ベストフレンズ

 期末試験一週間前。悠真は勉強の合間に、河川敷で撮った写真を紗奈に見せる。紗奈はスマホの画面を見ながら、「悠真がこういうの撮るの、久しぶりに見た」とつぶやいた。

「玲奈に言われたんだ。紗奈以外も撮れって」

「……それ、正しいと思う」

紗奈は少し笑ってから、続けた。

「私、悠真が私のことばっかり考えてるの、安心する部分もあるけど、たまに苦しくもなる。悠真が自分のこと後回しにしてるの、分かるから」

悠真は驚いた。紗奈がそこまで言葉にするのは、初めてだった。

「言ってくれて、よかった」

「言うの、まだ下手だけどね」



 恒一はその週、珍しく自分の話をした。模試の結果が思ったより悪く、進路に迷いが出ていたらしい。悠真に「俺もちょっと焦ってる」と漏らした。

「お前にばっかり聞いてもらってたから、たまには俺も話す」

悠真は「いつでも聞くよ」と返しながら、自分が一方的に支えられる側でいたことに気づいた。誰かに頼ることと、頼られることが、両方できる関係。それが本当の意味での親友なのかもしれないと、初めて思った。



 部室では、玲奈が悠真と紗奈、二人を撮った写真をプリントしていた。河川敷での一枚、二人が並んで歩く後ろ姿。

「これ、展示用にもらってもいい?」と玲奈が聞く。

紗奈がその写真を見て、「私たち、こんな顔して歩いてるんだ」とつぶやいた。

「いい顔してると思う」と玲奈が答えた。

悠真はその場で、玲奈に対して初めて素直に「ありがとう」と言えた。気を遣ったお礼ではなく、ただの感謝の言葉だった。



 試験前日の夜、紗奈から「明日、緊張してる」とメッセージが来た。悠真は「俺も」と返した。

「悠真も緊張するんだ」

「当たり前だろ」

ささいなやりとりだったが、紗奈の「大丈夫」という言葉に頼らず、悠真は自分の本当の感覚をそのまま伝えられたことに、小さな手応えを感じていた。