構なスペースがあるため、普通(・・)に通れば特に問題は起きない。

「痛っ」
 バシンという音が教室に響き、すぐい女子生徒の悲鳴が聞こえた。楓が振り返ると、そこには後頭部を抑える赤坂と、その背後で仁王立ちする川崎の姿があった。
「ごめんねえ、カバンが当たっちゃった」
 まるで悪びれた様子もなく謝る川崎。どう見ても故意であるが、見えないため赤坂は我慢する。それは川崎を中心とするグループが教室内に揃うまで続いた。その後も、川崎を含めた6人は執拗に赤坂に対して細かい嫌がらせを続けた。クラスメートはそれを分かった上で、ターゲットにされることを嫌って見て見ぬフリを決め込んだ。
 それで始まった絡み(イジメ)は徐々にエスカレートしていく。

「ねえ赤坂さん。今日、消しゴムを忘れてしまったんだけど、貸してくれない?」

 そう言って強引に消しゴムを持ち去り、カッターナイフでバラバラに切り刻んで返すという暴挙に及んだことがあった。その他、クラス専用のSNS内で作成したルームに招待しなかったり、嘘の情報を流して教室内で個室させようと画策した。クラスの中心である川崎にターゲットにされないため、情報の信憑性が薄くても反論する者は無く川崎が目論んだ通りに赤坂は孤立した。
 孤立させてしまえば、ストレス発散の道具にすることは簡単だ。もう誰も赤坂を庇う者はいない。例え教師に泣きついたとしても、誰も赤坂の言葉を信じない。そうなるように川崎は噂を流したのだから。

 入学して3週間目、川崎は自分に服従させるための仕上げとして、昼の休憩時間に赤坂を女子トイレに連れ込んだ。入口で立ち止まる赤坂の背中を突き飛ばしてトイレの床に転がし、秋山などグループの男子生徒も含めた6人で取り囲んだ。