アヤカシ太夫♂とイロオトコ

 

 

 はいはい
 坊ちゃんからお爺ちゃん
 お嬢ちゃんからお婆ちゃんまで
 さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい
 一度見とけば末代までの語り草、あやかし絵巻の始まりだ

 秘境の話題、南蛮の謎
 尾張の国は霊将山の
 遙か奥地で見付けましたるこのお嬢さん
 どなたがご覧になっても凄い美女


 ……俺には負けるな。
 ポソリ呟くし乃雪に、しっ!と制する源三郎。


 ところがこのお嬢さんに蛇をあてがいますと
 何が嬉しいのかニコニコと笑い出し
 両手に掴んだ其の蛇を……


「…… 蛇肉か。
 旨そうじゃの……」

 其の言葉にゾク、と身を震わせた源三郎、見ればし乃雪の顔は真面。

「おいおい……やめてくれよ?」
(まむし)は焼けば鳥の如くと聞いたが、」
「……お前はやっぱり此処の方が良いかも知れんなぁ……」

 歓声の中、源三郎は手にしていた飴を再び口にした。
 が、ほぼ形が変わっておらぬ其れが蛇に見え、直ぐに口より離す。
 し乃雪が其れを指さし笑えば、ぬるぬるとした重たい空気がほんのり軽くなった気がした。

 ゆるり、ゆるり……揺れるは提灯の灯火。
 外の祭りとは違う、"澱み"の空間。
 まるで全てが偽りの如く。

 酷く異質で、重く、……何処か“湿っていた”空気は、やがて小屋を後にした二人の間をするりと過ぎ去って行った。