海から、お迎えにあがりました


迅の家から帰った夜、俺は新しいノートを買った。コンビニのレジ横のA6サイズの黒い表紙のノート。透のノートとほぼ同じだった。

たぶん偶然ではない。俺は迷わずそれを選んだ。家に戻って、机に座って、最初の頁に日付を書いた。

 今日、迅と話した。
 迅は朔本に報告していた。怒った。
 でも迅も辛かったと言った。雨の中で、迅は俺の前で泣いた。
 俺は迅を許した。
 俺たちは二人だ。

書いてみると、頭の中が少し整理された。書く前は、頭の中にいろんな声が混じっていた気がする。書いたあとは、自分の声だけが残った。書き終えた頃、迅からメッセージが来た。

「悠、明日、暇か」
「暇」
「海、行こう」
「施設行く日じゃないだろ」
「うん。施設じゃない。普通の海」
「行く」
「明日朝、九時、海月の駅前」
「了解」

俺はメッセージを置いて、ノートにもう一行、書いた。

 明日、迅と、海に行く。

それだけ書いて、ノートを閉じた。机の引き出しに入れた。透の写真の隣に、ノートを入れた。写真の中の四人目の影は、今夜は動かなかった。