蛭子 翔は2年前、入学式の翌日に3年の教室に殴り込んで学校のトップに君臨した男である。185センチ、120キロという恵まれた体格と実家の家業がヤクザであることを利用し、現在は市内の全域にまで手を伸ばしている本物の悪だ。
蛭子の存在を知っていた川崎は入学式の翌日には挨拶に行き、顔を売っていたのだ。蛭子は挨拶に来た川崎のことを気に入り、自分のオンナになるのであれば、どんなことでも叶えてやると告げた。権力を握るためには蛭子の彼女になることが一番の近道であることを川崎は理解していたが、蛭子の外見がどうしても我慢できなくて返事を保留した。しかし、目の前に迫る危機に、川崎は蛭子の要求を飲んだ。それしか方法がない、と悟ったからだ。
蛭子は川崎に自分の権力を見せ付けるために、たった1人の女子生徒を相手にするには明らかな過剰戦力を伴って来た。益荒男には劣るものの巨漢の蛭子は、20人以上の配下を引き連れて川崎の元に立った。
常識的な思考回路であれば、これだけの強面が揃えば意味も分からず土下座をするか、逃げ出すかのどちらかになる。しかし、川崎の目の前に立つ楓は、そのどちらも選択しなかった。
「で、消しゴムを返さんいうことが、返事ちゅうことでええんじゃの?」
楓に問い詰められた川崎は、再び余裕の笑みを浮かべて蛭子の後ろに隠れた。
「もうバラバラにしちゃったし、返そうにもムリでしょ。それに、今からアンタは、ここで地獄を見るんだから、関係ないわよね」
そう楓に告げながら、川崎は蛭子の腕に自分の腕を絡ませる。
「先輩、遥香たちをいじめたのはコイツなんです。コイツにヤっちゃってください!!」
「よし、分かった」
蛭子が1歩足を踏み出す。
それを目にした楓が大きなため息を吐いた。そして、メガネを外してポケットに入れ、代わりに取り出したヘアゴムで長い髪を後ろでまとめた。
「ホンマに、つまらん男じゃのう」
「やれ!!」
楓の言葉に被せるようにして、蛭子が周囲の配下たちに指示を出した。
蛭子が連れて来たのは、学校内外にいる300人以上の配下の中でも、精鋭と言えるメンバーだ。その凶悪な暴力が一斉に動き出した。
偶然、その現場を鬼島が通り掛った。そして、3年生の生徒達と対峙している楓の姿を見て青ざめた。
楓は普段、メガネを掛けているが、視力が低い訳ではない。目立たないようにとメガネを掛けているだけであり、あくまでもファッションである。その楓がメガネを外すときは、炭酸飲料を飲んだあとで、しかもかなり不機嫌な状態だということを身をもって知っているからだ。
「ヤベ、ここから離れないと!!」
そう呟いて、中庭から猛ダッシュで校舎の中に飛び込んだ。
蛭子の存在を知っていた川崎は入学式の翌日には挨拶に行き、顔を売っていたのだ。蛭子は挨拶に来た川崎のことを気に入り、自分のオンナになるのであれば、どんなことでも叶えてやると告げた。権力を握るためには蛭子の彼女になることが一番の近道であることを川崎は理解していたが、蛭子の外見がどうしても我慢できなくて返事を保留した。しかし、目の前に迫る危機に、川崎は蛭子の要求を飲んだ。それしか方法がない、と悟ったからだ。
蛭子は川崎に自分の権力を見せ付けるために、たった1人の女子生徒を相手にするには明らかな過剰戦力を伴って来た。益荒男には劣るものの巨漢の蛭子は、20人以上の配下を引き連れて川崎の元に立った。
常識的な思考回路であれば、これだけの強面が揃えば意味も分からず土下座をするか、逃げ出すかのどちらかになる。しかし、川崎の目の前に立つ楓は、そのどちらも選択しなかった。
「で、消しゴムを返さんいうことが、返事ちゅうことでええんじゃの?」
楓に問い詰められた川崎は、再び余裕の笑みを浮かべて蛭子の後ろに隠れた。
「もうバラバラにしちゃったし、返そうにもムリでしょ。それに、今からアンタは、ここで地獄を見るんだから、関係ないわよね」
そう楓に告げながら、川崎は蛭子の腕に自分の腕を絡ませる。
「先輩、遥香たちをいじめたのはコイツなんです。コイツにヤっちゃってください!!」
「よし、分かった」
蛭子が1歩足を踏み出す。
それを目にした楓が大きなため息を吐いた。そして、メガネを外してポケットに入れ、代わりに取り出したヘアゴムで長い髪を後ろでまとめた。
「ホンマに、つまらん男じゃのう」
「やれ!!」
楓の言葉に被せるようにして、蛭子が周囲の配下たちに指示を出した。
蛭子が連れて来たのは、学校内外にいる300人以上の配下の中でも、精鋭と言えるメンバーだ。その凶悪な暴力が一斉に動き出した。
偶然、その現場を鬼島が通り掛った。そして、3年生の生徒達と対峙している楓の姿を見て青ざめた。
楓は普段、メガネを掛けているが、視力が低い訳ではない。目立たないようにとメガネを掛けているだけであり、あくまでもファッションである。その楓がメガネを外すときは、炭酸飲料を飲んだあとで、しかもかなり不機嫌な状態だということを身をもって知っているからだ。
「ヤベ、ここから離れないと!!」
そう呟いて、中庭から猛ダッシュで校舎の中に飛び込んだ。



