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先に風呂を出たは駁螺。
し乃雪達…否、源三郎はし乃雪を落ち着かせるべく、暫し風呂の中に押さえ付け落ち着かせ、彼の呼吸が整った辺りに誘った。
むすり、不機嫌なままのし乃雪。桜色が濃く映る白肌が殊更怒りを際立たせており、僅かに恐怖すら感じた源の字。
しかし、上がり際。
「…… 済まぬの、源」
小さく漏らされた其れが、彼が決して源三郎に対し怒っていると言う訳では無い事を現しており、胸を撫で下ろしたのは先程の事だ。
…… 相変わらず、外は止む事の無い土砂降りの雨、風、雷。
もう晴れる事は無いのでは無かろうか……まるで世の末の如き音を耳にしながら、戌良に促され辿り着いたは大広間。
中よりきゃあきゃあと楽しげな女達の声。何と無しに襖の向こうが想像し得、し乃雪の前に立つ源三郎も、呆れの溜息と共に襖を開ける。
…案の定。
駁螺は膳を食いながらも女郎達を侍らせ、楽しそうに笑っている。
女の膝に頭を預けてごろごろと甘えている所で、女郎の一人が「あ!し乃雪兄さん……、」とばつの悪そうな声を上げ、俄かに静まり返った。
ごろごろ、ざぁざぁ……
間を、嵐の音が割って入る。
「お前達、」
源三郎の背後にて、地より低いし乃雪の声。
途端、ピクンと女達の身が跳ね、顔が強張る。
「御免なさい、兄さん」
「わっち等、只「御持て成ししなさい」って大旦那に」
「構わぬよ、良うしてくれたわえ。
さあ、もう戻り遣れ。後は俺達が持て成そう」
ふわ、と笑んだ其の顔に、遊女達ですら敵わぬ様子。
そそくさ、し乃雪達の傍を会釈しながら出て行き、最後の遊女がちらと源三郎を見遣り。
「ごゆっくり、」
にこ、と作り笑顔にて、襖が閉められた。
三人だけとなった、広い広い座敷。
さて……振り向いた二人の目前に、残りの飯を口の中へと掻き込む駁螺。
其の隣にはしっかりとあの箱が置いてあり、其れを指す間も無く駁螺は箸を置き、笑う。
「ほれ、座れよ兄ちゃん達。わしの話が聞きたいんだろう?え?」
顎にて、前を指し示す、駁螺。
こいつ…。ム、とした源三郎を、しかし今度はし乃雪の手が柔らかく彼の肩に触れ、誘う。
ちらと合った目が、何時ものし乃雪だ。
気を取り直したらしい、しかし不安が残りつつも、源三郎は彼に続いて駁螺の前に座った。
畳が、冷たい。
「んで?何故にお前みたいな奴が一人生き残ったのじゃ、」
飯を下品に頬張る駁螺は、「少しは食わしてくれよ、嗚呼酒呑むか?」と軽く文句を垂れつつ、しかし少々嬉しげに口を開く。
