海から、お迎えにあがりました


一階に着いた。ドアが開いた。受付には奥山さんがいた。俺の顔を見て、何かを察した。

「松崎さん」
「奥山さん」
「藤代さんは、第二計測室です。お早く」
「奥山さんも、知ってたんですね」
「私は……知っていました。けれど、止められませんでした」

奥山さんは目を伏せた。

「私は、第三群の生存者の妹です」

俺は息を止めた。

「私の兄も、二〇一五年に、完了しました。私は、その当時、十二歳でした」
「……」
「私は、朔本という男の正体を、知っております。けれど、私一人では、彼を止められなかった。私は、ここに、就職する以外の方法を、持ちませんでした」
「奥山さん」
「お逃げください、松崎さん。藤代さんと一緒に。私は、扉のロックを、解除しておきます」

奥山さんは机の下のスイッチを押した。施設のすべてのドアの電子ロックが、解除される音がした。

「私は、ここに残ります。私には、まだ、することがあります。早くお行きなさい」

奥山さんはまっすぐ俺を見た。

「松崎さん。あなた方は、過去三十年で、初めて、地下に辿り着いた被験者です。彼の予測の外に、自ら、出てきた。それは、希望です」

俺は奥山さんに頷いた。

「行きます」

走った。第二計測室に向かった。計測室のドアを開けると、迅は椅子の上で目を閉じていた。電極をつけていた。

「迅」

迅は目を開けて、俺の顔を見て、すぐに起き上がった。

「悠、何があった」
「逃げる。今すぐ」

迅は電極を外した。

「行こう」

迅は俺の手を取って走り出した。廊下を抜けて、受付の前を通って、外に出た。奥山さんは受付に立って、何もしていないふりをしていた。俺たちは自転車に飛び乗った。