轟音と共に妖怪が跳躍した。雷を撒き散らしながら巨大な爪が迫る。
身体能力が強化されているので回避は余裕だ。私は床を蹴って横へ跳び、陣もほぼ同時に後方へ回避した。
私達がいた場所へ雷撃が叩き込まれる。床板が爆ぜ、焦げた臭いが広がった。
——速い。
見た目に反して向こうも異様な俊敏さだ。これは早めに決着をつけなければ。
ちらりと陣がいる方を見る。彼は少し離れた場所で妖怪を見据えている。
その瞳が――赤く染まった。
途端、妖怪の身体を覆っていた電流がふっと掻き消えた。
バチバチと鳴り響いていた放電音も止む。
妖怪が驚いたように目を見開く。そんな奴の額には、バツ印が刻まれていた。
——よし、封じた……!
陣の退魔能力、能力封じ——。
対象が持つ特殊能力を一時的に無効化する力。極めて強い能力だ。
電撃を失った妖怪へ私達は銃口を向ける。
乾いた銃声が廊下へ響く。弾丸は正確に妖怪の急所を撃ち抜いた。巨体が大きく揺れ、そのまま床へ倒れる。
断末魔が響く間もなかった。妖怪の身体は黒い塵となって、少しずつ崩れていく。
「よし、これで——」
事態が急変したのは陣が安堵の息を吐いた直後だった。
妖怪が消滅しかけている身体を動かし、彼に体当たりしてきたのだ。
死の間際の悪あがき。回避は間に合わない。
陣の身体は吹き飛ばされ、壁へ激突した。
「っ、ぁ……」
ずるずると糸が切れた人形のように、彼がその場で崩れ落ちる。
「陣!!」
慌てて駆け寄ろうとしたところを妖怪の爪が襲う。
脚を大きく抉られ、体勢を崩してしまった。
「——っ」
制服が瞬く間に血で濡れていく。
灼けるような激痛に悶えている間にも、妖怪は上体だけとなった身体を引きずりながら陣の方へ向かっていた。
陣は意識を失っているようで、ぴくりとも動かない。
血の気が引いた。
——そんな……。
頭がぐらりと揺れる。
このままでは陣が——私のたった一人の家族が死んでしまう。
なんとかして彼のもとへ行きたいのに、身体が言うことを聞いてくれない。
——嫌だ……。
——嫌だ……!
また大切な人を失うなんて——!
心の叫びに呼応するように。
ドクン――と、身体の奥で何かが脈打った。
「……え?」
熱い。
全身が灼けるように熱い。
皮膚の下を光が駆け巡る、骨が軋む。
何かが、生えてくる。
「ぁ……っ」
頭部に激痛。反射的にその場所に触れると、髪の隙間から硬い鉱石のようなものが伸びていた。
尾骨からもスラックスを押し上げ何かが生えてくる感覚。さらに腕や頬にも固い感触。
腕を見てみると、そこには淡く輝く青白い鱗が浮かんでいた。
——これは……っ。
驚きと同時に空間が震えたそのすぐ後。
轟、と青白い光が廊下を埋め尽くした。
視界が真っ白になる。
何が起きたのか、自分でも分からなかった。
ただ光が消え視界が戻ったときには、妖怪の姿は完全になくなっていた。
静寂の中、端末で妖怪の反応を確認しようとしたところ——。
「なっ……!?」
画面に映った自分の姿に驚愕する。
頭部には青白く輝く二本の角。
頬には腕と同じく青白の淡光を放つ鱗。
そして後ろを確認してみれば、スラックスの口から爬虫類のような尻尾がはみ出ていた。
「なんだ、これ……」
掠れた声が漏れる。
さっき見た肖像画が脳裏を過った。
これはまるで――。
——龍神みたいじゃないか。
身体能力が強化されているので回避は余裕だ。私は床を蹴って横へ跳び、陣もほぼ同時に後方へ回避した。
私達がいた場所へ雷撃が叩き込まれる。床板が爆ぜ、焦げた臭いが広がった。
——速い。
見た目に反して向こうも異様な俊敏さだ。これは早めに決着をつけなければ。
ちらりと陣がいる方を見る。彼は少し離れた場所で妖怪を見据えている。
その瞳が――赤く染まった。
途端、妖怪の身体を覆っていた電流がふっと掻き消えた。
バチバチと鳴り響いていた放電音も止む。
妖怪が驚いたように目を見開く。そんな奴の額には、バツ印が刻まれていた。
——よし、封じた……!
陣の退魔能力、能力封じ——。
対象が持つ特殊能力を一時的に無効化する力。極めて強い能力だ。
電撃を失った妖怪へ私達は銃口を向ける。
乾いた銃声が廊下へ響く。弾丸は正確に妖怪の急所を撃ち抜いた。巨体が大きく揺れ、そのまま床へ倒れる。
断末魔が響く間もなかった。妖怪の身体は黒い塵となって、少しずつ崩れていく。
「よし、これで——」
事態が急変したのは陣が安堵の息を吐いた直後だった。
妖怪が消滅しかけている身体を動かし、彼に体当たりしてきたのだ。
死の間際の悪あがき。回避は間に合わない。
陣の身体は吹き飛ばされ、壁へ激突した。
「っ、ぁ……」
ずるずると糸が切れた人形のように、彼がその場で崩れ落ちる。
「陣!!」
慌てて駆け寄ろうとしたところを妖怪の爪が襲う。
脚を大きく抉られ、体勢を崩してしまった。
「——っ」
制服が瞬く間に血で濡れていく。
灼けるような激痛に悶えている間にも、妖怪は上体だけとなった身体を引きずりながら陣の方へ向かっていた。
陣は意識を失っているようで、ぴくりとも動かない。
血の気が引いた。
——そんな……。
頭がぐらりと揺れる。
このままでは陣が——私のたった一人の家族が死んでしまう。
なんとかして彼のもとへ行きたいのに、身体が言うことを聞いてくれない。
——嫌だ……。
——嫌だ……!
また大切な人を失うなんて——!
心の叫びに呼応するように。
ドクン――と、身体の奥で何かが脈打った。
「……え?」
熱い。
全身が灼けるように熱い。
皮膚の下を光が駆け巡る、骨が軋む。
何かが、生えてくる。
「ぁ……っ」
頭部に激痛。反射的にその場所に触れると、髪の隙間から硬い鉱石のようなものが伸びていた。
尾骨からもスラックスを押し上げ何かが生えてくる感覚。さらに腕や頬にも固い感触。
腕を見てみると、そこには淡く輝く青白い鱗が浮かんでいた。
——これは……っ。
驚きと同時に空間が震えたそのすぐ後。
轟、と青白い光が廊下を埋め尽くした。
視界が真っ白になる。
何が起きたのか、自分でも分からなかった。
ただ光が消え視界が戻ったときには、妖怪の姿は完全になくなっていた。
静寂の中、端末で妖怪の反応を確認しようとしたところ——。
「なっ……!?」
画面に映った自分の姿に驚愕する。
頭部には青白く輝く二本の角。
頬には腕と同じく青白の淡光を放つ鱗。
そして後ろを確認してみれば、スラックスの口から爬虫類のような尻尾がはみ出ていた。
「なんだ、これ……」
掠れた声が漏れる。
さっき見た肖像画が脳裏を過った。
これはまるで――。
——龍神みたいじゃないか。



