文化祭二日目は、朝から雲一つない秋晴れだった。一般公開日ということもあり、開場前から校門に列ができていた。
写真部の展示室も、初日を上回る人出になった。悠真は昨日より落ち着いて来場者に対応できるようになっていた。
「昨日、友達から聞いて来たんです。この写真、すごく良かったって」
見知らぬ来場者にそう声をかけられ、悠真は少し照れながら礼を言った。口コミで広がっているらしいことに、実感が追いついていなかった。
昼前、思いがけない来訪者があった。中学時代の恩師だった。写真部の顧問から連絡を受けて、わざわざ足を運んでくれたのだという。
「朝比奈、大きくなったな」
「先生……!お久しぶりです」
恩師は展示をゆっくり見て回り、悠真のコーナーの前で長く立ち止まった。
「お前、中学の時は自分のこと全然話さない子だったよな。何考えてるか分からないって、よく職員室で話題になってた」
「そうでしたね……」
「でも、この写真見てたら分かる。ちゃんと、誰かのことをこんなに見てる人間だったんだな」
悠真はその言葉に、胸が熱くなるのを感じた。自分でも気づいていなかった変化を、昔を知る人に言葉にしてもらえたことが、何より嬉しかった。
午後、玲奈の両親が展示を見に訪れた。転校してきてからの一年を娘がどう過ごしていたか、写真を通して初めて知ったようだった。
「うちの子が、こんな風にこの町を見ていたなんて」
玲奈の母親がそう言って、目を潤ませていた。玲奈は少し恥ずかしそうにしながらも、両親に一枚一枚の写真について説明していた。
悠真はその様子を見ながら、それぞれの一年が、それぞれのやり方で形になったことを感じた。
夕方、閉場時間の少し前、紗奈が今日も顔を出した。今日は勉強の合間ではなく、最初から見に来るつもりだったようで、私服姿だった。
「今日は最初から?」
「うん。二日目、最後までちゃんと見たかったから」
紗奈は昨日と同じように、悠真のコーナーを最後までゆっくりと見て回った。それから、感想ノートを手に取った。
「私も書いていい?」
「もちろん」
紗奈はしばらく考え込んでから、ペンを走らせた。悠真はその内容を見なかった。見せてもらえるかどうかは、紗奈次第だと思っていたから。
紗奈はノートを閉じると、少し照れたように笑った。
「後で読んで。今は、まだ恥ずかしいから」
閉場のアナウンスが流れ、二日間の展示が終わった。片付けをしながら、玲奈が感慨深げに言った。
「これで、写真部としての最後の文化祭、終わっちゃったね」
「うん。でも、いい形で終われた気がする」
「悠真の写真、ちゃんと残るといいね。感想ノートとか、写真データとか」
「残すよ。全部」
恒一が段ボールを運びながら、四人を見渡して言った。
「なんか、俺らも変わったよな、この一年で」
誰も否定しなかった。それぞれが、それぞれのやり方で、一年前とは違う場所に立っていた。
夜、家に帰った悠真は、紗奈からのメッセージを受け取った。感想ノートに書いた内容の写真だった。
「隣にいる人の写真を、こんなに丁寧に撮れる人と出会えて、良かった。分かり合えなくても、いようとしてくれたこと、ちゃんと覚えてる。」
悠真はその文章を、何度も読み返した。それから、短く返信した。
「俺も、紗奈と出会えて良かった」
窓の外には、文化祭を終えた夜の静けさが広がっていた。三年生最後の学校行事が、こうして幕を閉じた。残るは、受験という次の季節だけだった。
写真部の展示室も、初日を上回る人出になった。悠真は昨日より落ち着いて来場者に対応できるようになっていた。
「昨日、友達から聞いて来たんです。この写真、すごく良かったって」
見知らぬ来場者にそう声をかけられ、悠真は少し照れながら礼を言った。口コミで広がっているらしいことに、実感が追いついていなかった。
昼前、思いがけない来訪者があった。中学時代の恩師だった。写真部の顧問から連絡を受けて、わざわざ足を運んでくれたのだという。
「朝比奈、大きくなったな」
「先生……!お久しぶりです」
恩師は展示をゆっくり見て回り、悠真のコーナーの前で長く立ち止まった。
「お前、中学の時は自分のこと全然話さない子だったよな。何考えてるか分からないって、よく職員室で話題になってた」
「そうでしたね……」
「でも、この写真見てたら分かる。ちゃんと、誰かのことをこんなに見てる人間だったんだな」
悠真はその言葉に、胸が熱くなるのを感じた。自分でも気づいていなかった変化を、昔を知る人に言葉にしてもらえたことが、何より嬉しかった。
午後、玲奈の両親が展示を見に訪れた。転校してきてからの一年を娘がどう過ごしていたか、写真を通して初めて知ったようだった。
「うちの子が、こんな風にこの町を見ていたなんて」
玲奈の母親がそう言って、目を潤ませていた。玲奈は少し恥ずかしそうにしながらも、両親に一枚一枚の写真について説明していた。
悠真はその様子を見ながら、それぞれの一年が、それぞれのやり方で形になったことを感じた。
夕方、閉場時間の少し前、紗奈が今日も顔を出した。今日は勉強の合間ではなく、最初から見に来るつもりだったようで、私服姿だった。
「今日は最初から?」
「うん。二日目、最後までちゃんと見たかったから」
紗奈は昨日と同じように、悠真のコーナーを最後までゆっくりと見て回った。それから、感想ノートを手に取った。
「私も書いていい?」
「もちろん」
紗奈はしばらく考え込んでから、ペンを走らせた。悠真はその内容を見なかった。見せてもらえるかどうかは、紗奈次第だと思っていたから。
紗奈はノートを閉じると、少し照れたように笑った。
「後で読んで。今は、まだ恥ずかしいから」
閉場のアナウンスが流れ、二日間の展示が終わった。片付けをしながら、玲奈が感慨深げに言った。
「これで、写真部としての最後の文化祭、終わっちゃったね」
「うん。でも、いい形で終われた気がする」
「悠真の写真、ちゃんと残るといいね。感想ノートとか、写真データとか」
「残すよ。全部」
恒一が段ボールを運びながら、四人を見渡して言った。
「なんか、俺らも変わったよな、この一年で」
誰も否定しなかった。それぞれが、それぞれのやり方で、一年前とは違う場所に立っていた。
夜、家に帰った悠真は、紗奈からのメッセージを受け取った。感想ノートに書いた内容の写真だった。
「隣にいる人の写真を、こんなに丁寧に撮れる人と出会えて、良かった。分かり合えなくても、いようとしてくれたこと、ちゃんと覚えてる。」
悠真はその文章を、何度も読み返した。それから、短く返信した。
「俺も、紗奈と出会えて良かった」
窓の外には、文化祭を終えた夜の静けさが広がっていた。三年生最後の学校行事が、こうして幕を閉じた。残るは、受験という次の季節だけだった。



