十二月半ば、冬期講習が始まった。紗奈は朝から晩まで塾の自習室にこもる日々が続き、悠真も実技試験対策のデッサンと並行して、一般入試科目の勉強を進めていた。
クリスマスが近づいても、二人が会う時間は減っていた。それでも、以前のような不安は薄かった。
「会えない日が続いても、平気になったな、俺たち」
悠真がメッセージでそう送ると、紗奈からすぐに返信が来た。
「会えないのと、繋がってないのは、違うから」
その言葉に、悠真は一年間の変化を改めて感じた。会えない時間そのものより、会えない時間をどう過ごすかが、二人にとって大事になっていた。
冬期講習の合間、紗奈は模試の判定でE判定を取ってしまい、珍しく落ち込んだ様子でメッセージを送ってきた。
「E判定だった。もうダメかもしれない」
悠真はすぐに電話をかけた。
「もうダメって、決めつけるの早くないか?」
「でも、この時期にE判定って、相当まずいって聞いた」
「聞いたって、誰から?」
「……ネットで」
「ネットの情報より、紗奈の今の勉強量の方が信用できると思うけど」
悠真の言葉に、紗奈はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「悠真、こういう時、変に励まさないよね」
「励ましても、判定変わらないし」
「うん、それでいい。ただ、話聞いてほしかっただけだから」
紗奈はそう言うと、少し落ち着いた声で続けた。
「明日からまた頑張る。今日は、ちょっと弱音吐きたかっただけ」
「いつでも聞くよ」
クリスマスイブ、二人は短い時間だけ会うことにした。近所のカフェで、それぞれ参考書を持ち寄っての「勉強デート」だった。
「これ、デートって言えるのかな」
紗奈が苦笑しながら言うと、悠真も笑った。
「らしいっちゃ、らしいだろ。俺たちの一年」
二時間ほど、それぞれ黙々と勉強をした。時々、分からない問題を教え合う以外は、ほとんど会話がなかった。それでも、二人にとってはそれが心地よい時間だった。
別れ際、紗奈が言った。
「今日、会えて良かった。短い時間だったけど」
「うん。また、正月明けにでも」
「うん。それまで、お互い頑張ろう」
年末、悠真は実家の部屋で、これまで撮ってきた写真データを整理していた。ふと、去年の今頃の自分を思い出した。紗奈の異変に気づき始め、どうすればいいか分からず、ただ不安だけを抱えていた季節。
あれから一年。悠真はスマホを取り出し、紗奈にメッセージを送った。
「去年の今頃と比べて、今の紗奈は全然違う。ちゃんと、自分の言葉で話せるようになった」
しばらくして返信が来た。
「悠真がいたから。一人だったら、多分、変われなかった」
「俺も、紗奈がいたから変われた」
「お互い様、ってことだね」
窓の外では、年の瀬の冷たい風が吹いていた。もうすぐ、受験本番の年が明けようとしていた。
クリスマスが近づいても、二人が会う時間は減っていた。それでも、以前のような不安は薄かった。
「会えない日が続いても、平気になったな、俺たち」
悠真がメッセージでそう送ると、紗奈からすぐに返信が来た。
「会えないのと、繋がってないのは、違うから」
その言葉に、悠真は一年間の変化を改めて感じた。会えない時間そのものより、会えない時間をどう過ごすかが、二人にとって大事になっていた。
冬期講習の合間、紗奈は模試の判定でE判定を取ってしまい、珍しく落ち込んだ様子でメッセージを送ってきた。
「E判定だった。もうダメかもしれない」
悠真はすぐに電話をかけた。
「もうダメって、決めつけるの早くないか?」
「でも、この時期にE判定って、相当まずいって聞いた」
「聞いたって、誰から?」
「……ネットで」
「ネットの情報より、紗奈の今の勉強量の方が信用できると思うけど」
悠真の言葉に、紗奈はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「悠真、こういう時、変に励まさないよね」
「励ましても、判定変わらないし」
「うん、それでいい。ただ、話聞いてほしかっただけだから」
紗奈はそう言うと、少し落ち着いた声で続けた。
「明日からまた頑張る。今日は、ちょっと弱音吐きたかっただけ」
「いつでも聞くよ」
クリスマスイブ、二人は短い時間だけ会うことにした。近所のカフェで、それぞれ参考書を持ち寄っての「勉強デート」だった。
「これ、デートって言えるのかな」
紗奈が苦笑しながら言うと、悠真も笑った。
「らしいっちゃ、らしいだろ。俺たちの一年」
二時間ほど、それぞれ黙々と勉強をした。時々、分からない問題を教え合う以外は、ほとんど会話がなかった。それでも、二人にとってはそれが心地よい時間だった。
別れ際、紗奈が言った。
「今日、会えて良かった。短い時間だったけど」
「うん。また、正月明けにでも」
「うん。それまで、お互い頑張ろう」
年末、悠真は実家の部屋で、これまで撮ってきた写真データを整理していた。ふと、去年の今頃の自分を思い出した。紗奈の異変に気づき始め、どうすればいいか分からず、ただ不安だけを抱えていた季節。
あれから一年。悠真はスマホを取り出し、紗奈にメッセージを送った。
「去年の今頃と比べて、今の紗奈は全然違う。ちゃんと、自分の言葉で話せるようになった」
しばらくして返信が来た。
「悠真がいたから。一人だったら、多分、変われなかった」
「俺も、紗奈がいたから変われた」
「お互い様、ってことだね」
窓の外では、年の瀬の冷たい風が吹いていた。もうすぐ、受験本番の年が明けようとしていた。



