「松崎くんに、少し、私と二人で、お話しする機会を、いただけませんか」
その金曜日の放課後、施設の控え室で、朔本さんがにっこり笑った。俺は迅を見た。迅は俺を見て、それから朔本さんを見た。
「俺、いない方が、いいんですか」
「ええ、ええ。藤代くんには、私の助手の八木が、別の検査の説明を、差し上げます。一時間ほど。お先に、お帰りいただいて、構いません」
「悠は」
「松崎くんは、私の所長室に、お招きします。お茶を、お淹れします」
迅は一瞬、目を細めた。「悠と二人にしたくない」と、目で言った。俺は「大丈夫」と、目で答えた。迅はしばらく俺の顔を見て、それから頷いた。
「先生、悠を、長く拘束しないでください」
朔本さんはわずかに頭を下げた。
「ええ、ええ。藤代くん。一時間で、お返しします」
その「お返しします」という言い方は、貸し借りの物に対する言い方だった。迅は何かを言いかけて、止めた。止めて、廊下を、八木さんの方に歩いていった。
その金曜日の放課後、施設の控え室で、朔本さんがにっこり笑った。俺は迅を見た。迅は俺を見て、それから朔本さんを見た。
「俺、いない方が、いいんですか」
「ええ、ええ。藤代くんには、私の助手の八木が、別の検査の説明を、差し上げます。一時間ほど。お先に、お帰りいただいて、構いません」
「悠は」
「松崎くんは、私の所長室に、お招きします。お茶を、お淹れします」
迅は一瞬、目を細めた。「悠と二人にしたくない」と、目で言った。俺は「大丈夫」と、目で答えた。迅はしばらく俺の顔を見て、それから頷いた。
「先生、悠を、長く拘束しないでください」
朔本さんはわずかに頭を下げた。
「ええ、ええ。藤代くん。一時間で、お返しします」
その「お返しします」という言い方は、貸し借りの物に対する言い方だった。迅は何かを言いかけて、止めた。止めて、廊下を、八木さんの方に歩いていった。

