二次試験を終えた夜、紗奈から届いたメッセージは短かった。
《終わった》
《やれることはやった気がする》
悠真はその一文に、去年の自分と同じ響きを感じた。実技試験の後、自分が送った言葉とほとんど同じだった。
《お疲れ様。今日はゆっくり休んで》
《うん。……ありがとう、ここまで》
「ここまで」という言葉に、悠真は一年間のいろいろな夜を思い出した。深夜の電話、「消えたい」という言葉、クリニックの待合室、花火大会で最後まで残れた夜。全部が、この一言に詰まっている気がした。
合格発表は二週間後だった。
その二週間、紗奈は不思議と落ち着いていた。以前のように、結果が出るまで何も手につかない、ということはなかった。友人と映画を観に行き、母親と買い物に出かけ、悠真とも他愛のない話をして過ごした。
「発表当日、一人で見る?それとも一緒がいい?」
悠真が尋ねると、紗奈は少し考えてから答えた。
「一人で見る。でも、結果出たらすぐ連絡する」
「分かった」
以前なら、悠真は「一緒にいた方がいいんじゃないか」と提案していたかもしれない。でも今は、紗奈が選んだやり方を、そのまま受け止めることができた。
発表当日の午前十時、悠真は自室でスマホを握りしめていた。実技試験の結果も同じ日に出ることになっていたが、それどころではなかった。
十時五分、紗奈からメッセージが届いた。
《受かってた》
短い一文だった。悠真はしばらくその文字を見つめてから、返信を打った。
《おめでとう》
《すごいよ、紗奈》
既読がついて、しばらく間が空いた。それから、紗奈からもう一通届いた。
《ありがとう。……実感、まだない》
《実感なくていいよ。ゆっくり湧いてくるものだと思う》
悠真がそう返したところで、自分のスマホの別の通知に気づいた。芸術大学の合格発表ページからの通知だった。
深呼吸をして、画面を開く。
自分の受験番号が、そこにあった。
悠真はしばらく声も出せずに画面を見つめていた。それから、紗奈に短いメッセージを送った。
《俺も受かった》
返信は数秒で届いた。
《え》
《本当に!?》
《おめでとう!!!》
普段は感情をあまり表に出さない紗奈にしては珍しく、絵文字と記号が並んでいた。悠真は自然と笑っていた。
その日の夕方、二人は近所の公園で待ち合わせた。特別なことをするわけではなかったが、直接顔を見て話したい気持ちが、どちらからともなく湧いていた。
「おめでとう」
「紗奈もおめでとう」
二人はしばらく黙って、冬の終わりの夕焼けを眺めていた。一年前には、こんな穏やかな時間が来るとは、どちらも想像していなかった。
「──ちゃんと、ここまで来れたね」
紗奈がぽつりと言った言葉に、悠真は静かに頷いた。
三月の風が、まだ少し冷たく二人の間を吹き抜けていった。
《終わった》
《やれることはやった気がする》
悠真はその一文に、去年の自分と同じ響きを感じた。実技試験の後、自分が送った言葉とほとんど同じだった。
《お疲れ様。今日はゆっくり休んで》
《うん。……ありがとう、ここまで》
「ここまで」という言葉に、悠真は一年間のいろいろな夜を思い出した。深夜の電話、「消えたい」という言葉、クリニックの待合室、花火大会で最後まで残れた夜。全部が、この一言に詰まっている気がした。
合格発表は二週間後だった。
その二週間、紗奈は不思議と落ち着いていた。以前のように、結果が出るまで何も手につかない、ということはなかった。友人と映画を観に行き、母親と買い物に出かけ、悠真とも他愛のない話をして過ごした。
「発表当日、一人で見る?それとも一緒がいい?」
悠真が尋ねると、紗奈は少し考えてから答えた。
「一人で見る。でも、結果出たらすぐ連絡する」
「分かった」
以前なら、悠真は「一緒にいた方がいいんじゃないか」と提案していたかもしれない。でも今は、紗奈が選んだやり方を、そのまま受け止めることができた。
発表当日の午前十時、悠真は自室でスマホを握りしめていた。実技試験の結果も同じ日に出ることになっていたが、それどころではなかった。
十時五分、紗奈からメッセージが届いた。
《受かってた》
短い一文だった。悠真はしばらくその文字を見つめてから、返信を打った。
《おめでとう》
《すごいよ、紗奈》
既読がついて、しばらく間が空いた。それから、紗奈からもう一通届いた。
《ありがとう。……実感、まだない》
《実感なくていいよ。ゆっくり湧いてくるものだと思う》
悠真がそう返したところで、自分のスマホの別の通知に気づいた。芸術大学の合格発表ページからの通知だった。
深呼吸をして、画面を開く。
自分の受験番号が、そこにあった。
悠真はしばらく声も出せずに画面を見つめていた。それから、紗奈に短いメッセージを送った。
《俺も受かった》
返信は数秒で届いた。
《え》
《本当に!?》
《おめでとう!!!》
普段は感情をあまり表に出さない紗奈にしては珍しく、絵文字と記号が並んでいた。悠真は自然と笑っていた。
その日の夕方、二人は近所の公園で待ち合わせた。特別なことをするわけではなかったが、直接顔を見て話したい気持ちが、どちらからともなく湧いていた。
「おめでとう」
「紗奈もおめでとう」
二人はしばらく黙って、冬の終わりの夕焼けを眺めていた。一年前には、こんな穏やかな時間が来るとは、どちらも想像していなかった。
「──ちゃんと、ここまで来れたね」
紗奈がぽつりと言った言葉に、悠真は静かに頷いた。
三月の風が、まだ少し冷たく二人の間を吹き抜けていった。



