ベストフレンズ

 合格の知らせは、すぐに周囲に広がった。

 恒一に電話で伝えると、電話の向こうで大きな声が返ってきた。

「マジかよ! 二人とも!? やるじゃん!」

「お前が一番先に決まってたけどな」

「早いのと嬉しいのは別だろ。……よかったな、悠真」

 最後の一言だけ、少し声のトーンが落ちていた。茶化しながらも、恒一なりに気にかけていたことが、悠真には伝わった。

「お前のおかげもあるよ、恒一」

「は? 俺なんもしてねえだろ」

「してた。ちゃんと見ててくれただろ、ずっと」

 電話の向こうで、恒一が黙った。それから、少し照れたような声で「らしくねえこと言うなよ」と返ってきた。


 玲奈からは、長めのメッセージが届いた。

《おめでとう、二人とも!》

《悠真の写真見て、私も専門学校目指そうって思ったの、本当だから》

《結果はまだ分からないけど、私も頑張る》

 悠真は返信を打ちながら、一年前、玲奈が悠真に告白した日のことをふと思い出した。あの時は気まずさと申し訳なさが先に立っていた関係が、今はこんなふうに、互いの背中を押し合える関係になっている。時間が、いろんな形を変えていくのだと思った。

《玲奈の写真、もっと見たい。専門学校決まったら教えて》

《うん、絶対教える》



 紗奈の家では、母親が結果を聞いて、珍しく涙ぐんでいた。

「よかった……本当に、よかった」

「大袈裟だよ、お母さん」

「大袈裟じゃないよ。あんたがここまで来られたこと、お母さん知ってるから」

 紗奈は何も言えず、ただ小さく頷いた。去年の今頃、自分がどんな状態だったか、母親が一番近くで見ていたことを、紗奈も分かっていた。

 その夜、紗奈は日記代わりにしているノートに、短く書き記した。

「合格した。でも、それより、ここまで来られたことの方が嬉しい気がする」

「支えてくれた人に、ちゃんとありがとうって言えるようになった自分も、悪くないと思う」


 三月中旬、卒業式まであと少し。

 教室の窓から見える桜のつぼみは、まだ固く閉じたままだったが、確実に春が近づいていることを教えていた。

 悠真と紗奈、恒一、そして玲奈。それぞれの進路が決まり、それぞれの道を歩き始めようとしている。でも、まだこの教室で過ごせる時間は、あと少しだけ残されていた。

 放課後、四人は久しぶりに部室に集まった。特に用事があったわけではない。ただ、なんとなく、まだこの場所で過ごしたい気持ちが、誰の中にもあった。

「卒業したら、この部室来れなくなるんだよな」

 恒一がぽつりと言うと、玲奈が笑った。

「寂しいこと言うじゃん」

「寂しいだろ、普通に」

 紗奈は窓の外を見ながら、小さく呟いた。

「──でも、場所がなくなっても、関係はなくならないと思う」

 その言葉に、誰も何も返さなかったが、みんな同じことを感じているようだった。

 三月の陽射しが、少しずつ長くなり始めていた。