妖怪姫は悪魔伯爵に食べられたい


「旦那様、私を食べてください」

椎原小春は、迷いなく契約結婚相手のロイ=アスターに迫った。
 しかしロイは不快そうにぎゅっと眉間に皺を寄せた。その表情は「嫌だ」とはっきり小春に伝えてくる。
 しかし小春もここで引くわけにはいかない。
 かりそめとは言え妻なのだから、と小春は勇気を出して近付いていく。生まれてこの方、こんなふうに男性に迫ったことなんて勿論なかった。
 だがロイははっきりとした拒絶を示した。

「俺は絶対、食べない」

何と言われようと小春としても引くわけにはいかない。小春はまるで戦地に赴く侍のような覚悟を決めた表情で、ロイへと迫って行く。

ーーロイ様のためにも、私を食べてもらわなきゃいけないのよ!