城下町外れの鍛冶屋。東雲国の一番の腕利きの刀鍛冶が名を連ねている。
粗末ながらも頑丈な木造の家々が並び、そのほとんどに鍛冶場が併設されている。夜になっても炉の火は消えず、赤々とした光が村中に漏れていた。
煙突から立ち昇る黒煙は、冷たい空へ溶けていった。
「今夜、ここを潰す」
黒装束の男――玉響義彦は、小高い丘から鍛冶屋の様子を眺めている。
「火を放ち、刀鍛冶を生け捕りにする」
数十の配下たちは皆、膝をついて一礼した。高津の残党の武士。そして武芸を習得した新参の兵ばかりで、その身のこなしに寸分の隙もない。
「そやけど、玉響くん……ほんまにこれで大丈夫なん?」
木の陰から、白い足袋を履いた風雅な男が一歩姿を現した。
「高天原殿、心配は無用かと」
「そやけど、兵站破壊なんて……」
狩衣をまとった高天原は、扇で口元を隠しながら微笑む。
「飛鳥の国の軍師の僕なら、ありきたりな策すぎると思うんやけど……」
飛鳥国の軍師・高天原雅経は、緊張感のある空気を壊すかのように扇をもてあそぶ。
兵站破壊……補給線攻撃は、特別な奇策ではなく、ごく一般的な軍略の一つだった。敵軍の補給路を遮断したり、兵糧蔵を襲撃したりすることは、敵の戦闘力を大きく削ぐ有効な方法だった。敵国の田畑や倉庫を焼き払うこともあり、これは敵の経済力や継戦能力を削ぐ目的で行われた。時には一度の合戦の勝敗よりも、兵站を握ることの方が戦局全体を左右する。
「まぁ、ええわ。僕があげた兵士、無駄にしたらアカンからな。玉響くん、頼みましたわ」
「は。しかと心得ました。鍛冶屋を襲い、逃げ出した刀鍛冶は一人残らず捕らえて飛鳥国に献上いたします」
満月のように微笑えむ高天原は、背を向ける。ふっと鋭い瞳を上げて、ほくそ笑む。
「ま、僕らはせいぜい東雲が消耗してくれればええんや」
粗末ながらも頑丈な木造の家々が並び、そのほとんどに鍛冶場が併設されている。夜になっても炉の火は消えず、赤々とした光が村中に漏れていた。
煙突から立ち昇る黒煙は、冷たい空へ溶けていった。
「今夜、ここを潰す」
黒装束の男――玉響義彦は、小高い丘から鍛冶屋の様子を眺めている。
「火を放ち、刀鍛冶を生け捕りにする」
数十の配下たちは皆、膝をついて一礼した。高津の残党の武士。そして武芸を習得した新参の兵ばかりで、その身のこなしに寸分の隙もない。
「そやけど、玉響くん……ほんまにこれで大丈夫なん?」
木の陰から、白い足袋を履いた風雅な男が一歩姿を現した。
「高天原殿、心配は無用かと」
「そやけど、兵站破壊なんて……」
狩衣をまとった高天原は、扇で口元を隠しながら微笑む。
「飛鳥の国の軍師の僕なら、ありきたりな策すぎると思うんやけど……」
飛鳥国の軍師・高天原雅経は、緊張感のある空気を壊すかのように扇をもてあそぶ。
兵站破壊……補給線攻撃は、特別な奇策ではなく、ごく一般的な軍略の一つだった。敵軍の補給路を遮断したり、兵糧蔵を襲撃したりすることは、敵の戦闘力を大きく削ぐ有効な方法だった。敵国の田畑や倉庫を焼き払うこともあり、これは敵の経済力や継戦能力を削ぐ目的で行われた。時には一度の合戦の勝敗よりも、兵站を握ることの方が戦局全体を左右する。
「まぁ、ええわ。僕があげた兵士、無駄にしたらアカンからな。玉響くん、頼みましたわ」
「は。しかと心得ました。鍛冶屋を襲い、逃げ出した刀鍛冶は一人残らず捕らえて飛鳥国に献上いたします」
満月のように微笑えむ高天原は、背を向ける。ふっと鋭い瞳を上げて、ほくそ笑む。
「ま、僕らはせいぜい東雲が消耗してくれればええんや」
