通学用リュックを机の横にかけると、スカートのポケットからスマホ、そして有線イヤホンを取り出す。
両耳にイヤホンをつけ、それからスマホの穴にプラグを挿した。
選んだ曲は――カンザキイオリさんの『命に嫌われている』。
毎日毎日、飽きることなく聞いているのだ。
操作を済ませると、この曲を聞いていると知られたらなんとなくバカにされそうなので紫色のスマホケースを表にして机に置いた。
イントロがイヤホンを通して、両耳に流れる。
軽く見られている命を表すような、無機質なピアノの音。
それがガヤガヤとうるさいクラスメイトたちの話し声をかき消していき、私は音楽の世界へ導かれていく。
そして目を瞑れば、私の意識は『命に嫌われている』だけに集中する。
やがてイントロが終わると、初音ミクの歌声が流れる。
サビはバックの音楽のように高低差が激しく一所懸命訴えている声色になるが、サビ前は平坦でイントロと同じく無機質だ。
私はどちらかといえば、サビ前が好きだった。
なぜなら、サビのようどんなに激しく命を軽く見ている人に訴えかけても、その心には響かないから。
つまりその人は、タイトルと同じく命に嫌われている。
