「のぉ源の字、よもやこやつも狢じゃあ無いかえ?」
「こら、失礼だろう!」
「いやー良く言われるがね、正真正銘の人間でさ」
「人は爪を引っ込められると言う事を知っておるかえ?人と言うなればやって見遣れ、ほれ」
「そんな事誰も出来やしねぇよぉ、」
「雪、だからやめろと!嫌なら俺の後ろに居れ、ほら」
「……チッ」
源三郎が宥めに入り、漸く舌打ち一つで離れるし乃雪。
其の頭を子供の如く撫でつつ、しかし内心に渦巻くハラハラとした感情が取れない。
其のまま源三郎が事情を聞こうとしたが、出しゃばったはまたもやし乃雪の方だ。
「して、狢め」
源三郎の腕を振り解き、し乃雪が口を開く。
「だから狢じゃ無ぇってば、駁螺と呼んでくれよぅ」
「如何でも良いよ、狢。
で、何故にお前だけ生き残っておるのじゃ?見世物小屋はあの通り黒っ焦げでは無いかえ、」
「へへ、…あんたにゃあ何ぁにも関係無い事だが、知りたいかい?」
「知らねば祭りが丸々潰れる」
「そりゃぁわしが潰したんじゃあ無えから何とも言えねえけれど。
其れがよぉ、深ぁい事情があるんでさ」
にたり。笑みを浮かべた駁螺の口元から、酷く黄色味を帯びた歯が漏れる。先日の瓦版屋よりも気味の悪い其の顔に、戌良含む三人の表情が歪む。
「……まぁ……
長くなるなら此処じゃなくとも良かろ、」
引かぬ空気の中、源三郎が割り込む。
「そうですな、わしゃもう少し温まってから上がりますけ」
「逃げんなよ、」
どうやらまた体が冷え始めたらしい。啖呵を切った矢先、し乃雪は「…クシュ!」と大きくも可愛らしいくしゃみをかまし。
其の姿に、源三郎は呆れた様に呟いた。
「…………俺達ももう少し温まろうな、」
