まず異変に気付いたのは澪だった。
――変な音がする。
処理を進めること十数分。
「そこ、やっといて」
「『そこ』ってどこだよ」
「分かるでしょ」
「……分かるけど曖昧なんだよ」
突然、澪が柊から離れた。
柊はなにも言わずにそちらを一瞥したあと、作業を続行する。澪は室内を歩き出した。
音がするのだ。カチカチ、カチカチと。
柊の背後から中を覗き込む。タイマーは残り20分程度だということを表しているが、このタイマーの音ではない。
――じゃあ、なに。
爆弾のタイマーとは別の運針音が、ややずれて聞こえる。音の高さにも差があり、こちらのほうが低かった。柊は聞こえていないのかもしれないが、常に視覚や聴覚を駆使する役目を担っているから分かる。
――気のせいなのか。
そんな考えが浮かんできたが、それにしては引っかかる。
一抹の不安を抱えながら歩き回っていると、足音が耳についたのか苦情が入ってきた。
「落ち着かねえな」
「……そうですか」
「あきたから一休みってことか?」
「いや、そうじゃないけど。……隣、行ってくる」
柊の集中力を削がないようにするため、また、音の正体を突き止めるため、隣室に移ることにした。
ドアを引いて向こう側へ行くと、同じ間取りの部屋が視界の先に現れる。
室内は空っぽだった。ためしに、コンコンと壁を叩いてみる。先程の部屋と同様に防音壁に近い素材でできた壁から発せられる音に不自然さはなさそうだった。代わりに音が途切れることはなく、違和感が解消されることもない。
――誰か人を呼びに行ってみるか?
もし連れて来る間になにかあったら対応できなくなる。柊を一人にするわけにはいかない。だがこの引っかかりを放置するわけにもいかない。
それに、さっきから胸騒ぎがするのだ。嫌な予感がするとも言える。なにかしらの異変を感じ取った自分の勘が警告していた。
――そういえば。
そういえば、犯人はなんと言っていたか?
――思い出せ。
一つ目の現場に車で移動している途中、取り調べのボイスメモを聞いた。あの記録の中で、犯人はなんと言っていたか。どんな内容の発言をしていたか。
『八つの爆弾は、殺傷能力がある爆薬を使用している。範囲も被害もばらばらだ。それ以外は……知らないけどな』
――そうだ。
今まで処理してきた爆弾に使われていた爆薬は、どれも殺傷能力があるものだった。ただ、犯人は殺傷能力がない爆弾については触れていない。
だからその可能性はある。いや、現状ではその可能性が一番高い。
そして、どこかに設置されているとしたら。
「……っ!」
防音壁でできたこの部屋からだと大声でも届くことはない。澪は焦りながらも通信端末を取り出した。
「柊っ!」
通信をつなげて名前を呼んだ、そのとき。
ピーッ
「爆弾守れっ!」
高い音が鳴る。端末に向けてそれだけ叫んで音が聞こえた場所を探す。
――二階か!
そんな澪の勘は的中した。間髪を入れずに小さな爆発音。
澪が咄嗟に上を見上げると。
刹那、柊と澪を分断するかのように、天井の破片が降り注いだ。
