水曜日の放課後、俺たちは二回目の施設に向かった。
「悠、ペダル軽くね? 空気入れ忘れてないか」
迅が俺の自転車を指差した。
「入ってる」
「入ってない、それ」
迅は自分の自転車のサドルバッグから携帯用の空気入れを取り出した。携帯用の空気入れを自転車に積んでいる高校生は多分少ない。
「お前、なんで持ってんの、それ」
「いつか役に立つと思って」
「いつか、来たな」
「来た」
迅は俺のタイヤに空気を入れた。空気入れの音が住宅街の細い道に響いた。
「これくらいでいいだろ」
立ち上がりながら、迅はふと俺の前髪に手を伸ばした。寝癖をひと撫でに直して、手を引いた。
「ひどい寝癖」
「ほっとけ」
「行くぞ」
迅が先に走り出した。俺はその後を少し遅れて追いかけた。前髪のあたりに、迅の指の感触が少し残っていた。

