河川敷の芝生に二人で腰を下ろした頃には、辺りはすっかり帳(とばり)が下りていた。
——ドン、と地響きのような音がして、夜空が割れた。
一瞬で視界が真っ赤に染まり、続いてパラパラと光の粒子が降ってくる。
光に照らされた葵の横顔は、言葉を失うほどに美しかった。
だけど、その瞳が夜空の光を反射するたび、なぜか僕の胸には、冷たい霧のような寂しさが広がっていく。
この夏が終われば、彼女は本当に行ってしまう。
手首に残る温もりも、この距離感も、すべてが幻のように消えてしまう。
「ねえ、葵」
僕は花火の爆音に負けないよう、少し声を張り上げた。
「僕、やっぱり、葵が遠くに行くの——」
引き止めたい。行かないでほしい。
僕のそばで、ずっとその笑顔を見せていてほしい。
隠しきれなくなった独占欲が、言葉となって溢れ出そうになったその時だった。
「蓮くん、あのね!」
葵が僕の言葉を遮るように、くるりとこちらを振り返った。
彼女の瞳は、まっすぐに僕を見つめていた。その強い眼差しに、僕は言葉を失う。
「私ね、東京に行ったら、恋愛なんかしてる暇ないくらい絵に没頭するつもりなんだ! だって、全国から天才が集まる場所なんだよ? 恋だの何だのにうつつを抜かしてたら、すぐに置いてかれちゃうもん。だから私、プロの画家になるまで、誰のことも好きにならないって決めたの!」
葵はいたずらっぽく笑いながら、胸を張ってみせた。
いつもの明るい、向日葵のような笑顔。
だけど、僕は気づいてしまった。
