「あとは任せる」
建物を出て専門の班に無害化した主爆薬を渡した。外の者たちはこれですべての爆弾の処理が終わったと喜んでいるが、柊の中ではまだ終わっていない。
再度建物に戻ると、澪が閉じ込められた部屋のドアが開くかを廊下からためしてみた。開かないと分かると爆弾が設置されていたドアのほうに回り、瓦礫やコンクリートをよけていく。
時間をかけてやっとその作業が終わり、柊は勢いよくドアを開けた。
「澪!」
柊の相棒は隅の方でコンクリートの欠片を積み上げて遊んでいた。暇を持て余していたらしい。
「結構早かったじゃん」
「早かったじゃん、じゃないだろ。お前、怪我してんじゃねえか」
「これ? 大したことないって」
「手当してもらえ。跡になる」
柊は澪の無事を見て安心したのもつかの間、澪に詰め寄った。
「ていうかお前、最初から分かってただろ」
「なにが?」
「左だってこと、分かってたんだろ」
『そうだけど?』とでも言いたげな様子で首をかしげられて、柊は苦々しい顔になった。
最後の一本はつながっているように見えただけで、左から見たらほんの一部だけつながっていなかった。ありがちなフェイクであり、焦っていたとはいえ見抜けなかった自分に腹が立つ。澪も『確証はない』と言っていたからお互い様のような気もするが。
「じゃあ最初からそう言え。毎回遅いんだよ、次からはちゃんと説明しろ」
「努力はするよ。でも俺は言ってたし。強調してたよ、左だって」
それを聞いて、柊はますます眉間にしわを寄せる。
「まずさ、自分で切ってて気付かなかったわけ? この爆弾、左側に違和感があるコードが多かったじゃん。怪しいなって思うでしょ」
「…………」
「これで柊が俺なしじゃ処理できないことが証明されたね。これ処理できたの、柊が悩みそうなところをざっくり予想できた俺のおかげでしょ。今回は俺の手柄だね」
不満げな柊を前に言う澪に苛立ったのか、柊は吐き捨てるように言う。
「あんなんで分かるわけないだろ。『左から見て』って。しかもあとは全部俺に任せるとか最悪だ」
「実際できたからいいじゃん。それに俺言ったよね、『俺に合わせて』って。これくらい察してどうにかしてよ」
柊は珍しく言い淀んだ。うまく言葉が出てこないようで、そんな柊を澪も珍しく茶化さない。
しばらくして柊は呟いた。
