冷徹軍師は敗国姫を手放さない

 しばらくして、氷室の元に従者が跪いた。

 「忠頼様、処罰して参りました」

 氷室は書簡を置き、深くため息をついた。

 「颯手(はやて)、ご苦労であった。上に報告し、牢に入れておけ」

 颯手は「は」と言いながら一礼する。そのまま部屋を辞去する颯手を呼び止めた。

 「忠頼様、いかがなさいましたか?」
 「腹心のそなたに任せたい任務がある」

 その言葉に、颯手はとびきりの笑顔になる。

 「それはありがたき幸せです。どのような?」

 氷室は深い息を吐きながら、腕を組んだ。

 「側室の護衛を頼む」
 「高津の姫様の、ですか?!」

 颯手は目を丸くする。

 「し、しかし忠頼様……確か男は姫様に近寄らせないという噂は、……あっ、いや、すみません。……今のは忘れてください!!」
 「念のためだ」

 顎に手を当てながら言う。

 「側室の侍女のみでは何かあった時に心もとない。……腹心のそなたなら、間違いも起きないだろう?」

 颯手は拳を握りしめ、自信満々に顔を上げた。

 「もちろんですとも!! 忠頼様の乳母(めのと)兄弟の僕なら、必ずやご期待に添いましょう!!」
 「頼む」

 そしてと氷室は続けた。側室の護衛を務めるにあたり、彼女の頼み事を受けること、情報を与えること、許可のない外出をすることなどを禁じる。また、彼女の様子を必ず1日の終わりに報告すること。

 「は、必ずやご期待に添いましょう!」

 颯手は深々と礼をした。