友達はサイコパス



「創くん、あれ見て! すごい、等身大だよ! わぁ~大きい~」

 童話の世界から出てきた三匹の子豚の兄弟を見て、興奮が口から飛び出す。
 着ぐるみという存在を知らなかったわけじゃないけど、お目にかかるのは初めてで、こんなにテンションが上がるのも初めてのことだった。
 そして、初めて来た巨大遊園地。
 目に入るもの全部が新鮮で、まるで別世界に迷い込んでしまったみたい。

 なんで僕らが遊園地に来てるかっていうと、クラスの子たちが遊園地に行った時のことを楽しそうに話しているのを小耳に挟んだから。

 ちょっと前なら、他人の話を小耳に挟むなんて絶対なかった。
 だって僕の場合はわざわざ意識を向けなくても勝手に入ってくるもの。
 だから、僕はシャッターを下ろしっぱなしにしていた。しんどくなりたくないし、嫌な声も聞きたくないから。

 でも、あの日はとてもいいお天気で、窓から入ってくる風が心地よくて、そしたらふとなんだか楽しくなってきたんだ。心が弾む感覚。まるでメロディに乗ってポップな音色が流れ込んでくるような。引き寄せられるように、僕は前の席でキャッキャと盛り上がっている子たちへ目を向けた。
 どうやら、彼らは遊園地へ行って来たらしい。その会話と、言葉にはなっていない彼らの楽しそうな気持ちを感じていると想像がどんどん膨らんでいって僕まで楽しくなったんだ。今まで遊園地へ行ったことがなかったけど、素敵なところなのだと感じ取れた。
 それで、華道くんとの夕食時に、遊園地の話をしたら華道くんが誘ってくれて……。
 そんなつもりで話したわけじゃなかったんだけど、友達とどこかへ遊びに行くなんて初めてだから、なにも考えず「行きたい」って返事しちゃったんだ。
 華道くんはあっという間に計画を立ててくれて、遊園地に行くのは、七月の第二土曜日に決定した。僕は楽しみでしかたなくて、毎晩「あと何日だ」と布団の中で、指折り数えてしまったくらい。


「こんなに人がたくさんいるなんて思ってなかった」
「ほんと、開園前に来たのに凄い人だね」

 でも、どうしてだろう。華道くんと一緒にお喋りしてたら、こんなに人がいるのに他の人のことが全然気にならないんだよね。

「昔、絵本で見た子豚、そのまんまで可愛いね」

 華道くんも着ぐるみを見て微笑んでいる。
 最近は華道くんの感情が見えないこともあまり気にならなくなった。
 本心が見えないのが当たり前だと思えるようになれたのも、華道くんのおかげだよね? 最近、すごく気分がいいんだ。楽しいなって思えることがいっぱいあるし。華道くんって、僕にとってはいろんな意味でヒーロ-だなと思う。遊園地にも連れて来てくれたしね!

「あ、小腹が空いてない? チュロスが美味しいらしいから食べようか?」
「ちゅろす?」
「細長いドーナッツみたいな? 甘いよ」

 華道くんが赤と白のストライプ模様の屋根をした可愛い屋台を指さした。遊園地の中にはたくさんのお店があって、レストランに入らなくてもその場で手軽に食物が買えるようになっていてとっても便利。
 アイスや春巻き、スモークターキー、おにぎりサンド、チーズドッグ、ポップコーンと、種類もすごく多い。

「甘いのより、パン系がいい? チキンもあるよ。ターキーはどう?」

 華道くんがクスッと笑う。あえてチキンと言ったのはいつも一緒にハトを食べていることへのブラックジョークだったのかも。でも、僕はそんなジョークに気付きもしなくて、聞いたことのない食べ物の名前ばかりに気が囚われていた。

「ターキーって?」
「七面鳥だよ。アメリカではクリスマスや感謝祭に七面鳥の丸焼きを食べる習慣がある。アメリカからヨーロッパに広まったんじゃなかったかな?」

 華道くんはいろんなことを知っていて、僕に教えてくれる。知らなかったことがたくさんあって、そういうのを知っていくのもすごく楽しくて。もっと教えて欲しいなって思うんだ。
 次から次に見えてくるカラフルな屋台。美味しそうな匂い。僕は目を回しながら理性をかき集めた。

「でも、僕あんまりお金持ってないし」
「パーク内の飲食代やお土産は僕が出すから遠慮しないで」
「でも、悪いよ、交通費も入園料も結局、出してもらってるし」
「いいんだよ。あれは全部、株主優待券だし。僕もお金は使ってない」
「か、株主?」
「そう。要は株を持ってると優待券を貰えるんだよ。それでここの入場もできるものがあったから父から譲ってもらったんだ」

 お父さん……。
 華道くんのお父さんの話、初めてだ。

 お兄さんがいたこと、晩御飯を一緒に食べられないくらい夜遅くまで働いているお母さんのことは聞いていたから、勝手に華道くんもお父さんがいないんだって思っていた。
 僕の表情を見たのか、華道くんが言葉を付け足した。

「夫婦は離婚したけど両親には変わりないからね。月に一回くらい連絡がくるよ。それで友達と遊びに行きたいと思ってるって話したら、いろんなチケットを大量に送ってくれたんだ」 
「そうなんだ」
「僕が友達と出掛けるのが、あの人もよっぽど嬉しかったみたいだね」

 学校で華道くんはいつも人の輪の真ん中にいるし、僕と違って友達も多い。なのに、華道くんの言葉はまるで友達と出掛けたことがないみたいに聞こえた。……そんなことあるわけないよね? だって、僕を夕食に誘ってくれたり、連休にはこうして遊園地にまで連れてきてくれる。優待券もたくさん持っているなら、なおのこと他の友達を誘わない理由がない。そもそも、わざわざ華道くんが誘わなくたって周りが放っておかないでしょ? ってことは、つまり……華道くんは他の友達の誘いを断り続けているってこと?
 ……僕、だけ……?

 ポツリと浮かんだ言葉が僕の胸をノックした。
 僕だけなんだ。
 そう思ったらなんだか照れくさいような、くすぐったいような気持ちになって、僕は俯いて鼻先を指先でチョンチョンと掻いた。

「あの、お父さんに、ありがとうございます。って伝えてもらっていい?」
「伝えておくね」

 もし本当に僕だけなのだとしたら、僕にとって華道くんが初めての友達なように、華道くんにとっても僕は他のみんなよりも特別な……友達ってことになる?

 口元に力を入れないとニヤニヤとニヤけ顔になっちゃいそう。

「遊園地の屋台で食べるの初めて」

 浮足立ってしまわないよう、表情を引き締めて言うと、華道くんは屋台が並ぶ場所へ行こうと指をさしながら言った。

「僕も初めてだから一緒だね」

 嬉しそうにニッコリ笑う。ドキュンって音がした。
 き、聞き間違いじゃない? は、華道くんが「一緒だね」って言った。「一緒だね」って! あ、そっか! 華道くんはおぼっちゃまだから、きっと買い食いなんてしないんだ。だからクラスメイトの子たちと寄り道する経験とかもないのかも。

 ニコニコの華道くんって、可愛い。
 男の子を……華道くんを、可愛いだなんておかしいのかもしれないけど。でも、そう思っちゃった。
 申し訳ないような、照れくさいような。もぞもぞしちゃう感じ。
 ほっぺがあつーくなってくる。
 華道くんに見られたら大変だ。
 僕はそっぽ向いて、暑いふりをしてパタパタと手で顔を扇いだ。
 とっても不思議な感覚。焦ってるはずなのに、ぴょんぴょんスキップしたくなる。まるでお花畑でも歩いているみたいだ。

「いろいろ食べてみたいから、分け合いっこしようか」

 さすが華道くん。ナイスアイデア!

 華道くんの提案に「うんうん!」と頷いた。
 初めて食べる屋台のフードを「美味しいね」「これ思ったよりガツンとしてる」と感想を言い合いながら歩く。
 突然、華道くんが「あ」と前方を指さした。

「あそこ座ろうか」

 他の客の見よう見まねで、花壇のレンガ部分に華道くんと並んで腰を下ろす。
 目の前に広がる夢のような風景を眺めた。
 ここはなんて素敵な場所なんだろう。
 教室で話を聞いて想像したまんまだ。本当に夢の中みたい。こんなにも沢山の人がいるのにいやな声なんてひとつも聞こえてこない。みんなが笑顔だし、嘘がない。ここにいる人全員がワクワクと楽しんでいる。

 そう思った時だった。

「きゃっ!」

 女の子の高い声が聞こえて顔を向けると、小さな女の子がうつ伏せにベシャッと地面に突っ伏していた。空に飛んでいくクマの風船を目で追いながら立ち上がろうとしない女の子。
 さっきまでウキウキとワクワクで弾んでいた気持ちが急激に冷めていく。
 転んだままの女の子が声をあげて泣き出した。

『ママぁ、どこぉ、ママあー』

 頭の中で声が響く、でもその声は僕の声だった。
 寂しい、痛い、悲しい。怖い。
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 夢のような風景には不釣り合いな感情が次々に流れ込んできて、ポップコーンの容器を持つ手がブルブルと震えだした。

『ママぁ、ママぁ』

 あの子、迷子なんだ。どうしよう……。
 こんな時、華道くんならと、そろりと華道くんを見た。
 華道くんは全然違う方向にいる着ぐるみを見ていたけど、僕の視線に気が付いたのか、こっちを見た。「ん?」と首を傾げて、転んだ女の子には全く気が付いていないみたい。

「いや、あの子……」

 華道くんから、わんわん泣き声を上げている女の子へ目を向けると華道くんも女の子を見た。

「あの子が?」
「え?」

 華道くんは顔色をひとつ変えなかった。
 ど、どうして? だって転んで泣いているんだよ? あんなに小さな女の子が。
 学校でみんなから慕われている面倒見のいい華道くんの反応とは到底思えない。

「……あ、あの、……僕、行ってくる」

 よくわからないけど、僕は華道くんにポップコーンを押し付けて、女の子のもとへ走った。

「大丈夫? 立てる?」

 女の子に話しかけると、一瞬泣き止んだと思ったら次の瞬間、もっと大声をあげて泣き出した。

「うっ!」

 頭の中で母親を必死に呼ぶ声が響く。
 あぁ、どうしよう。どうしたらいいかわかんないよ。でも、なんとか宥めてあげなきゃ。

「ま、ママとはぐれちゃったんだよね? 大丈夫だよ。お母さん、見つけてもらおう。ね」

 女の子の泣き声が小さくなって、えぐえぐと頑張って健気に耐えている。
 それでも女の子から伝わってくる感情はとっても苦しい。
 ふと、華道くんを見たら、彼は花壇に座ったままだった。
 ポップコーンを口に入れながら僕の方を見ている。華道くんの見えない心にはとっくに慣れたはずだったのに、久しぶりにゾワッと体が震えた。
 女の子の手を握り戻ると、華道くんはキョトンとした表情で僕を見上げた。ビー玉みたいな目。

「こ、この子、お母さんとはぐれちゃったみたい。迷子センターに連れて行ってあげようかなって思うんだけど」

 思い切って、もう一度助けを求めてみた。

「うん」

 え? 相槌?
 華道くんは表情ひとつも変えないで、ただパクパクとポップコーンを口に運んだ。

「あの、どこに……あるかなぁ?」

 華道くんはやっと「ああ」と頷き、立ち上がった。
 ちょっとホッとしたら、ポップコーンを買った屋台へ走っていく。女の子に「行こう」って話しかけてあとを追うと、華道くんはポップコーンの店員さんとおしゃべりしていた。店員さんが僕らを見て、近づいてきた。

「ありがとうございます。私が対応しますので」

 女性の店員さんはにこやかに微笑むと、女の子の手を握って去って行った。

「園内のことはスタッフさんに任せたほうが早いよ」
「うん……」

 それはそうなんだろうけど……。
 きっと僕が連れて行ってあげたって、結局は遊園地のスタッフの人に預けるしかないし。僕があの子のお母さんを探すこともできない。そんなことしたら、ここへ連れてきてくれた華道くんをほったらかしにする事にもなっちゃうし。せっかくの遊園地が台無しになっちゃう。そんなの華道くんに申し訳なさすぎるし。でも、なんかモヤモヤする。
 園内のことはスタッフに任せたほうがいい。それはいいんだけど、泣いている女の子を平気な顔で放っておくのはあまりにも冷たいっていうか……。

 悶々と考えていると華道くんが言った。

「直生は優しいね」
「え……?」
「優しい人だから、傷ついてしまう」

 華道くんの言葉に顔を上げると、無表情だった表情がいつものように微笑んでいた。

「だから辛いことも多いよね」
「創くん……」
「僕がどうでもいいと思うことでも直生は傷ついてしまう」

 ど、どうでもいいこと……。

 意外な言葉だった。学校での華道くんなら決して言わないだろうなって思ったから。実際、まだ言うほど親しくなっていなかった僕を気に掛けたり、助けてくれたりしたし。みんなのリーダー的な存在だったから。でも、それって善意とかじゃないってこと?

 僕が優しい? そうなのかな? 僕のは善意といえるのかな? だって、僕は相手の感情がわかるから。苦しいのとか、痛いのとか、寂しいのとか感じ取ったから……それが辛かったから助けたいと思った。……ちょっと混乱する。善意ってなんだろう。優しいってどういうことだろう。なにが普通で、なにが普通でないのか。華道くんと話しているとよくわからなくなってくる。

「なんか……ごめん」

 どう答えていいのかわからず、僕の口から出たのは「ごめん」だった。
 この謝罪は華道くんを冷たいと感じたことに対するものと、華道くんがポツリと零した言葉で、華道くん自身が何かしら傷ついてしまったのではないかと思ったから。わからないけど。

「ん? なにが? それよりポップコーン食べたらアトラクションに並ぼうか」
「う、うん」

 華道くんからポップコーンの容器を受け取り、紐を首にかけて気が付いた。
 ポップコーンがだいぶ減ってる。
 どうやら僕が女の子を助けている間に、かなりもぐもぐ食べていたらしい。
 とても奇妙な感情が僕の中で湧き出す。
 そんな華道くんにドン引きしているのに、どこか面白くて、なんならちょっと愛おしさまで感じてしまった。
 だって……。

 僕も変わってるけど、やっぱり華道くんも変わってる。
 変わってる部分は全然違うけど、共通点がある。それがなんだかすごく嬉しい。ひとりじゃないって思えた。

「直生はジェットコースター平気?」
「わからないけど、乗ってみたい」
「僕も初めてだから興味ある」

 行こう行こうと張り切って向かうと、アトラクションの前には長蛇の列ができていた。最後尾に立て看板を持つスタッフがいて「一時間待ちです」と大きな声で宣伝している。

「人気があるんだね」

 華道くんは感心したように言った。

「す、すごい人だね」
「大丈夫? 並ぶ?」
「うん、せっかくだし」

 華道くんと最後尾に並ぶ。すぐにその後ろにも人が並び始めた。
 始めは華道くんと他愛もない話をしていたけど、慣れない人込みにちょっと気分が悪くなってきてしまった。
 単純な人酔いだからと思っていたけど、だんだんそれだけではなくなってきた。
 周りの人たちの気持ちがイライラしてきたからだ。胸の辺りが重苦しくなり、呼吸が浅くなる。手足が地面に引っ張られる感覚。
 重くて、眩暈がして、じっとりした冷たい汗が全身から噴きだす。

 もう、ダメ……。
 だんだん視界が下がっていく。暗い。ガクンと膝が折れ、激痛が走った。

「直生!」

 華道くんの声。目を開けると、たくさんの足が見える。一瞬気を失ったのか、僕はコンクリに膝を突いていた。
 華道くんが背後から体を支えている。

「大丈夫かい?」

 華道くんは心配そうに眉を寄せ僕を見ていた。

「ごめん、ちょっとしんどくなって……」
「うん。顔が白いね」

 華道くんが僕の前へ回り込むと、背中を向け屈んだ。

「もたれて。列を出よう」
「うん」

 力が抜けてしまった重い体を、なんとか華道くんの背に預ける。
 華道くんの手が後ろへ回り、僕の体を支えながらゆっくり立ち上がった。

「よっと」

 周りから見られてる。心配する目、呆れる目、イラついた目。バカにした目。目目目目目……。

 ……ぼくを、みないで……。

 なんとか人混みから脱出できて、気が付いたら僕は華道くんにしがみついていた。そんな僕を気にすることもなく、華道くんはキョロキョロすると、僕を背負ったままグングン歩いた。

「ごめんね」
「全然大丈夫だよ」

 僕が呻くように言った言葉にすぐに答えてくれる。
 しばらくして空いているベンチを見つけた華道くんは、僕をそっと下ろしてくれた。
 人もまばらな園の隅になるスペースだった。

「どう? まだ気持ち悪い?」
「だいぶ、ましになった。ありがとう」
「そう? よかった」

 華道くんはホッとした表情になり、「あ」と僕の膝を見てズボンをたくし上げた。

「膝、ちょっと血が出てる」

 そう言うと斜め掛けしていたバッグを前に回し、絆創膏を取り出す。
 華道くんはテキパキとした動作で、膝の傷へ貼り付けてくれた。

「これでよし。痛くない?」
「うん、ありがとう……」

 傷は気を失った時に打ち付けたもので、血も少し滲んでいるくらいだった。なのに、すごく気遣ってくれる。
 絆創膏……持ってたんだ。
 迷子の女の子を思い出す。
 スカートで派手に転んで膝も僕の何倍もひどくすりむいていたのに……。

「……ねぇ、創くん……どうして、僕にこんなに優しくしてくれるの?」

 華道くんは目を丸くして、すぐに微笑んだ。

「直生は大事な友達だもの。当たり前だろ」

 華道くんに初めてトモダチといわれた時と同じ。またトクンと胸の内側が響いた。

 やっぱり、僕を特別な友達だと感じてくれているんだ。
 嬉しい──。
 ……でも、なんで僕なんだろう。
 廃墟ビルの屋上で出会ったあの日から、僕たちは急激に仲良くなっていった。それまでは一言も話したことがなかったのに、今では大事な友達だって言ってくれる。

「あ、あのさ……初めて創くんと話した日。あの日、どうして創くんはあのビルにいたの?」
「どうしたの? 急に」
「うん。僕、創くんと友達になれて嬉しい。ずっとひとりぼっちだったし。友達も一生できないって思っていたから、ちょっと不思議で。あの日、出会えたから友達になれたから……」

 僕が死のうって思った日。
 華道くんは小首を傾げていたけど、思い出したのか「うん」と頷いた。

「あそこに行くのに、直生、公園を突っ切ったでしょ?」
「あ、うん」
「僕も公園にいた。鳩を獲ってたんだ。それで、直生を発見して気になったからあとをつけたんだよ」
「気に、なったから……」

 気にしてくれたんだ。それって、僕が自殺しようとしてるって気付いたからなのかな? じゃあ、やっぱり華道くんはあの時、自殺を止めようとして?

 華道くんの感情は分からないけど、頭のいい華道くんだもん。あの屋上での会話も、単純に引き留めるよりも、ああやってあえて挑発するような言い方をすることによって、思いつめていた僕の気持ちをそらせたのかも。

「創くんがいてくれて良かった。死なないで良かったって今は思ってる。創くんと友達になれたから」

 華道くんは嬉しそうに微笑み、ハッキリした声で言ってくれた。

「僕もだよ。直生と友達になれてよかった」
「うん!」