受付に奥山さんがいた。
「お疲れさまです。今日はまず脳波の計測室に直接来てください、と所長から伝言です」
「了解です」
迅が即答した。奥山さんは廊下の奥に俺たちを案内した。前回の所長室とは違う方向だった。途中で別の白衣を着た男の人とすれ違った。眼鏡をかけた、痩せた男だった。
「あの人は」
迅が奥山さんに聞いた。
「八木です。研究員の一人です」
「八木さん」
「ええ」
迅は頷いて、それ以上は聞かなかった。計測室の前で、奥山さんがノックしてドアを開けた。中はまた白かった。壁際に機械が並び、モニターがいくつか光っていた。
波形のようなグラフが画面に流れていた。部屋の真ん中にはリクライニングの椅子が二つ並んでいて、歯医者の椅子に似ていた。椅子の横に朔本さんが立っていた。
「松崎くん、藤代くん。今日は二人同時の計測をします」
朔本さんは椅子をそれぞれ示した。
「ここに横になってください。頭にバンドをつけて、目を閉じて、九十分。それだけです」
「九十分」
迅が復唱した。
「長く感じるかもしれませんが、寝ても構いません。むしろ寝ていただいたほうが、データとしては良質になります」
「俺、寝ます」
迅が即答した。朔本さんは初めて、声を出して少し笑った。
「いい返事ですね」

