朝早くに厨房に集まる面々。
仕事着(和食割烹着のような)を着た鬼の料理人たちが、ほむらの前に並び立っている。
ほむら「おはよう」
料理人たち「おはようございます」
ほむら「今日は、新人の料理人見習いを紹介する。婚約者の澪だ」
澪「高徳澪です。料理は家庭料理しか作ったことがありませんが、現世の料理には詳しいと思います。よろしくお願いします」
料理人たち「よろしくお願いします」
ほむら「以上だ。準備に取りかかってくれ」
料理長(雪仁)「料理長の雪仁と申します。よろしくお願いします、若奥様」
澪「若奥様は、よしてください。ここでは、私はただの料理人見習いです。澪で構いません」
雪仁「それでは、澪様とお呼びしても?」
後ろで話を聞いていたほむらが、雪仁を鬼の形相で睨んでいる。
澪「澪で構いません」
ほむら「いいわけないだろ。節度をわきまえろ」
雪仁「申し訳ありません、若旦那様」
澪「ほむら様、いいじゃありませんか。言いたいことを言ってもらわなければ、仕事になりません」
ほむら「……」
雪仁「若旦那様、鬼火の時間ではありませんか?」
ほむら「ああ、行ってくる。澪を頼んだぞ」
雪仁「いってらっしゃいませ」
澪「ほむら様は、どちらへ向かわれたのですか?」
雪仁「街の鬼火を点けに行かれたのです」
澪「鬼火?」
雪仁「現世でいうところの、『街灯』ですね。この屋敷を出て山を下ったところに『あやかし商店街』という街があります。そこの鬼火を点けるのが旦那様のお役目になっております」
澪「なんというか……すごい方なんですね」
雪仁「旦那様は、次期帝王候補とも言われております。ここ隠り世では、ここの鬼界を入れて5つの妖界から1000年ごとに帝王を決めております。今は、ほむら様のお父上であるアクラ様が務めております」
澪「私が、こんなところにいていいのかしら?」
雪仁「もちろんです。旦那様がお選びになった方なのですから」
そう言われて、自分が本当の婚約者ではないことに、少し心を痛める澪。
雪仁「今度、時間がある時にでもあやかし商店街へ行ってみてください。面白いと思いますよ」
澪「面白い?」
雪仁「先ほど言った、5つの妖界から流れて来た者たちが作った街なので、いろいろな商品が置いてあるのです。もちろん、現世の商品もありますよ」
澪「へぇ……」
鬼料理人「料理長、そろそろ仕上がります」
雪仁「分かった。確認を終えたら、若奥様と持っていく」
鬼料理人「お願いします」
雪仁「若奥様、参りましょう。今日は妖界の一つである天狐界から、清人さまがいらしております」
澪「ここって、もしかして宿なんですか?」
雪仁「いいえ。現世でいうところの別荘ですね。会員が好きな時に予約して、泊まりに来るというシステムです」
澪「会員制なんですか?」
雪仁「ええ。ですが、そんなに堅苦しいものでもなく、知り合いがお金を出し合って、屋敷を借りていると言った方が正しいでしょう。旦那様が、戯れの延長で試しにやってみたところ、思いのほか人気が出て……宿のようになってしまった感はありますが」
澪「ふふっ、試しにやってそのまま事業になってしまったのね」
雪仁「行きましょう。清人さまが、お待ちです」
澪「はい」
出来上がった料理を確認した雪仁は、澪に膳を一つ手渡すと二人で一つずつ膳を運んだ。
鬼料理人が一人後からついて来て、一つの部屋の前で止まった。
雪仁「清人様、朝餉をお持ちしました」
清人「入れ」
鬼料理人が部屋の襖を開けると、はかま姿の狐の妖(清人)が胡坐をかいて座っていた。
二人は部屋の中に入り、狐の妖の前に膳を置いた。
雪仁「本日は、サバの塩焼きといなり寿司になっております」
清人「うまそうだな」
雪仁「おそれいります。失礼いたします」
清人「待て。そっちは、新人か?」
雪仁「さようでございます」
清人「人間臭いな……」
雪仁「こちらの方は、若旦那様の婚約者でございます」
清人「人間臭くはあるが、美しい……」
澪に見惚れる清人。
澪「え?」
清人「どうだ? 私の嫁にならないか?」
雪仁「清人様。お戯れは、ほどほどになさいませ。あなた様には、すでに奥方様が7人もいらっしゃるではありませんか」
清人「私は人間の嫁が欲しかったんだ。彼女のような美しい人と、毎朝ご飯を食べたい」
澪「……は、はぁ」
清人「ほむらに飽きたら離婚して、私のところへ来るがいい。どうだ、朝食を一緒に食べないか?」
雪仁「清人様」
本当の婚約者ではないが、清人の申し出に戸惑う澪。
清人「あんな堅物は放っておいて、私と一緒に朝食を食べよう」
清人は座っている澪の肩を引き寄せると、鼻先にみそ汁の椀を持ってきた。
断ろうと思っているのに、なぜか言葉が出てこない澪。
澪「えっと……」
ほむら「いい加減にしろ!」
吹きあがる風と同時に現れたほむらは膳を蹴飛ばして澪と清人の間に入ると、澪を庇うように前へ出た。
ほむらの登場に驚くが、安心する澪。
仕事着(和食割烹着のような)を着た鬼の料理人たちが、ほむらの前に並び立っている。
ほむら「おはよう」
料理人たち「おはようございます」
ほむら「今日は、新人の料理人見習いを紹介する。婚約者の澪だ」
澪「高徳澪です。料理は家庭料理しか作ったことがありませんが、現世の料理には詳しいと思います。よろしくお願いします」
料理人たち「よろしくお願いします」
ほむら「以上だ。準備に取りかかってくれ」
料理長(雪仁)「料理長の雪仁と申します。よろしくお願いします、若奥様」
澪「若奥様は、よしてください。ここでは、私はただの料理人見習いです。澪で構いません」
雪仁「それでは、澪様とお呼びしても?」
後ろで話を聞いていたほむらが、雪仁を鬼の形相で睨んでいる。
澪「澪で構いません」
ほむら「いいわけないだろ。節度をわきまえろ」
雪仁「申し訳ありません、若旦那様」
澪「ほむら様、いいじゃありませんか。言いたいことを言ってもらわなければ、仕事になりません」
ほむら「……」
雪仁「若旦那様、鬼火の時間ではありませんか?」
ほむら「ああ、行ってくる。澪を頼んだぞ」
雪仁「いってらっしゃいませ」
澪「ほむら様は、どちらへ向かわれたのですか?」
雪仁「街の鬼火を点けに行かれたのです」
澪「鬼火?」
雪仁「現世でいうところの、『街灯』ですね。この屋敷を出て山を下ったところに『あやかし商店街』という街があります。そこの鬼火を点けるのが旦那様のお役目になっております」
澪「なんというか……すごい方なんですね」
雪仁「旦那様は、次期帝王候補とも言われております。ここ隠り世では、ここの鬼界を入れて5つの妖界から1000年ごとに帝王を決めております。今は、ほむら様のお父上であるアクラ様が務めております」
澪「私が、こんなところにいていいのかしら?」
雪仁「もちろんです。旦那様がお選びになった方なのですから」
そう言われて、自分が本当の婚約者ではないことに、少し心を痛める澪。
雪仁「今度、時間がある時にでもあやかし商店街へ行ってみてください。面白いと思いますよ」
澪「面白い?」
雪仁「先ほど言った、5つの妖界から流れて来た者たちが作った街なので、いろいろな商品が置いてあるのです。もちろん、現世の商品もありますよ」
澪「へぇ……」
鬼料理人「料理長、そろそろ仕上がります」
雪仁「分かった。確認を終えたら、若奥様と持っていく」
鬼料理人「お願いします」
雪仁「若奥様、参りましょう。今日は妖界の一つである天狐界から、清人さまがいらしております」
澪「ここって、もしかして宿なんですか?」
雪仁「いいえ。現世でいうところの別荘ですね。会員が好きな時に予約して、泊まりに来るというシステムです」
澪「会員制なんですか?」
雪仁「ええ。ですが、そんなに堅苦しいものでもなく、知り合いがお金を出し合って、屋敷を借りていると言った方が正しいでしょう。旦那様が、戯れの延長で試しにやってみたところ、思いのほか人気が出て……宿のようになってしまった感はありますが」
澪「ふふっ、試しにやってそのまま事業になってしまったのね」
雪仁「行きましょう。清人さまが、お待ちです」
澪「はい」
出来上がった料理を確認した雪仁は、澪に膳を一つ手渡すと二人で一つずつ膳を運んだ。
鬼料理人が一人後からついて来て、一つの部屋の前で止まった。
雪仁「清人様、朝餉をお持ちしました」
清人「入れ」
鬼料理人が部屋の襖を開けると、はかま姿の狐の妖(清人)が胡坐をかいて座っていた。
二人は部屋の中に入り、狐の妖の前に膳を置いた。
雪仁「本日は、サバの塩焼きといなり寿司になっております」
清人「うまそうだな」
雪仁「おそれいります。失礼いたします」
清人「待て。そっちは、新人か?」
雪仁「さようでございます」
清人「人間臭いな……」
雪仁「こちらの方は、若旦那様の婚約者でございます」
清人「人間臭くはあるが、美しい……」
澪に見惚れる清人。
澪「え?」
清人「どうだ? 私の嫁にならないか?」
雪仁「清人様。お戯れは、ほどほどになさいませ。あなた様には、すでに奥方様が7人もいらっしゃるではありませんか」
清人「私は人間の嫁が欲しかったんだ。彼女のような美しい人と、毎朝ご飯を食べたい」
澪「……は、はぁ」
清人「ほむらに飽きたら離婚して、私のところへ来るがいい。どうだ、朝食を一緒に食べないか?」
雪仁「清人様」
本当の婚約者ではないが、清人の申し出に戸惑う澪。
清人「あんな堅物は放っておいて、私と一緒に朝食を食べよう」
清人は座っている澪の肩を引き寄せると、鼻先にみそ汁の椀を持ってきた。
断ろうと思っているのに、なぜか言葉が出てこない澪。
澪「えっと……」
ほむら「いい加減にしろ!」
吹きあがる風と同時に現れたほむらは膳を蹴飛ばして澪と清人の間に入ると、澪を庇うように前へ出た。
ほむらの登場に驚くが、安心する澪。



