走り出してから、迅は俺に聞いた。
「悠、何があった」
「全部、説明する」
「どこ行く」
「学校。屋上」
「鍵、ないだろ」
「用務員さんに頼む」
「了解」
国道に出るあたりで、迅が叫んだ。
「悠! 紅茶のティーカップ、お前、覚えてるか」
「覚えてる」
「俺、計測中に、変な気配を感じてた。誰かが、俺の頭の中を、覗いてた」
「うん。朔本だ。ずっと俺たちを観察してた」
「やっぱりか」
風が強かった。俺は走りながら、迅に地下のことを話した。完了日。空のパック。
第四群。一九九八年からの三十年。迅は聞きながら、ペダルを踏み続けていた。聞き終わったあと、迅が言った。
「あいつ、本当に楽しんでたんだな。俺たちが、逃げ出すことすら、楽しんでる」
「最悪だ」
「最悪」
「だから、あいつの予測を、外そう。俺たちは、完了しない。生きる」
俺は頷いた。海から強い風が吹いていた。国道の向こうに、夕日が沈もうとしていた。

