ベストフレンズ

 期末試験最終日。教室を出た悠真と紗奈は、いつものように並んで歩いた。

「手応えどうだった?」と紗奈が聞く。

「正直、微妙。お前は?」

「私も。今回はあんまり集中できなかった」

紗奈は素直にそう言った。以前なら「大丈夫、できた」と取り繕っていたはずだった。悠真はその変化に気づいたが、特に何も言わず、「じゃあ二人とも微妙だな」と笑った。気を遣わない返し方が、紗奈にとって楽だったらしい。紗奈も小さく笑った。



 恒一は試験後、悠真に進路相談の結果を話した。担任から「今のままだと厳しい」と言われたらしい。

「正直、ちょっとへこんでる」

悠真は「そりゃへこむわ」とだけ言って、それ以上余計な励ましは口にしなかった。恒一は「お前、前より聞き方変わったな」と笑った。

「前はすぐ"頑張れ"とか言いそうだったのに」

「紗奈に色々教えられた。励ましが、逆にしんどい時もあるって」

恒一は頷いて、「分かるわ、それ」と言った。



 部室では、玲奈が文化祭の展示以来撮り続けてきた写真をまとめ始めていた。来月のコンクールに出す作品を選ぶためだった。

「悠真の写真、変わったよね。最近の方がいいと思う」

「紗奈以外も撮るようになったから?」

「それもあるけど、なんか……前は綺麗に撮ろうとしてた感じがあった。今のは、ちゃんとそこにあるものを撮ってる」

悠真はその言葉の意味を、すぐには説明できなかったが、何か納得するものがあった。


 試験が終わった夜、紗奈から電話が来た。

「今日、久しぶりに何も考えずに喋れた気がする」

「俺も。お前と話すの、今日は楽だった」

「『楽』って言えるの、いいね」

短い会話だったが、二人の間に流れる空気は、以前より軽かった。完璧でいなくていい関係。波があっても、それを隠さなくていい関係。少しずつ、そういう形になっていく予感が、二人の間にあった。