命の祈り



非常階段は、全体的に白くて病室のように無機質な空間だった。

ちょうどこの時間がゴミ出しでよかった。

そう思いながら、私は慎重に階段を上がっていく。

ほぼつま先立ちで、音をたてないよう足元に全神経を集中させる。

朝からこの非常階段を使う職員はいなさそうだが、バレたら終わりなのでここから慎重にいかないと。

その甲斐あって、私はだれにも見つかることなく目的の階に到着する。

周りを警戒しながら、叶羽の病室へ行った。

看護師さんたちは患者さんのところへ出向いているのだろう、この時間に来られてよかった。

心底ホッとする。

そして、一瞬感じた叶羽の病室に鍵がかかっていたらどうしようかという不安も吹き飛ぶ。

引き戸はすんなりと開いたからだ。

中には、ほんの数日前を忠実に再現したかのような同じ光景が広がっていた。

ただ、叶羽の両親と田口さんがいないだけ。

あいかわらず人工呼吸器の音が響く中、私はゆっくりと叶羽に近づいた。