「こなくそッ……」
ギギギギギ、と縁に新たな溝を作る勢いで無理矢理こじ開けた所で、中から布団が雪崩のように崩れ、し乃雪を襲う。
「うあぁ!?」
ドドド、と潰されたし乃雪は、しかし直ぐに這い出、乱れた妖艶な姿で、しかし酷く必死な形相で叫んだ。
「冷ッて……何じゃこの布団、濡れておる!」
「成る程な、」
「源、お前……よもや知っていて俺に開けさせたか、」
「いやいや悪い悪い、まさか雪崩てくるとは思わなんだ」
「畜生、気に入っている着物なのに……シミになってしまうわえ」
不機嫌に頬を膨らませるし乃雪、源三郎の様子を一瞥し、唸る。
「で?多大なる犠牲を払って源の字めは何か分かり得たのかいな?」
わざとらしく話を振れば、返って来たは不敵な笑顔だ。
「嗚呼、居るぜ……怖ぇ怖ぇ『バケモン』が別にな」
「ばったもんの妖は要らぬよ?」
「お前さんが言うたんだぞ?妖話は人の業、とよ」
「ふむ、確かにそうじゃが」
「なんてな。案ずるな、俺は其処まで意地悪じゃない。
後で酒を飲みつつ肴に謎解きでも如何だい?」
少し不機嫌そうなし乃雪の頭を、大きな手がぽんぽんと撫でる。
其れが酷く温かく感じ、小莫迦にされた様な心持を覚えたらしい。
ぱしん、と其の手を払い、膨れ面で着流しを翻し。
「仕方無し、付き合うてやろう。但し」
「但し、」
「詰まらぬ謎解きであったなれば、其の頬を抓ってやるからな?」
振り向きにこりと笑った顔に、悔し紛れの痩せ我慢。
其のまま部屋を後にするし乃雪、そして大きな背よりストンと降りて慌てて付いて行く少女の姿を、源三郎は暫し呆れ顔にて見詰めていた。
