「こんな場所で、一人かい?」

「先生。なんでここに」

「…ふらっと、立ち寄ったらたまたま君がいたってだけさ」
「何をしようとしてるんだい?」

「…僕の大切な人、突然自殺しちゃいました」
「だから、僕も一緒に行こうかなって」

(何とも言えない顔)

「…いいと思う。君が決めたことなら、止めはしないよ」

「…」

「何か、迷っているのかい?」

「…はい。このまま追いかけても、きっと笑ってくれないんじゃないかって」

「死者は笑うのか?」

「はい。きっと笑うと思います」

「そうか」

「まぁせっかくの機会だ。少しお話をしよう」

「お話、ですか?」

「その大切な子のお話さ」

「…」

「思い出を残したまま死んでしまったら、きっとあの世では会えない。未練が残るからね」

「話してみなよ」

「別に人に話すような話題じゃないですよ

「いいから」

「…じゃあ、お言葉に甘えて」

「僕には、大切な女の子がいました」

「その子は昔から笑顔で、いつもキラキラしてて、こんな僕と一緒にいてくれる子でした」

「春には花見をして、夏には祭りに行って、花火を見て」

「とても楽しい毎日でした」

「でもある日、喧嘩をしてしまって」

「じゃあ一緒になんていなくていい!って突き放してしまったんです」

「でも、苦しかったんです。僕は、最低でした。」

「あの子が死んだ後にわかったんです。あの時どれだけ傷をつけたか」

「元々、僕が知らなかっただけで、いじめられてて。突然の自殺なんかじゃなかった。僕が突き放してしまったんです」

「僕は、人殺しです」
「薄々気づいてました。元気がないことも、顔色が悪いことも」
「でも、何もしてあげられなかった」
「あの子の笑顔が崩れるのが、怖くて」
「もし大丈夫?とでも言えていたら、変わっていたのかもしれない」
「僕は、最低で、生きてる価値なんてないんです」

「人生って、砂時計みたいだと思わない?」

「砂時計、ですか?」

「砂時計って、一回ひっくりかえしたらその間は、それを必要とする。道しるべとして」

「じゃあ、砂が全部落ちてしまったらどうなると思う?」

「えっと、わからないです」

「まあ単純でその時は必要がなくなる。でもまた必要になったらひっくり返すよね」

「君たち二人は、お互いを必要としあって、お互いにひっくり返しあってたと思うよ」

「今、君がやることはあの子からの卒業だよ」

「だから、伝えたいことを吐き出しておくといい。その花、君が持ってきたんだろ?(花はアネモネです)

「その子に伝えたかったことは、それだけ?」

「…はい。そうだと思います」

「本当に?まだ何か伝えたいことが心の底で見え隠れしてるものがしている気がするよ」

「心の、底...」

(シーン チャイム)

「おっと、もう終わりか。じゃあ、先に戻ってるよ。また、あとでね」

「またなんてないですよ」

「はは、どうかな。じゃあ、お先に」

(シーン 扉が閉まる)

「伝えたいことなんて、たくさんあるのに」
「君は、どこまでも先に行く」
「孤独な僕を見つけてくれて、そこから毎日が本当に楽しくて、この気持ちが言葉にできないくらい幸せでした」
「透花。大好きだよ」
「また、会いに来るね」

(シーン 花が置かれている 風が吹く)

「また、があったね。」

「先生のおかげですよ」

「俺は何もしてないさ。君が選んだだけ」

「はは。そういうことにしておきます」

「で、今度は何を話に来たのかな、透夜君」

「そうですね。まあ人に話す話題じゃないかもしれませんけど」

「お言葉に甘えて」

「人生相談があります」
「聞いてくれますか?先生」