ベストフレンズ

 夏休み初日。悠真は朝から部室に顔を出した。玲奈が一足先に来ていて、コンクールへの提出作品を最終確認していた。

「悠真の写真、無事に三枚通った」

「ありがとう。お前のおかげだよ」

「私は選んだだけ。撮ったのは悠真」

玲奈はそう言って、淡々とフィルムを整理していた。以前のような緊張感はなく、三人の関係は自然な距離に落ち着いていた。



 午後、悠真は紗奈と図書館で勉強した。長机に向かい合って、夏休みの課題を進める。紗奈が時々手を止めて、窓の外を見ることがあったが、以前のような沈んだ表情ではなかった。

「眠くなった?」

「ううん、ちょっと外の光見てただけ」

そう言って紗奈はまたノートに向き直った。何気ないやりとりだったが、悠真はその"何でもない時間"が、以前よりずっと貴重なものに感じられた。



 夕方、恒一から連絡が来た。夏期講習の初日、思った以上に大変だったらしい。

「死ぬほど疲れた……今日だけで心折れそう」

悠真は「お疲れ。明日も頑張れそうか?」と返した。以前なら「頑張れ」と励ますだけだったが、今は相手の状態を聞く一言を添えるようになっていた。

「微妙。でも行く」

「無理しすぎんな」

短いやりとりだったが、お互いに少しずつ、相手の状態を気にかける言葉が増えていた。



 夜、紗奈から「花火大会、八月の頭にあるみたい」とメッセージが来た。

「行く?」

「行きたい。でも、その日の調子次第で」

「それでいい。無理しなくていい」

「うん」

短いやりとりの後、紗奈は続けて送った。

「今年は、行けても行けなくても、悠真がいてくれるのは変わらないんだよね」

「当たり前だろ」

そのやりとりに、悠真は静かな安心を感じていた。完璧な約束ではなく、その時々の状態に合わせた約束。それが、二人にとって一番自然な形になっていた。