楓は無理矢理に口を開けさせられ、炭酸飲料を口に流し込まれた。
激しく咳き込む楓。それでも、秋山達は楓の頭を押え付けたまま、楓の口を強引に開けて炭酸飲料を流し込む。ペッとボトルの半分ほどが口に注ぎ込まれた頃、ようやく楓の頭を固定していた秋山の力が弱まった。多少息継ぎをさせなけば、本当に死んでしまうかも知れないからだ。
一呼吸させて、もう1度頭を押え付けようとした瞬間、秋山の手首を楓の細い腕が掴んだ。
「ああ、しんど・・・」
唐突に聞こえた声に、秋山とすぐ側にいた男子生徒の動きが止まる。そして、次の瞬間、楓が掴んでいる手首から鈍い音が響いた。
「うわあああああああっ痛ててててててて!!」
見ると、秋山の手首から先が、有り得ない方向に曲がっている。
楓は手首を掴んだまま立ち上がると、ゴミでも捨てるかのように投げ捨てた。
「手が、オレの手がああああっ」
「うるさいのう」
自分の手首を掴んで叫んでいる秋山を、楓は鬱陶しそうに蹴り飛ばす。ほんの軽く蹴ったように見えたものの、秋山の頭が跳ね上がり、3メートルほど後方に吹き飛んだ。
気を失った秋山以外の5人が、呆然と立ち尽くしたまま固まった。
「で、貸した消しゴムは、いつ返してくれるんかのう?絶対に返すいうて、約束したよのう」
楓の言葉で5人は我に返る。何がどうなったのかは分からないが、楓を取り押さえなければならないことだけは理解できた。秋山と一緒になって楓を取り押さえていた男子生徒が、手を伸ばして再び押え付けようとする。しかし、楓はその手を掴み、出おい投げの要領で投げ飛ばした。
「うがっ」
受身も取れずに地面に叩き付けられ、背中を押さえてのたうつ回る。楓は男子生徒の頭を腹部を踏み付けて地面に縫い付け、そのまま体重をかける。男子生徒の顔が真っ赤に染まり、次の瞬間意の内容物をぶちまけた。楓は既に戦意を喪失している男子生徒の頭を掴み、持ち上げると勢いを付けて地面に叩き付けた。男子生徒は声を発することもできないまま、そのまま動かなくなった。
ここまでくると、さすがに楓が尋常ではないことを4人は理解する。一番後ろにいた女子生徒が逃げようとして走り出したが、楓が投擲した石で右足を打ちぬかれて前のめりに倒れた。
「なあにを、逃げよるんなら。消しゴムは返すんか、返さんのんか」
楓は信義を問う。約束を守るのか、守らないのか。そこに正義など何もない。ただ、約束を履行するのかどうかを確認している。そして、約束を守らない者に生きている資格はないと思っている。
楓が当事者である川崎に向かって歩き始める。
川崎はジリジリと後退しながらポケットからスマートフォンを取り出した。川崎はバカではない。自分のクラスで確固たる地位を築いた後は、学年でトップなることを目論んでいる。そのために、この学校で一番力を持つ者に媚びを売り、いざというときには後ろ盾になってもらうように準備をしていた。
「せ、先輩、助けてください。ウチら、やられそうなんです」
川崎が持つスマートフォンのスピーカーから野太い声が聞こえる。
「遥香かあ。そりゃあ、オレのオンナになるってことでいいんだな?」
川崎は一瞬躊躇したものの、無表情で歩み寄ってくる楓を目にし同意した。
「もちろんです、だから、助けてください。場所は中庭の―――――」
「すぐに行く」
承諾の返事を受け取った川崎は、再び余裕の笑みを浮かべると残っている男子生徒に告げる。
「先輩が来てくれるから、あと5分、3分でいいから時間を稼いで」
「稼いでって、オマエ」
捨て駒にされることを理解したのか、男子生徒が川崎の方に振り返る。しかし、その直後、細い指がその首根っこを掴んだ、
「じゃけえ、どっちなんか聞きよるんじゃろ?」
楓は男子生徒を片手で持ち上げるとその場で地面に叩き伏せ、馬乗りになって平手打ちを繰り返した。
その様子を目の前で見た川崎の顔色が真っ青になる。それでも逃げ出さないのは、助力を頼んだ先輩がすぐに来るからだ。しかし、もう1人の女子生徒はそのことを信じてはいなかった。楓に背を向け、校舎に向かって走り出した。その女子生徒の後頭部で、男子生徒が履いていたクツが当たった音が高らかに響く。当然のように、最初の女子生徒と同様、顔から地面に倒れこんで動かなくなった。
「ヒッ」
ゆらりと振り返った楓と目が合った川崎は、小さい悲鳴を吐き出す。
楓が一歩ずつ川崎に歩み寄る。
「ちょっと待てや!!」
もう一歩というところで、中庭に野太い声が響いた。
激しく咳き込む楓。それでも、秋山達は楓の頭を押え付けたまま、楓の口を強引に開けて炭酸飲料を流し込む。ペッとボトルの半分ほどが口に注ぎ込まれた頃、ようやく楓の頭を固定していた秋山の力が弱まった。多少息継ぎをさせなけば、本当に死んでしまうかも知れないからだ。
一呼吸させて、もう1度頭を押え付けようとした瞬間、秋山の手首を楓の細い腕が掴んだ。
「ああ、しんど・・・」
唐突に聞こえた声に、秋山とすぐ側にいた男子生徒の動きが止まる。そして、次の瞬間、楓が掴んでいる手首から鈍い音が響いた。
「うわあああああああっ痛ててててててて!!」
見ると、秋山の手首から先が、有り得ない方向に曲がっている。
楓は手首を掴んだまま立ち上がると、ゴミでも捨てるかのように投げ捨てた。
「手が、オレの手がああああっ」
「うるさいのう」
自分の手首を掴んで叫んでいる秋山を、楓は鬱陶しそうに蹴り飛ばす。ほんの軽く蹴ったように見えたものの、秋山の頭が跳ね上がり、3メートルほど後方に吹き飛んだ。
気を失った秋山以外の5人が、呆然と立ち尽くしたまま固まった。
「で、貸した消しゴムは、いつ返してくれるんかのう?絶対に返すいうて、約束したよのう」
楓の言葉で5人は我に返る。何がどうなったのかは分からないが、楓を取り押さえなければならないことだけは理解できた。秋山と一緒になって楓を取り押さえていた男子生徒が、手を伸ばして再び押え付けようとする。しかし、楓はその手を掴み、出おい投げの要領で投げ飛ばした。
「うがっ」
受身も取れずに地面に叩き付けられ、背中を押さえてのたうつ回る。楓は男子生徒の頭を腹部を踏み付けて地面に縫い付け、そのまま体重をかける。男子生徒の顔が真っ赤に染まり、次の瞬間意の内容物をぶちまけた。楓は既に戦意を喪失している男子生徒の頭を掴み、持ち上げると勢いを付けて地面に叩き付けた。男子生徒は声を発することもできないまま、そのまま動かなくなった。
ここまでくると、さすがに楓が尋常ではないことを4人は理解する。一番後ろにいた女子生徒が逃げようとして走り出したが、楓が投擲した石で右足を打ちぬかれて前のめりに倒れた。
「なあにを、逃げよるんなら。消しゴムは返すんか、返さんのんか」
楓は信義を問う。約束を守るのか、守らないのか。そこに正義など何もない。ただ、約束を履行するのかどうかを確認している。そして、約束を守らない者に生きている資格はないと思っている。
楓が当事者である川崎に向かって歩き始める。
川崎はジリジリと後退しながらポケットからスマートフォンを取り出した。川崎はバカではない。自分のクラスで確固たる地位を築いた後は、学年でトップなることを目論んでいる。そのために、この学校で一番力を持つ者に媚びを売り、いざというときには後ろ盾になってもらうように準備をしていた。
「せ、先輩、助けてください。ウチら、やられそうなんです」
川崎が持つスマートフォンのスピーカーから野太い声が聞こえる。
「遥香かあ。そりゃあ、オレのオンナになるってことでいいんだな?」
川崎は一瞬躊躇したものの、無表情で歩み寄ってくる楓を目にし同意した。
「もちろんです、だから、助けてください。場所は中庭の―――――」
「すぐに行く」
承諾の返事を受け取った川崎は、再び余裕の笑みを浮かべると残っている男子生徒に告げる。
「先輩が来てくれるから、あと5分、3分でいいから時間を稼いで」
「稼いでって、オマエ」
捨て駒にされることを理解したのか、男子生徒が川崎の方に振り返る。しかし、その直後、細い指がその首根っこを掴んだ、
「じゃけえ、どっちなんか聞きよるんじゃろ?」
楓は男子生徒を片手で持ち上げるとその場で地面に叩き伏せ、馬乗りになって平手打ちを繰り返した。
その様子を目の前で見た川崎の顔色が真っ青になる。それでも逃げ出さないのは、助力を頼んだ先輩がすぐに来るからだ。しかし、もう1人の女子生徒はそのことを信じてはいなかった。楓に背を向け、校舎に向かって走り出した。その女子生徒の後頭部で、男子生徒が履いていたクツが当たった音が高らかに響く。当然のように、最初の女子生徒と同様、顔から地面に倒れこんで動かなくなった。
「ヒッ」
ゆらりと振り返った楓と目が合った川崎は、小さい悲鳴を吐き出す。
楓が一歩ずつ川崎に歩み寄る。
「ちょっと待てや!!」
もう一歩というところで、中庭に野太い声が響いた。



