「………… あぁ!?お前さん……」
「朧、と申します。以後、お見知り置きを」
驚きを隠せない様子のし乃雪に、人形の様な黒髪を上一つに束ねた其の男が、わざとらしく頭を下げた。
「何だ雪、知っておるのか?
お!霞も、久々だな!病気であったと聞いたが、具合は如何だい?」
「ええ、御陰様にてこの通りに御座います」
「………… 今は知らぬ方が良いか、」
「ん?雪、如何言う意味だ?」
「後で話す!!
先ずはほれ、早く終わらせて来い」
慌てて追い立てれば、二人は顔を訝しげに見合わせ、再び獅子を被る。
……直前に朧がニヤリと笑みを浮かべる様を、し乃雪は見逃さなかった。
「かの御仁が、ご友人で御座いましたのね。
重畳に御座います、とてもお優しい方に御座います故」
詰まる所、この神達は時折人里へ降り、人に紛れている、と言う事。
「……鵺様相手に、源は粗相などしておらぬだろうな……?」
手に汗握りつつ、揺れる獅子の尻尾を見送るし乃雪。
傍で微笑む霞を、畏怖混じりの眼で見遣った後。
――― 祭りとは、末恐ろしや。
胸の内にて手を合わせたのは言うまでも無い。
河童 完
